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脳卒中者の歩行に対する運動イメージトレーニングの影響

こんにちは!
理学療法士をしているyukiです。
このnoteをご覧頂きありがとうございます!

本日紹介する論文はこちらです↓


この論文についてです!
掲載雑誌:Journal of Rehabilitation Medicine, 2015
Impact Factor:2.046
本noteの参考文献数:32本(リンクにて貼り付け)

目次です!

はじめに

メンタルプラクティス(※このnoteではイメトレと解釈して進めます)とは・・

あるスキルの実行をイメージしてリハーサルするプロセスで、
それに関連した顕在的な動作を伴わないもの

と定義されている(1)

脳卒中患者の運動能力を向上させるため、理学療法と併用させることが有効であることが報告されている(2-7)。

イメージのプロセスには、動作を実行する能力に依存しないため、イメトレは、運動の準備を練習することで、身体的な回復を促進するためリハビリテーションの早期に実施することができる。

さらに、このトレーニング方法は、ある程度指導を受ければ、患者自身が1人で行うことができる(5)。

運動イメージ(MI)が低下している方は、イメトレに適していると判断するべきであるが、運動イメージを開始する前に、治療効果を得るための高い運動イメージが可能かは不明である(8)。

Hallらは
Movement Imagery Questionnaire(MIQ)のスコアに基づいて対象者をイメージ力の高い者と低い者に分類し,運動イメージ力が運動課題の遂行に影響を与えることを実証した(9, 10)。

さらに、運動イメージと運動遂行は、基礎となる神経ネットワークが類似していると考えられているため、脳に構造的な損傷があると、運動パフォーマンスと運動イメージの両方に影響を及ぼす可能性がある(11)。

いくつかの研究だと
イメージ質問票の評価は,動作の鮮明なイメージを生成する能力の良い指標となる(12, 13)。

歩行のイメージを定量化するために、歩行軌跡テストを導入し、健常者において実際の歩行とイメージした歩行の間に高い時間的結合があることが示された(15)。

脳卒中患者におけるリハビリテーションの最も重要な目標の1つとして,歩行の回復が挙げられる(16)。

Kollenら(17)は、コホート研究において、脳卒中発症から6カ月後に自立した歩行を取り戻した脳卒中患者は62%に過ぎないことを示した。

多くの患者が最終的にはある程度の歩行能力を回復するものの、移動における自立性はしばしば損なわれたままとなる(18)。

これまで、イメトレを用いた研究では

・家庭での運動イメージプログラムを用いて歩行訓練を行った一連のケーススタディを報告し、脳卒中患者の歩行速度が向上した(5,19)

・歩行訓練に運動イメージを加えることで、脳卒中後の慢性期にある患者のバランスと歩行能力が向上することを明らかにした(20)



本研究の目的

脳卒中発症後1年未満の患者の運動イメージ能力を評価し,潜在的なリハビリテーション効果を最大に高めるために、運動イメージ能力をより高いレベルのパフォーマンスに練習または刺激できるかを検討した

第2の目的として、
運動イメージトレーニングを身体的な練習と組み合わせて行うことが、脳卒中後の歩行機能の改善に有効かどうかを検討



対象と方法

研究デザイン:ランダム化比較試験
対象者:脳卒中患者46名、健康な方27名
・運動イメージトレーニング群(MTT)が21名
・筋弛緩法(MR群)が23名
・対照群が27名

対象者属性:
1. 研究開始前1年以内に脳卒中を発症した方
2. 最小限の介助で10m歩行が可能な方(FACにて3以上の方)
3. 時間依存型運動イメージテスト(tdMI)に合格した方
*試験者は3つの時間帯(15,25,45秒)で想像した動作の数を記録する必要があり,特に想像した動作のみを対象としている。この試験では,指示を理解して動作をシミュレートできるかどうかが示される。
4. 16〜70歳までの方
5. 精神症状やその他の神経疾患を持たない方

研究手順
・全ての対象者は従来リハ3時間/日(PT2時間、OT1時間)、5日/週の従来リハを受けた。
・理学療法と作業療法では、移乗やバランスの練習、日常生活のさまざまな場面での歩行練習など、課題に応じた機能訓練を実施。

MIT群(イメトレ群)
・30分/日のイメトレを毎日実施。
・運動イメージの練習では、参加者は車椅子に座り、目を閉じておくように指示された。
・練習は、視覚的イメージ(課題を実行している自分を「見る」)と運動感覚的イメージ(課題を実行している経験を「感じる」)の両方を用いた内的視点から行われた。
第1週目:対象者がよく理解している環境状況をイメージしながら、視覚、聴覚、感覚を使い手掛かりを与えた。
第2週目:イメトレは、前足着地、膝荷重反応の欠如、立脚時の膝の過伸展、過緊張な膝の動きなど、個別での歩行問題に焦点を当てた。歩行に特有の下肢の動き(股関節の屈曲・伸展,膝関節の屈曲・伸展,足関節の屈曲・伸展)は,それぞれ歩行分析によって提案された。さらに,患者の歩行の問題点に関する情報は,治療担当のセラピストからイメトレが提供された。
3週〜4週間目:以前に練習した構成要素を歩行サイクルに統合することに焦点を当てて,異なる(運動イメージの)歩行課題を用いて,歩行の対称性と速度をリハーサルした。
・最後の2週間は日常生活動作の中でも歩行練習を組み込んだ。

MRグループ(筋弛緩法)
介入群と同じ時間の筋弛緩療法を受けた。筋弛緩療法は毎日30分間の1対1の介入で行われ、Saltら(21)による段階的筋弛緩法の原則に従った。この技術では、まず対象者に特定の筋群を所定の順序で物理的に緊張させ、次にリラックスして筋収縮を緩めることを指示した。同介入で、対象者はリラックスするために横隔膜呼吸に集中するように指示された。

評価項目
・両群ともに介入前と6週間後に再評価された。

運動イメージ質問表(MIQ-R)
自己報告式の質問票で,運動イメージの視覚的および運動感覚的な様式を評価するためのもの。
動作を想像した時に1が非常に困難、7が非常に容易という7段階で評価した。
MIQ-RSvisは視覚的サブスケールを示し、MIQ-RSkinは運動感覚的サブスケールを示す


・歩行軌跡テスト(IWT/AWT比)
対象者は椅子に座って,3つの歩行軌跡の写真が表示されたコンピュータ画面の前に座った。歩行軌跡の長さは2m,5m,10mであり,歩行軌跡の始点は青い線で,終点は円錐で示された。この2つの時間を比率で表し(IWT/AWT比)、対象者がイメージして歩くのと全く同じ時間かけて歩いていた場合は1の数字で表される。

10m歩行テスト
Fugl-Meyer Assessment(下肢運動機能評価)

統計解析
・SPSSを使用。
・Wilcoxon Signed-Rank 検定
・Mann-Whitney検定
・有意差は0.05とした


結果

・各群間で基本的な特性については有意差はなかった。

Mann-Whitney U検定の結果,


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