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感想 ししりばの家  澤村伊智  幽霊屋敷ものというホラー分野か。ししりばという祟り神は新しい。

澤村作品の魅力は、特殊能力を持つ比嘉姉妹の存在だと思います。
圧倒的な怪異に立ち向かい撃破する姿は気持ちいい。

本作は、 ずうのめ などと同じように土俗的というのか民俗学的というか横溝的です。
ししりば は家の守り神。本当は祟り神だと思う。

本書の不気味さは、この ししりばに祟られた家には 砂が積もっていることだ。
そして、その砂は、家族にとって 普通のことと認識されている。

もう一つゾッとするのは、「家族の欠員を補充する」ということだ。おばあさんが死ぬと別人を連れてきて補充し、妊婦の奥さんが死ぬと、奥さんまで補充する。住民も補充された人も、それが当たり前のことになってしまう。

この特殊なことが当たり前になってしまうことが、本書の怖さなのだ。

ししりば が爆弾と犬に弱かったのにはびっくりした。
今回、比嘉さんは絶体絶命に追い込まれる。
助けたのは犬というのが面白い。

ししりば について思うことがある。
この神が守り神というなら、家族や家の幸せを望むはずだ。
だが、この家の人たちは不幸だ。
死んだら、別人で補充するという発想は工場の部品みたいだ。
ししりば にとって家族は ただの数字なのかもしれない。
ししりば が守りたいのは家の存続なのかもしれない。
もしくは、自分の居場所。

こんなものは守り神とは思わない。


2022 7 30



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