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【恋愛】「SNSのせいで理想が高くなっている」は本当か?

恋愛における"SNSの罪"を指摘する言論をよく耳にします。
それはおおよそ以下のようなものです。

SNSによって私たちの理想は高くなってしまった。
かつてSNSがなかった時代は、
自分が直接見聞きできる身の回りの世界しか
私たちは知らなかった。
しかしSNSの登場により、
「外の世界」があることを知ってしまった。
世界は広く、世の中には自分の周りの人以上の
イケメンや美女がいることを知ってしまった。
SNSの登場によって現実の身の回りにいる相手は魅力を失い、
興味を抱けなくなってしまった。

このような意見は実にわかりやすく、
多くの人にとっておおよそ納得できるものでしょう。

しかしこれだけでは私たちを取りまく現状を
十分に説明しきれていないのもまた事実です。

今回は、男女関係とSNSについて書きたいと思います。


SNSという"仮想敵"

「SNSのせいでスマホ依存になる」
「SNSがいじめの温床になっている」

SNSはなにかと敵視されがちです。

でも歴史を振り返るとこういうことはよくあります。
新技術、すなわち「生活のなかに突如として現れた異質な存在」は
いつの時代も敵視されがちなのです。

たとえば蒸気機関車が発明された当時、
人々は、それまでになかったその異常な移動速度が
身体になんらかの悪影響を及ぼすのではないかと恐れました。

そして今、生活の変化がはげしいこの現代において、
次々と登場する新しい技術が
恐れられ、目の敵にされるのはある種自然なことといえるでしょう。

そして
・若者が草食化している
・若者が恋愛に積極的でなくなっている
といった問題を語るうえでも、
やはりSNSが"仮想敵"として設定されます。

SNSが私たちの理想を高くした。
だから私たちは現実の相手に興味を持てなくなった。

この意見は正しいと思います。

SNSひいてはインターネットが
社会にもたらした変化の最たるものが
「闘争領域の拡大」です。

これまでは同じコミュニティに所属する人と
競争していればよかった。
それがSNSの登場によって、
全世界の人間が競争相手になってしまった。

これが「闘争領域の拡大」です。
経済のグローバル化と似たものがありますね。

よって、SNSの登場によって
より魅力的な競合相手の存在を知ってしまった
という点において、
この意見には妥当性があると思います。

しかし、SNSは私たちの理想を高くした
というだけでは説明が不十分だと思います。
それでは敵をはるかに小さく見積もってしまっているのではないでしょうか。
SNSやインターネットはそれ以上の脅威であり、
私たちの深層にいたるまでをハックしています。

この現状を説明するキーワードが"報酬"です。

"報酬社会"

インターネットの特徴として
その「供給の速さ」が挙げられます。

インターネットが存在しなかった時代、
私たちは何かを知りたいと思ったとき、
本屋や図書館に行き、
本を1ページ1ページめくって物事を調べなくてはなりませんでした。

この動作には時間がかかります。
何かを知りたいと思ってから、
その情報を得るまでに
数時間~数日かかることになります。

この時間がインターネットの登場によって
劇的に短縮されました。

ブラウザを開いて検索すれば、
ものの数分、下手したらほんの数秒で
私たちは目的の情報を得ることができます。

私たちはじつに簡単に、すばやく報酬を得ることができるのです。

そしてこれは何も情報に限った話ではありません。

鬱屈した気分のとき、
刺激がほしいとき、
かつてはパチンコや競馬場に足を運ぶしかありませんでした。

しかし今ではスマホを開けば
ゲームやSNSで簡単に刺激を得ることができます。

性の分野においても、現代の私たちは
外に出てナンパをしたり
風俗に行ったりしなくても
Pornhubを開けばすぐに解決できます。

私たちは"報酬"に慣れすぎているのです。

そして報酬や刺激に慣れると何が起こるかというと、
時間感覚が速くなります。

時間が速く流れるほど、
空虚な時間がより恐ろしくなります。

ここ20年ほどで、
私たちの時間感覚は速くなっています。
私たちは刺激のない空虚な時間に耐えられず、
次から次へと無節操にそれを求めます。
報酬を、刺激をもとめてスクロールをやめられません。

実際、SNSやゲームを製作・運営する企業は
ドーパミンを研究し尽くしています。
SNSやゲームは
私たちの脳の報酬系を徹底的に刺激するよう設計されているのです。

元来、この世界には
これほど刺激はありふれていなかった。
それがインターネットの登場によって、
無限の刺激を絶え間なく供給されるようになったのです。

そしてこれこそが
私たちが草食化し、現実の相手に興味を持てなくなった理由です。

現実の相手はすぐに報酬をくれない。

この報酬のない時間、刺激のない空虚な時間に
私たちは耐えられない。

私たちはもはや何かを得るために
気長に根気強く待てなくなっている。

そんな現実と比べて
インターネットはいとも簡単に、あまりにすばやく
無限の快楽を供給してくれる。

これこそが私たちが
真にSNSをインターネットを警戒しなくてはならない理由です。

空虚さと向き合う

私たちは空虚さに耐えられません。

目の前に広がる空虚な時間を
耐えず色とりどりの刺激で満たしていなければ
なんだか怖くなってしまう。

ここが私たちのウィークポイントなのであり、
SNSはここをハックしています。

私たちは絶えず刺激を求め、
インターネットはそれを絶え間なく供給し続ける。

大切なのは
空虚さを安い刺激で満たそうとしないこと
です。

大量の刺激が私たちの時間に詰め込まれる現代。

ときには勇気をもって
空虚なリアル
刺激のないリアルと向き合ってみること。

それこそが私たちの時間を取り戻す第一歩でしょう。

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