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A. 数学は同人誌を作るときに使う。

いきなりですが、質問です。
Q. このnoteを読んでいるあなたは、数学が好きですか?

(i)  数学が好きな場合
このnoteを読み進めてください。なぜならば、このnoteには数学を使って解く問題が収録されているからです。

(ii) 数学が嫌いな場合
このnoteを読み進めてください。なぜならば、習ったものの、いつ使うのかよく分からなかった数学の使い所が分かって、数学の魅力に気付くかもしれないからです。




こんにちは。Miyagawaです。
8/13開催の『コミックマーケット100』と、9/19開催の若木民喜先生作品オンリーイベント『落とし神 Fall in love FLAG 11.0』にて、初のサークル参加をし、同人誌を頒布しました。

頒布したのは、『God Only Knows 攻略超特急 神のフレーズ』 という本です。

  • TVアニメ『神のみぞ知るセカイ』シリーズの英単語帳

  • TOEIC対策でお馴染みの『TOEIC® L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』のパロディ本

これら2つの側面を持った本です。

↓『神のフレーズ』について詳しくはこちら

早速ですが、数学について「こんなの勉強して、一体いつ使うんだ……?」と疑問を持たれることが、しばしばあります。
因数分解や三角比・三角関数が、よく引き合いに出される気がします。

その疑問について、このnoteでの答えはタイトル通り
「 数学は同人誌を作るときに使う。」です。

「印刷費や即売会参加費を計算して、頒布価格を決めるのに必要だよね」と思った人もいるかも知れませんが、残念。違います。それは算数です。

このnoteで扱うのは、高校数学です。
まさに「こんなの勉強して、一体いつ使うんだ……?」と疑問を持たれがちなやつです。

『神のフレーズ』はすでに書いた通り、英単語帳です。
英単語帳なのに、数学が制作に役立ちました。

自分でも意外なことだったので、どんな風に役立ったのか、事例を2つ、問題形式で紹介します。
数学の授業を思い出して、問題を解いてみてください。


傾きを再現する


問題

さて、ここで問題です。

1⃣ 『金のフレーズ』には、図1に示したページがある。図の赤枠で囲った部分を限りなく高い再現度で制作するために、傾きの角度を求めよ。なお、道具はものさしのみが使えるものとする。

図1

分度器があれば一発ですが、僕の家に分度器はありません。
ものさしなど、長さを測る道具しかないので、それでなんとか解決することを考えます。


解答・解説

では、解答・解説です。
A. 三角比を使う。

三角比とは、ヘッダー画像にもある、サイン、コサイン、タンジェントのことです。
直角三角形の各辺の比が、角度によって変わるというアレです。
高校1年生の数学Ⅰで習うアレです。

具体的にどのように使ったかというと、このような直角三角形を考えて、底辺と斜辺の長さを測ります。

底辺は33.5mm、斜辺は34.5mmです。二辺に挟まれた角をθとすると、cosθ = 33.5/34.5 = 約0.971です。
次に三角比表を確認します。「三角比 表」とかでググると見つかります。

http://www.math.s.chiba-u.ac.jp/~yasuda/sysKOU/cit-H20/trig-table.pdfより

cosθ = 0.971として、これに最も近いのは、θ = 14°のときのcosθ = 0.9703だと分かります。

なので、InDesign上で長方形を14°傾けて配置すれば、限りなく高い再現度で制作できます。


今回cosθを使ったのは、斜辺と底辺の長さが正確に測りやすく、高さは正確に測りにくいからです。
高さが正確に測れるならば、sinθやtanθを使っても、同じ角度が出てくるはずです。


ページ番号を割り振る

もうひとつ例を紹介します。


問題

またしても問題です。

2⃣ 『神のフレーズ』の原稿をGoogleスプレッドシートで作成し、図2のように、1行目はヘッダー行とし、2行目から101行目に100単語をA列に入力した。

(1) 各単語の番号を、B列に入力する。次の条件を満たすような入力方法を考えよ。
条件1. 2行目の単語を1番として、上から順に100番まで割り振る。
条件2. 制作中に単語の順番を変更するため、スプレッドシートの行を入れ替える操作をしても、常に条件1が満たされる。

(2) 本になったときに各単語が掲載されるページ番号を、C列に入力する。次の条件を満たすような入力方法を考えよ。
条件1. 単語は(1)で割り振った番号順に掲載される。
条件2. 単語は奇数ページにのみ掲載される。
条件3. 1ページに10単語が掲載される。
条件4. 本の7ページ目に、最初に単語が掲載される。
条件5. 制作中に単語の順番を変更するため、スプレッドシートの行を入れ替える操作をしても、常に条件1〜4が満たされる。

図2

スプレッドシートでの原稿作成で直面した問題です。
『神のフレーズ』では各単語に番号を振っている(下図赤枠)ので、この番号を便利に記入することを考えます。

こちらのGoogleドライブに閲覧ファイルとして共有しているので、ご自身のドライブにコピーして解いてみてください。(本来の原稿データには、訳や品詞などの列がありますが、簡単のために省略しています。)

条件1だけ満たすなら簡単です。2行目に1を記入し、3行目に2を記入し、オートフィルで101行目まで埋めれば完了です。

ただ、この方法では、条件2を満たしません。
下のGIFのように、行を入れ替えたときに番号まで一緒に入れ替わってしまいます。入れ替えるたびにオートフィルをやり直すのでは面倒です。

