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書評 幕末紀 柴田哲孝  銃を中心に幕末を見ると少しだけ景色が変わって見えた。

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多分、この作品は読み手によって評価がわかれる作品だと思います。

ポイントは2つある。
銃を中心に幕末を描いた点
作者のご先祖が主人公であるという点だ。

桜田門外の変の記述はおもしろかった。
井伊直弼を水戸の脱藩浪士などが斬る場面であるが
映画などでは、刀で切られていた
でも、現実は短銃が用いられていたのだ。
そして、そのなぶり殺しに近い記述には
水戸藩の井伊直弼に対する憎悪が嫌というほど滲み出ていた。
攘夷思想の水戸浪士が、西洋から輸入した最新式の短銃を使っていたというのが面白い。

主人公が銃の達人ということで、とにかく銃についての記述が多く
とてもわかりやすい。
当時の標準装備の銃と西洋から輸入したものの品質の差は歴然としていて
その点だけをとっても明治維新軍の強さは想像できた。

新選組が長州の銃をあそこまで気にしていたかは、本当のところよくわからないが
長州がある程度の銃を持っていたのは確かだ。

マイナスの評価になるのは、主人公が超人すぎることだ。
本作の主人公の柴田快太郎は、作者柴田哲孝さんのご先祖である
坂本龍馬と親類で脱藩の手助けをし
長崎では、五代友厚などの有名人とも知り合いで
京都で隠密をしていた時には、勤皇の志士吉田稔麿などと親交があり
あの寺田屋事件の時、吉田を船で救助したという・・・
そして、唐人お吉。ハリスの愛人。彼女とも恋仲になる。
更に、西郷さんとも気楽に酒を飲んでしまう。

ありえへん・・・・。
そんなにすごい人なら、もっと注目されていたはずである。

この物語だけ読んでたら坂本龍馬よりすごい人じゃんと思えてしまう。
この部分と、ラストの糞詰まりのような終わり方がちょっと・・・。

坂本龍馬との会話の中で、龍馬がこんな事を言っている。

人の道は1つにあらず。道は百も千も万もあるぜよ
これが快太郎の運命を変える。

もう1つ龍馬の名言

快太郎、恥ということを捨ててこの世は成るべし。義理などに身を縛られて命を落とせば何もできん。無駄に死んではつまらんぜよ

快太郎と龍馬の関係は、快太郎の叔父が龍馬の姉の婿なのである。
そういうこともあり、作者は龍馬をとてもリスペクトしているようだった。


2021 6 10




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