アムールハート@短編小説書き

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アムールハート@短編小説書き

pixivで短編小説や論説文を書いて、気まぐれに活動しています。    ↓ https://www.pixiv.net/users/35374932

マガジン

  • pixiv読み切り小説 まとめ

    過去にpixivに投稿したオリジナル(一次創作)小説を転載しています。 ※更新は不定期です。 ※一部のエピソードに残酷な描写が含まれます。

  • コラム(非小説)

    過去にpixivに投稿したコラムを転載しています。ゲームの話題から社会問題まで、様々なジャンルについて考えをまとめています。 ※更新は不定期です。 ※このマガジンシリーズに載せているのは、あくまでも一つの意見です。

最近の記事

見えないものは傷つけられない

 確かに私は、一人の人間を殺した。  でも、人権も心も傷つけていない。  肉の破片は辺りに散らばっても、  人権の破片は何一つ見えなかった。  血が飛び散る音は聞こえても、  心が壊れる音は何一つ聞こえなかった。  人権も心も幻想だから。  見えないし、聞こえないし、触ることもできない。  だからこそ、それらは決して傷つけられることもない。  もう一度言う。  確かに私は、一人の人間を殺した。  でも、人権も心も傷つけていない。  見えないものを、  どう触れと?

    • 太母と六人の人間

      ※残酷な描写(共食い、拷問、死体など)があります。 ◆◆◆  その昔、人間は自分たちを守り育む太母の恩恵を受けて、長い間平和に暮らしていた。しかしそれも長くは続かなかった。  周りのありとあらゆる植物が枯れ始めた。村でも大凶作と大飢饉が起き、村人たちの間で共食いや殺し合いまで起こる事態に。  それだけでなく、空から伸びる触手に人間が喰われる現象も次々発生。若い娘シカの家族も日に日に一人ずつ姿を消していく。残った家族に家にいろと言われ、その日もシカは家で空の脅威に怯えて

      • あいさつするだけ

        ◆あいさつするだけの授業  起立、気をつけ。  これから「あいさつ」の授業をはじめます。  礼。よろしくお願いします。着席。  今日なぜ「あいさつ」の授業をするかというと、時間がたっぷりあることと、みんな当たり前にやっている「あいさつ」の練習をたまにはしてもいいかな、ということで「あいさつ」の授業をすることにしました。  突然ですが、問題です。  この時間、人に会ったらまず最初に言う言葉は? 『あの、先生……』 「「「おはようございます」」」  大正解。  では

        • 未知の元号

           彼は知らない場所で目覚めた。  そこへ何者かが現れた。彼は怒鳴った。 「やめろ、何をする気だ! 今はもう昭和じゃない。令和だ!」 「違うよ。今はもう令和じゃないどころか、その次の次の次の元号だよ! まぁ私バカなもんで名前忘れたけど。てかもっと先だった気もするけど。とにかくおじいさん、令和なんてもう終わったから、いい加減目覚めてよ! あっ今、人工冬眠から目覚めたばかりか」  人工冬眠技術が普及した時代に目覚めた彼は、人工冬眠の存在さえ知らなかった。 おわり

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        • pixiv読み切り小説 まとめ
          97本
        • コラム(非小説)
          5本

        記事

          あなたもわたしも悪人

           独裁者は部下に命じた。 「一人も残さず、すべての悪人を殺せ」  次の瞬間、独裁者は殺された。  残った部下は、遺体に向かって呟く。 「あなたも悪人ですから。さてと、すべての悪人を片付けたら、私も自死するとしますか」 おわり

          子供向けのエロ漫画

           僕の友達は不治の病で十七歳までしか生きられない。そんな彼も、死ぬまでにエロ漫画を読みたいと心では願っていたんだって。  と思ったら彼のいる病院に、子供も読んでいいエロ漫画があるという。友達はその漫画を手に取り、夢中で読み続けた。  結局、友達は助からなかったが、最期は残酷な現実も頭になく、ただ楽しそうな様子だったという。  友達の兄弟からその話を聞いた僕は、その漫画が読みたくて仕方がなくなった。そこで、仮病を使って友達と同じ病院へ入院した。その病院には誰も立ち入らない

          崩壊地球

           ここ最近のこと。街の亀たちの間で甲羅を石や花で飾る甲羅装飾が流行っていた。流行を受けて、甲羅装飾屋というお店も急激にその数を増やした。一匹のとある亀も甲羅装飾屋を営み、五匹の子供たちにも時々手伝わせていた。  ある日、店主のもとへわがままな客が訪れてきた。「俺は神になるんだ」と豪語するその客は「金ならいくらでもある」と言って、この地球の誰にも負けないくらい煌びやかで山盛りの派手な装飾にするよう、店主に要求した。  注文を受けた店主は、小さな草花から高価な宝石まで、今ある

          透視眼鏡はR-18G?

