リラックスとリサイクル

 ジェイの姉は入浴が大好きで、少なくとも一日に三回以上はシャワーを浴び、湯に浸かっている。その分、水道代も多くかかっていた。姉が自分のリラックスタイムを重視するのに対して、エコロジーや節約を重視するジェイは、三時間も風呂から上がってこない姉に不満を抱いていた。

 ある日、ジェイが家計簿をつけていると、今月の水道代がいつもよりオーバーしていた。直後、姉が大量のリラックスグッズを買って帰ってきた。ついに堪忍袋の尾が切れたジェイは姉に激怒するが、姉は聞かずにさっさと風呂へ入ってしまった。

 一人残ったジェイは二つのいたずらを思いつく。一つ目、ジェイはその場に置かれていたリラックスグッズの一つを、催眠効果のあるアロマに取り替えた。

 あとは二つ目のいたずらだが、姉が風呂から出てこないと実行できない。意外にもその日は、姉は一時間もかからずに風呂から上がってきた。そして何も知らない姉は、ジェイが取り替えた催眠アロマを手にとり、自分の部屋へ戻っていく。

 姉がいなくなった後、ジェイは大量のリラックスグッズを捨てるための便利なゴミ箱を作ることを実行する。そのためには姉の長風呂癖をなおすことも兼ねて、自宅の浴槽を利用してゴミ箱に改造するのだ。

 製作の過程でドリルなどの電動工具を使う時、多少の電力は使ったが、短時間で改造は完了した。もう湯には浸かれなくなるが、節約志向のジェイはただシャワーを浴び、体と頭を洗うだけで充分だった。

 早速ジェイは大量のリラックスグッズを浴室へ運び、ゴミ箱へ捨てた。これで家のスペースも水道代も光熱費も節約できるぞ、とジェイが内心喜んでいるところへ突如、背後に姉が現れた。

「どうしたの、寝ていたんじゃないの?」
「やっぱり私を寝かせるつもりだったのね、ジェイ。私が一日に何回も風呂に入るの、わからなかった?」

 リラックスグッズが消えたことに気づいた姉は、浴槽の変わりぶりを見てすべてを理解する。そしてジェイをゴミ箱に捨てようとした。

「来世をリラックスグッズにリサイクルされたくないのなら、すぐに元に戻しなさい!」

 姉に脅されたジェイはゴミ箱を浴槽へ戻した。結果的に、無駄な電力を消費してしまうことになった。

「少しでも節約したいなら、もう二度とお風呂を改造したりなんかしないでね」
「じゃあ、姉ちゃんも少しは早く出てきなよ」
「いやね。私はお風呂にずっといるからね。まぁ、ジェイも勝手に入ってきても良いけど」
「えっ、いいの?」

 その後、二人は幼少期以来、久しぶりに一緒にお風呂へ入った。髪と体を洗い浴槽に入った後、姉がアロマをつけるのだが、突如として香りを嗅いだジェイが寝てしまう。うっかり催眠アロマをつけてしまった姉は、浴槽にたそがれながら眠るジェイを見てそっとほほえむのだった。

おわり

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