脳卒中後の脳における可塑性と運動の相互作用 〜前編〜

こんにちは！
理学療法士をしているyukiです。



それでは本日紹介する論文はこちら↓

The interaction between training and plasticity in the poststroke brain - PubMed

掲載雑誌：Current Opinion in Neurology, 2013
Impact Factor：4.207
参考文献数：68本（リンクにてpubmedへ）

本日紹介する論文は、脳卒中者における脳の可塑性についての総説になります！

近年、脳の可塑性は注目されており、この可塑性を知らずにリハビリを進めていくのはもはやリスクがあるとすら個人的には考えています。

脳の可塑性については、まだ分からないことも多いですが、少しでも理解を深めて臨床に応用して頂ければと思います‼︎

今回の記事では、特に”急性における脳の反応と運動との相互作用”について学びを深めることができると思います。

では早速目次です！

はじめに

脳卒中後の運動障害の回復は、2つのメカニズムによって改善されると言われています。

それは、本質的な運動障害の回復と代償な改善の2つです！

本質的な回復とは・・
脳卒中前と同様の動作パターンを
行うことによる運動障害の回復

代償的な改善とは・・
運動課題を達成するために別の動作を
使用すること（異なる筋活動、関節、効果器の使用）

健常者の場合、運動訓練は目標に向かって課題を長時間練習することであり、運動学習が進むことで課題特異的な改善に繋がる。

脳卒中後の運動訓練は、機能回復または代償的な運動を促すことで改善を図る。

どちらにおいても、訓練の目標は課題特異的な運動であるといえます！

これらの運動課題に関しては以下のように考えられています。

生物学的自然回復（SBR）は一般的な回復によるが（1, 2）、運動学習は課題特異的なものに影響される（3, 4）

健常者でも脳卒中患者の脳でも、

運動訓練は運動学習につながる
↓
特定の課題に対してより良い動作を選択できる
↓
その動作を実行することができる

このように、運動訓練は外部からの因子によって影響され、その結果として運動学習が起こります。


一方で、運動訓練では中枢神経系（CNS）の可塑性を誘導することが明らかとなっています！（5, 6, 7, 8）

ここで、可塑性について2つの重要なポイントがあります。

1つが、訓練を行わなくても、虚血によってCNSの可塑性が引き起こされ、それが回復に繋がること
齧歯類（マウスやラットなど）や霊長類の両方で、脳卒中後に訓練を伴わない自発的な回復を認めています（9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16）。

2. 機能を向上させる行動の変化は、可塑性がなくても起こりえるということ。
例えば、脳卒中患者は、非麻痺側を麻痺側の代わりに使うことで学習をすることができます。

では、この機能回復はどのような時期に起こりやすいのでしょうか？

一般的に脳卒中後には「Sensitive period（以下、SP）」と呼ばれる時期が示唆される3つの観察結果があります！

1. ほとんど全ての回復は、人においては脳卒中後の初期の3ヶ月で起こること
（2, 17, 18, 19,20）、
齧歯類では脳卒中後初期の1ヶ月間で起こること（9, 20, 21）

2. 脳卒中後の訓練効果は、自然行動と訓練前の両方の行動において、霊長類と齧歯類の時間経過により減少すること
※時間経過に伴い、回復がしづらいということだと思います！

上記でわかるように、SP期におけるリハビリテーションが不可欠であるということは、齧歯類や人の研究で一致している（22, 9, 20, 23,24,25）

3. SP期を超えたところでの改善は、ほとんど代償的な要素による

この可塑的な変化は時間と梗塞によって減少していき、運動訓練と相互作用していきます。
この脳卒中後の可塑的メカニズムは、脳梗塞後の脳で課題特異的学習時のメカニズムとは量的にも質的にも異なってきます！

※近年、より注目されている脳の可塑性ですが、
では、この脳の可塑性はどのようなことが関与されているのでしょうか？

実は、”発症前の運動”も非常に重要であることがわかっています！