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第16話:思春期男子もだまされる「肉じゃない肉」。高野豆腐でゆるベジタリアン始めてみた。

以前こちらの記事に登場した、思春期に片足を突っ込んだわが家の子。

成長につれて大人っぽいにおいになってきたと同時に、肉と米の消費量が右肩上がりだ。
米は小さい時から大好物で、米と水さえあれば生きていけるようなタイプだったけれど、ここのところ肉への情熱がハンパない。

地球環境のためには、ベジタリアンにならないとダメ?

SDGsやエシカルライフについて学びを深めていると、必ず出会う「肉を食べない」という考え。
牛さん豚さんかわいそー!ってだけの話ではない。家畜として育てるだけで、たくさんの資源を必要とする。
1kgの牛肉を生産するのに、60kgのCO2を排出する。
水資源、CO2排出の観点からお肉を食べるのをなるべくやめようよ、という話だ。(たぶんきっと他にもいろいろある。)

ひと口にベジタリアンと言ってもいろいろあって、動物由来のものは一切食べないヴィーガンや、卵だけは食べるオボベジタリアンとか、乳製品だけはOKなラクトベジタリアンとか、いろいろあるようだ。詳しくはこちらのサイトを。

そんな話を見聞きしても、わたしはなかなか肉なし生活に踏み切ろうとは思わなかった
この日本という国で生きる限り、肉なしの食生活は息苦しそうに思われた。
給食は、肉もしっかり出る。
友達と一緒に食事に出かける時、「●●を食べない人」は、宗教上の理由でないかぎり周囲に気をつかわせる。と同時に、「●●を食べる人」を暗に排除しているととられかねない。(ダイエット中の女子が、同様の空気感をつくる。)
焼肉、ステーキ、焼き鳥、餃子、やっぱりおいしい。
そして、生産者さんの顔もよぎる。生産者さんはおいしいお肉を届けようと日々努力を重ねている。そういう人たちの存在自体を否定するような気がした。

あと、ヴィーガンやマクロビのレシピを眺めていても、正直おいしそうに思えなかった。
耳慣れない食材を使うことがあるし、そういった食材は近所のスーパーには売っていない。
食べたことのないナゾの食品を、わざわざ調べて買いに行って(しかもだいたいちょっと高い)、あんまりおいしくなかったら…
払う犠牲の方が多いように思えた。

意外と身近になってきた“お肉を食べない人”

でも最近、わたしのまわりに少しずつ肉を食べない人が増えてきた。
しかも「あ、あなたも…?」と思うような人。例えば環境意識の全然高くない人とか、お酒もタバコも大好きな小太りの友達とか。
急に、肉なし生活のハードルがぐっと下がったように感じた。

思春期の子に肉は必要じゃないか?

しかし、である。
前述のわが子。彼の人生でいちばんたんぱく質を必要とするこの時期に、今までふつうに食べてきた肉を突然消し去ることは、果たして正しいことなんだろうか?
正しいかどうかはよくわからないけれど、少なくとも彼は納得しない気がする。何もこのタイミングで…と自分でも思う。
彼は米も肉も、野菜も魚も果物も、何だってまんべんなく好きな子だ。そしてわりと何でもフラットに受け入れる性格だ。それでも、彼の体は正直に肉を求める気がする。

高野豆腐を代替肉に。試しにやってみる

「気がする」だけなので、試しに「代替肉」で彼がだませるかやってみることにした。
高野豆腐をひき肉にする。

高野豆腐は、スーパーならどこででも手に入る。しかも安い。日持ちする。けっこう国産。カルシウムが多い。最高だ。
水で戻した高野豆腐を、フードプロセッサーで粉々にして「ひき肉状」にし、あたかもひき肉のようにして調理するのだ。

にんにくと玉ねぎをみじん切りにして、炒める。
そこに粉々の高野豆腐を投入。
塩こしょうで下味をつけて、ケチャップとソースでハンバーグソース風の味つけにしてみる。

見た目はじゅうぶんひき肉だ。

食べた感想は

これをチーズやレタスと一緒にピタパンにはさんで、しれっと食卓に出してみる。
子どもたちは何のちゅうちょもなくかぶりつく。
まゆ毛をちょっとつり上げて目を見開き、もぐもぐしながら表情で「うまいよ、これ」を伝えてくる。

長男が勢いよく食べつくしたのを見届け、最後に「中身なんだったと思う?」と聞いてみた。

お肉とチーズでしょ?」

わは!大成功!

高野豆腐は、パラパラのひき肉になる

「高野豆腐だったんだよ」と伝えると、「へぇー、肉とちょっと違うかなとは思った」と負け惜しみを言っていた。

きっとケチャップとソースという、テッパンの味つけが功を奏した部分はあると思う。
でもパラパラのひき肉を表現するのに、高野豆腐はじゅうぶん役目を果たす。
濃いめの味付けがきっといいのだろうから、「鶏そぼろ」とか「マーボー豆腐」とか「そぼろ煮」とかいけるかもしれない。

“たまに”ベジタリアンになってみる

この代替肉は、思春期の彼の体をだまし続けられるだろうか?

でも、すべての食事から一気に肉を遠ざけなくたっていいのだ。週4回食べていたのを、3回に減らすのだっていい。子どもたちは食べて、わたしは食べないのだっていい。
そういうのを“フレキシタリアン”と呼ぶのだそうだ。名前がついているところがいい。名前がつけば、市民権が得られる。

とりあえず、スーパーで手軽に手に入る高野豆腐は、パラパラのひき肉になる。そして思春期男子も、だませる。

生産者さんの件は、引き続き悩みの種だ。

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