「単語の順番が確定して、動かす必要がなくなってから番号を振ればいいのでは?」と思われるかもしれません。
ですが作業の都合上、単語の番号を確認しながら、単語の順番入れ替えをしたいのです。


解答・解説

では、解答・解説です。
A. =ROW(Bn)-1と入力する。ただし、nは入力するセルの行番号を表す、2以上の自然数。

ROW関数は引数のセルの行を返してくれます。
引数をB2にすれば2が、B3にすれば3が返ってくるので、そこから−1してあげれば、2行目に1が、3行目に2が返ってきます。
同じ行であれば列はどこでもいいですが、自身のセルを引数にしておくのが分かりやすいと思います。

関数にしているので、行を入れ替えたときに引数が自動で変わり、常に条件2を満たすことができます。

これは数学というより算数です。(1)はいわゆる誘導問題なので、(2)に進みましょう。


問題

(2) 本になったときに各単語が掲載されるページ番号を、C列に入力する。次の条件を満たすような入力方法を考えよ。
条件1. 単語は(1)で割り振った番号順に掲載される。
条件2. 単語は奇数ページにのみ掲載される。
条件3. 1ページに10単語が掲載される。
条件4. 本の7ページ目に、最初に単語が掲載される。
条件5. 制作中に単語の順番を変更するため、スプレッドシートの行を入れ替える操作をしても、常に条件1〜4が満たされる。

『神のフレーズ』では、解説欄(下図赤枠)に関連語や用例を掲載しており、一部の単語では、意味と関連した作中のセリフを掲載しています。

特に各ページの最初と最後に掲載したセリフは順序にこだわっていて、作中のストーリーを追体験できる仕掛けにしています。

セリフの順序を試行錯誤するために、ページ番号を見ながら単語の順番を入れ替えたいので、オートフィルに頼らない記入方法を考えます。

(1)と比べると条件がややこしくなりましたが、条件5は(1)の条件2と同様です。(1)の誘導に従ってROW関数を利用することを考えます。

条件1~4を整理すると、下の図のように
No.1~10(2行目から11行目)の単語は7ページに掲載し、
No.11~20(12行目から21行目)の単語は9ページに掲載し、
No.21~30(22行目から31行目)の単語は11ページに掲載し……
ということになります。

こんな結果を、ROW関数を使って作りたい。

これを満たすようにROW関数を使って、ページ番号を入力することを考えます。


解答・解説

では、解答・解説です。
A.=INT((ROW(Cn)-2)/10)*2+7と入力する。ただし、nは入力するセルの行番号を表す、2以上の自然数。

ROW(Cn)は、(1)でも使った行番号を返してくれる関数です。
これにROW(Cn)-2とすると、始まりが2ズレて、0から始まります。

これを(ROW(Cn)-2)/10として、10で割り算すると、こんな感じで桁が1つズレます。

ここでINT関数というものを使います。入力しようとすると「最も近い整数に値を切り捨てます。」と説明が出てきます。

分かりにくい説明ですが、引数を超えない最大の整数を返してくれる、と言えば、数学の得意な方は聞き覚えがあるはずです。

そう。ガウス記号です。[x]がxを超えない最大の整数を表すアレです。

数学が苦手な方は、頭が痛くなるかもしれませんが、INT関数を使って、INT((ROW(Cn)-2)/10)を計算すると、こうなります。

0〜0.9は、0以上1未満なので0になり、
1〜1.9は、1以上2未満なので1になり、
2〜2.9は、2以上3未満なので2になり……
という風に続きます。
要するに小数点以下が切り捨てられるわけです。

これで同じ数字が10個並んだあと、次の数字が10個並ぶ形が作れました。
続いて、INT((ROW(Cn)-2)/10)*2として、2倍してあげます。

「条件2. 単語は奇数ページにのみ掲載される。」を考えると、10個ごとに、
0、1、2……と+1されていくより、
0、2、4……と+2されていくほうが都合が良いからです。

最後にINT((ROW(Cn)-2)/10)*2+7として、始まりを7にズラせば、
7、9、11……と奇数が10個ずつ並び、ページ番号が完成します。

少し複雑かもしれませんが、本の仕様変更などで、条件が変わったときの対応はしやすいかと思います。

INT((ROW(Cn)-2)/10)*2+7
太字部分の数字を別の数字にすれば、1ページに掲載する単語数や、始まりのページ番号を変えられます。

これは1⃣ の三角比の問題とは違い、明確にどこかの分野の知識を使うものではないです。

もし、もっとシンプルな方法を思いついた方は、ぜひ教えて下さい。


まとめ

以上、数学が同人誌制作に役立った場面紹介でした。

英単語帳なので、英語を使ったのは言うまでもないですが、制作を縁の下で支えてくれたのは数学でした。
「『神のフレーズ』は受験勉強の賜物」と言えるでしょう。
勉強しておくと、思わぬところでいいことありますね。

さあ、このnoteを読み終えたあなたが、これからやるべきことはひとつです。
同人誌制作のために、数学を勉強しましょう!




『神のフレーズ』について気になったら、こちらの記事も読んでみてください!

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