小説を書くのに、広辞苑でも語彙が足りなくなってしまった
小説を書く際、いつも使う「相棒」のような道具があります。
それは、辞書。それも分厚いことで有名な「広辞苑」です。
高校に入る際、伯父に「入学祝い」としてリクエストした品で、小説を書き始めてしばらくは、これだけで充分、用が足りていたのですが…
そのうちとうとう、広辞苑でさえ用が足りなくなってしまう小説が出て来てしましました。
それが「花咲く夜に君の名を呼ぶ」。
古代日本風の世界を舞台にした“和風ファンタジー小説”です。
(国風文化が花開くより前の時代ですので、どちらかと言うと“倭風ファンタジー”と言った方が合っている気はしますが…。)
「時代が古代なので、広辞苑でなく古語辞典を使うようになったのか?」と言われれば、全くそうではなく…
(実際のところ、下手な古語辞典よりは広辞苑の方が「古代」の言葉は載っています。高校で買わされるようなレベルの古語辞典は、平安時代以降メインなものが多い気がするので…。)
自分がこの小説で使う語彙を集めたのは、「風土記」や「記紀」「万葉集」「古語拾遺」などの古典作品。
そして、古代史に関する文献などからでした。
小説の「雰囲気」を出すために、「ことば」は重要な要素となります。
その「雰囲気」を出すのに充分な語彙が、自分の中に足りないと、まず最初に思ったのです。
なので、小説に取りかかった最初の数ヶ月は、小説本編を書くでもなく、プロットを作るでもなく、ひたすら各種文献から「ことば」を拾い集める作業に終始していました。
古語は、和英辞典の「日本語→英語」のように、「現代語→古語」という引き方ができません。
小説の中に古語(古称・古名)を織り込んでいくためには、まず作者自身がその「ことば」を知らなければなりません。
文献を読み込み、魅力的な言葉があれば、それをちまちまノートに書き留めていく、ひたすらに地道な作業…
しかしそれは、必ずしも苦しい作業ではありませんでした。
元々「ことば」が好きで小説を書いているような所もある人間なので、新しい素敵ワードを獲得できるのは、むしろ「知の喜び」だったのです。
こうして新たに獲得した語彙ですが…
実は、その語彙を真の意味で味わえるのは、PC版のカスタマイズで「倭風描写版」を選択した場合のみとなっています。
デフォルト(初期設定)の「普通描写版」では、なるべく「古くてディープ過ぎる言葉」は使わず、「そこそこ和風っぽい」程度に留めているのです。
なぜなら、この小説を読む読者の全てが、そんなディープな古語(やまと言葉)を求めているとは限らないからです。
別記事にも書いていますが、文章の好みは、人それぞれです。
<関連記事→12:小説の文章をカスタマイズしてもらいたい>
そして、そんな文章の好みで自分の小説が「選ばれない」ことがある、という事態は、どうしても避けかったのです。
…ひょっとしたら、「普通描写版」←→「倭風描写版」の切替機能自体、気づいていない読者様もいるかも知れないのですが…
(一応、図解付きで画面の見方ガイドなども作ってはいるのですが…。)
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