           他人の心の中を覗ける透視眼鏡。とある事情からこの眼鏡は成人向けにのみ販売されており、十八歳以上でないと購入できない。多かれ少なかれ、古今東西 老若男女問わず人の心の中は、性的な妄想やグロテスクな妄想が飛び交っているからだ。もしそれをうっかり、子供や免疫のない人が見たらショックを受ける可能性があるため、年齢制限がかけられている。  私も十七歳の誕生日にその眼鏡を購入しようとして断られたので、来年の誕生日プレゼントに回すことにした。改めて、十八歳になって購入し、この眼鏡を使っ

          ケーキちゃんの秘密

           スイーツパーティーに参加した私は、そこで同い年ぐらいの女の子・ケーキちゃんと出会った。ケーキのドレスとイチゴのティアラを身につけ、イチゴ柄のリボンで髪を結んでいる。それだけでも可愛いけど、さらにケーキちゃんは、自分のことを本物のケーキだと思い込んでいた。 「ケーキちゃんは魔法を使っていないのに、どうして本物のケーキみたいなんだろう?」  私はふしぎに思いつつも、いつの間にかケーキちゃんと仲良くなり、一緒にダンスを踊った。  パーティーの最後には、みんなのお楽しみ・巨大

          全員メイクで何にでもなれる時代

           かつて漫画で語られた夢の機械が次々現実となった、今の時代。科学技術の進歩と人権意識の向上で、国民の多くは長時間働く必要がなくなった。  総理大臣も、休日は全身メイク技術で女装など自分好みのおしゃれを楽しんでいた。  しかし既に令和ではなくなった今の時代でも、昭和の価値観は一部で残っていた。  とある女性が務める会社にも、その古い価値観の上司がいた。上司は女性と会うと必ず「美人でうらやましい」とか「彼氏いる?」としつこく聞いてくるのだ。  当然、女性は真顔で「それ、相

          全員メイクで何にでもなれる時代

          虚構を捨てる

          ◆虚構を捨てる 「目に見えるものすべてに気をつけろ。目に見えないものは気にするな、捨てろ」  こう命令され、誰もが"目に見えないもの"を捨てた。日に日に激しさを増す、終わりの見えない戦争を生き抜く為に。 ◆寒いときは 「寒い、寒いよ。毛布はないの?」 「じゃあ、この本を焼いて暖を取ろう」 「まぁいいか、今は本を読む場合じゃないし」 ◆ゲーム回収 「戦争っていつ終わるのかな。早く帰って一緒にゲームしたいね」 「それが、国の命令で全てのゲーム機は武器の材料にするために

          誰かの愚痴

           うっわ、あんな奴らが七十億匹もいるとかマジ気持ち悪いですわ。いや、七十億匹よりもっと多かった気がしますが。そんなことより、愚痴を!  他の生物より身体能力が劣り目も耳も鼻もきかないかつ唯一与えられた理性と知能も上手く操れず、馬鹿で低俗で進歩向上の努力もせず怠け、人に与えず人から奪うことを繰り返し、この世のほんの少しのことも完全に正確にわかってない。  そのくせ自分たちのことを「宇宙で最も頭が良く進化も進んだ高度な生物」、彼らなりに被害者ぶった言い方をすれば「宇宙の孤独な

          善意でできた道

          ◆善意でできた道  上級者向けの危険な場所を目指していた旅人は魔法使いに出会う。旅人に「安全な道を作ってほしい」とお願いされた魔法使いは自分の心から善意を取り出し、頑丈な道に変えた。旅人は早速道の上を歩く。道の上は魔法のバリアで涼しく快適で安全だったが、道を抜けた時が大変だった。道を抜けた途端、急に凄まじい熱気を感じた。今までずっと快適だったので、あまりの温度差に体力を奪われ旅人は倒れてしまう。気づいた他の旅人が助けようとしたが、もう遅かった。 ◆すべては善意から生まれた

          バベルの星

           みんなが仲良く楽しく暮らす平和な惑星があった。  ところがある日突然、そこへ巨大隕石が落ちてきた。その惑星は粉々に砕け散り、それぞれ別の小さな星々に分裂してしまった。犠牲が多く出て、その中で生き残った者たちも、みんなバラバラになりみんな寂しい思いをした。  それから長い年月が経った。  一つの小さな星で祖父とともに住む孫は、ある日祖父の独り言を聞き、放っていられなくなる。  祖父にはたくさんの仲良しの友達がいたが、元いた世界が分裂したために互い離れ離れに切り裂かれて

          バベルの月

           みんなが仲良く楽しく暮らす平和な惑星があった。  ところがある日突然、そこへ巨大隕石が落ちてきた。その惑星は粉々に砕け散り、それぞれ別の小さな星々に分裂してしまった。生き残った者たちも、みんなバラバラになり、みんな寂しい思いをした。  そのうちの一人であるエイは、大好きなみんなとの再会を望み、自分のいる小さな星から脱出しようとした。そのためには重力に逆らう方法を探す必要があった。そこで、エイはその小さな星を隅々まで探検するのだった。数え切れないほどたくさんの友だちのこと

          きげんぎれ

           「機嫌」と入力したいのに、誤って「期限」と打ってしまう。もう期限が迫っているからゆっくりしてられない、と焦れば焦るほど同じ間違いを何度も繰り返す。ますます機嫌が悪くなり、今さっき思いついた良い考えもなぜ思いついたのか、起源がわからなくなった。  ようやく「機嫌」という一単語を入力できた時には、すでに期限切れだった。心身共に耐えかねて発狂、しばらく機嫌切れになった。  何か、奇言や奇幻みたいになったな。 おわり