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さよなら、思い出と渋谷・東急本店

東急の7階丸善ジュンク堂は、本が大好きな元彼と初めてデートした場所。

本屋は渋谷の街中と比べ、無駄な匂いがないからか、彼のつけている香水が本を手に取る動きに合わせて私の鼻を掠めた。爽やかだけど少し男らしさも感じさせる香り。

「ねぇ、何の香水使ってるの?」
「うん?じゃあ当ててみてよ」

なんて軽いゲームをして、彼の匂いの正体はCHANELのものだと知った。
でもその後に、一緒にその香水をお店に見に行ったけど、何だか彼からの匂いとは違うと感じて…。そしてなぜか彼の香りが頭から離れなくなって…。
まるで花の蜜に惹きつけられるミツバチの様に、私は本能的に彼に恋をした。

それから数ヶ月後…。

残念なことに、彼のわがままなところやマイペースすぎる態度にブンブンと振り回され続け、耐えられなくなった私は、彼とお別れを決意した。
でも、別れた直後はなぜか最初のデートの匂いだけが忘れられなくて、渋谷に用事がある度に丸善ジュンク堂へ意味もなく立ち寄っていた。
もちろん、あの香りに二度と出会うことはなかった。

そしてその思い出の場所が、55年間の歴史に幕を閉じたと昨日のtwitterで知った。
私だけでなく、多くの人にとっても思い出の地であっただろう場所。
もう渋谷に行っても立ち寄ることはなくなっていたけど…。
思い出の一つがなくなった気がして、何となく胸が締め付けられた。


「あぁ、私はとうとう、あの場所もあの匂いにも、二度と出会えなくなってしまった。」と…。

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