バベルの星

 みんなが仲良く楽しく暮らす平和な惑星があった。

 ところがある日突然、そこへ巨大隕石が落ちてきた。その惑星は粉々に砕け散り、それぞれ別の小さな星々に分裂してしまった。犠牲が多く出て、その中で生き残った者たちも、みんなバラバラになりみんな寂しい思いをした。

 それから長い年月が経った。

 一つの小さな星で祖父とともに住む孫は、ある日祖父の独り言を聞き、放っていられなくなる。

 祖父にはたくさんの仲良しの友達がいたが、元いた世界が分裂したために互い離れ離れに切り裂かれてしまったという。さらに祖父は、一度だけでも一人だけでも多くの友達と再会したいという。

 そのような祖父の願いを、おじいちゃん思いの孫は叶えてあげたいと思った。孫と祖父たちは自作の宇宙船に乗り、自分たちの星を飛び立ち、星々を回る旅に出るのだった。

 まず最初に降りたのは、人口十数人程度の星。その住人の人間たちと祖父は互いに顔を見知らない様子だった。それどころか、住人たちは祖父と異なる言葉を話していたため、意思疎通がまったくできなかった。住人たちは祖父らを威嚇して星から追い出した。

 次の星では、住人は人間とは違う種族だった。もちろん使う言語も異なっていた。

 また別の星でも、変わった食事の仕方をする住人がおり、やはり言語も違った。

 いくつかの星々を回った。中には祖父と面識のありそうな住人もあった。が、どの星の住人も異なる言葉を使っていた。

 祖父はおかしいと思った。みんなで同じ星に一緒に住んでいた頃は同じ言葉を使い、食事の仕方も同じだったのに、と祖父は言う。再会こそはできても通じ合えなくなったことにガッカリしながら、孫と祖父は自分たちの星へ戻った。

 それからしばらくした後、バラバラに別れていた星々は互いに引きつけ合ってはぶつかり合ってを繰り返し、元の一つの大きな惑星へ戻る。

 しかし、言葉もやり方も種族も、他と違うものへ変化した人間たちは、せっかく再会しても互いに分かり合えず、対立が生まれるようになった。

 それからというもの、この星では戦争が起こるようになった。

おわり

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