透視眼鏡はR-18G?

 他人の心の中を覗ける透視眼鏡。とある事情からこの眼鏡は成人向けにのみ販売されており、十八歳以上でないと購入できない。多かれ少なかれ、古今東西 老若男女問わず人の心の中は、性的な妄想やグロテスクな妄想が飛び交っているからだ。もしそれをうっかり、子供や免疫のない人が見たらショックを受ける可能性があるため、年齢制限がかけられている。

 私も十七歳の誕生日にその眼鏡を購入しようとして断られたので、来年の誕生日プレゼントに回すことにした。改めて、十八歳になって購入し、この眼鏡を使ったが、憧れの男性や優しい先輩が性的な妄想をしているのを見てしまった。男だけではない。女も自分好みの性的な妄想を垣間ちらつかせた。中には、その人にしか絶対わからないような特殊性癖っぽいのもあり、不快になってその眼鏡を使うのをやめた。

 しかしすぐ、目の前に可愛い子供が現れて、不快な気持ちが一気に浄化された。再び透視眼鏡をかけると、その子の心は今まで見てきた誰よりも純粋で何の汚れもなかった。ああ、なんて可愛らしいのだろう。そうだ、と私は思いついた。大人と違って子供の心なら純粋だから、子供や免疫のない人が覗いても大丈夫なのだ。早速私は子供に対してのみ使える、新しい透視眼鏡の開発をはじめた。

 透視眼鏡が完成し、上手く動くかテストのため近所の公園へ出かけた。そこには、あの時会った純粋な子供がいた。新しい透視眼鏡をかけて、その子の心の中を再び覗く。相変わらず子供らしく純粋で天真爛漫な世界観だ。可愛いわがままな考えは所々に見られたが、そうして彼の心の隅々まで見渡しても、どこにもいやらしく汚れた欲望はない。

 この透視眼鏡は大成功だ。商品化すればきっと多くの人に売れるに違いない。私は新しい透視眼鏡を全年齢向けに販売することにした。

 全年齢向けとはいったものの、買ってくれる人の多くは子供を持つ親や教育関連の仕事についている人がほとんどだった。とはいえ、発売当初は順調に売れた。そして、使ったお客さんから良い反応も届いてきた。

「私の息子は思春期なのですが、以前はよく問題を起こしていました。そこで私がこの眼鏡をかけたところ、実は息子は性の悩みを抱えていたことがわかりました。息子も何も考えていないわけではなく、ただ、恥ずかしくて親にも言えなかったのですね。今、息子は楽しく元気に、周りとも仲良くやっています」

 子供も大人と同じように真剣に悩んだり、性的な考えを巡らせることがあるが、それらは普段は大人に抑圧されて、自由に吐き出せるわけではない。しかし子供に対してのみ使える透視眼鏡のおかげで、子供の見えない悩みや考えが可視化され、それによって救われた子供も多いという。

 自分の発明が、親御さんに喜ばれるなんて。しかも、困っている子供たちまで救えた。良い仕事をしたなと思ったが、苦情もなかったわけではない。

「エログロが苦手な私ですが、全年齢向けだからと安心して使いました。まさか、頭が良くて可愛い息子が心の中では年齢指定レベルのえげつないことを考えていたなんて。まぁ、あくまでも妄想ですし、むしろ勝手に覗いた私が悪いのですが。その時は本当にショックで眠れませんでした。子供にしか使えないとはいえ、物事の区別がつかない子供が興味本位のいじめに使わないためにも、この眼鏡は全年齢向けに売るものではありません」

 このお客さんの反応を受けて、当初は全年齢向けで販売していた透視眼鏡を、現在では十八禁指定で販売することになった。

結論:全年齢向けの透視眼鏡は作れない

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