感想 休館日の彼女たち 八木詠美 無理筋なのに、それを突き通したところに本書の面白みが存在します。
発想が面白い。これは読む価値のある本だと思います。
欠点をあげると、場面展開が早く、何の話しをしているのかわかんないうちに、次の場面に進行しててとまどった。そういうところは何となく素人みたいな感じがする。だから没入しずらい。
彼女は大学教授から、あるバイトを紹介されます。
石像がしゃべるという発想が奇抜です。
彼女は昔から、黄色のレインコートを着ていた。これは他人からは見えないし、脱ぐこともできない。夏になると暑くなり汗が噴き出るのがコンプレックス。だから、本業は冷凍倉庫で働いている。
この黄色のレインコートですが。 自分と他者を分別する鎧のように見える。
人間が苦手な人は一定数いる。
彼女は、このレインコートによって、自分を他者から分離し守っているかのようなのです。
美容院の予約を入れたのはいいが、葬儀屋の死体専門に散髪やメイクしている人に頼んだり
とにかく。やることが奇抜
いくら人嫌いでもおかしい。
ということらしいのですが、この場合の共闘の相手は変態の学芸員です。
この男、虫眼鏡での毎日、ヴィーナスの石像を穴が開くのではというほど観察するド変態
ヴィーナスの石像と対話したくて簡単なラテン語まで習得したのです
ヴィーナスは、人に見られるのが嫌
展示品なのに
石像を擬人化し、他者の目にさらされる嫌悪感を物語っている
なんとなく、この石像は彼女と似ています。
変態学芸員の本音が面白い。
ここには男の本音が見え隠れしていて
男女平等と言いつつも、恋人や妻の幸せを望んでいると言いつつも
けれど、それは自分の望む範囲の中で・・・という限定付きで
本音は、かごの中の美しい鳥でいてもらいたいということです
二人は駆け落ちします
でも、ヴィーナスの石像ですよ。
そんなの袋に入れて持ち出せるのか?
無理無理!!
外国まで運べるのか?
無理無理!!
無理だけどやってしまう。
そこが、この小説の理不尽な魅力
2023 5 14
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