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感想 本当は怖い京ことば 大淵 幸治 京都言葉の怖さを感じると同時に、京都人の気質や伝統の深さを知ることができました。

京都の言葉、いわゆる「京ことば」を研究し京都人気質を表現しようとした書物でした。
エンタメ風でありながらも学術本風。
楽しめて学べるという感じのイメージです。
意味が反対の言葉であるという部分は、かなり他府県民からすると難解で怖いですね。相手の心がよくわからない言語、それは歴史の集大成というべきでしょうか。言葉は柔らかく否定形をあまり使わない、ようするに対立を激化させないような婉曲表現がとられている。それもかなり極端です。


例えば、行者さんが家の前でお経を読んでいるとおばあさんが「お通りやすーー」と言う。こういう断り方が上手。宗派が違うんやからお布施をやる必要はない。「いらん」「帰れ」などの攻撃的な返しだと、相手に失礼になる。この優しい婉曲表現。やんわりと断るところが京言葉の本質でした。

これは歴史の古さが関係していると思います。

人の幸せは、仲良くすることから生じると仏教とかでも言われています。

対立や戦争は百害あって一利なしです。つまり融和こそが幸せになる道。みんな笑顔が一番。そういう思想、仏教思想がたぶん背景にあり、それが歴史と混じり合って、この京言葉が発生したのではないでしょうか。

もちろん、京言葉には良いことばかりじゃないです。
怖いところも多々あります。

言葉の発する意味と違う意思を発している語がある点です。

「考えさしてもらいます」
この京都弁の意味は否定です。

その件については、もう考えませんので、悪しからず

これが本当の意味です。

対立を何よりも嫌悪する京都人は、ときどき、逆恨みや危険を極力避けるような表現を用います。

「ゆっくりしていきはったらよろしいやん」


これは帰る寸前に出てきます。
つまり、さっさと帰れという意味です。
言葉を間に受けると例の ぶぶ漬け を進められるパターンになります。
これは引き止めているのではなく、早く帰れよ馬鹿者がという意味です。

京都人は命令形を嫌います。
人にものを頼むことは、命令をすることです。
だから、極端な婉曲表現を用います。

「OOしなさい」と言われるより京都弁で「OOしてくれはらしまへんやろうか」と言われたほうが頼み事をされたほうも気分がいいですね。生活の知恵というのか、蓄積された文化の集大成というのか、京言葉は奥深いですね。





2022 3 23



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