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#短編小説
【短編】音の三部作「ブレーキの悲鳴」
深夜の住宅街に車のブレーキの悲鳴が響き渡った。続いてドスンという鈍い音が聞こえた。「またか・・・」俺は、そう思っていた。
この辺は住宅街で普段は車は通らないのだが、少し離れた所に有る国道が、深夜の工事で片側通行になっている時などに、家路を急ぐ車の迂回路となる事が多かった。しかし、俺の住んでいるマンションの近くの十字路は、角の家が出っ張っているのと、少しきついカーブになっているために見通しが悪く、
【短編】音の三部作「三日月コイン」
「チャリン・・・」
深夜のアパート、ドアの外でコインが落ちるような音が響いた。
その日は記録的に続く熱帯夜に、頼みのエアコンがダウンしとても寝れたものじゃなかった。俺は疲れた体と格闘しながら、なんとか寝ようと頑張っていた。
そんな時、ドアの音で確かにコインの音がした…。しかし、誰も外に居るような気配はない。
「変だな、何でコインの音だけ?」
目覚まし時計を見ると、時計の針はもう深夜の2
【短編】音の三部作「ワイングラス」
床に落ちたワイングラスは音をたてて砕け散り、辺りにグラスの破片とワインが飛び散った…。グラスの砕ける音を聞いた瞬間、俺の脳裏にはあの苦い思い出が蘇っていた。
大学に入学した俺はすぐに、テニスサークルに入った。
そこで、同学年で歳も一緒だった彼女と出会い、すぐに好きになってしまったんだ。我慢なんて言葉を知らなかった俺は、すぐに強引なプッシュをして、粘りに粘って口説き落とし彼女と付き合う事になった