感想 墨のゆらめき 三浦しをん ホテルマンと書道家の友情を描いた物語。いい雰囲気は出ているが広がりに欠ける。
久しぶりの三浦さんでしたが、少し僕には合わなかった。
ホテルマンと書道家の友情を描いた物語。
この二人の関係性を三浦さんならではの筆力で、いい雰囲気に作り上げたのは成功だと思うし、本書の原動力でもある。
しかし、一つ目の代筆の仕事が終わった場面で、急に魅力が墨が薄れていくように欠けていった。
せっかくの書の話しなのに、それを中心に据えてないのも不満だ。
狭い世界で強引にまとめたような印象だつた。
筆耕という仕事は知らなかった。
もっと、そこを深堀りしてほしかった。
代筆の小説なら、他に優れたものがあるし、最後のほうの二人が引き裂かれる理由もチープで不満。
本書の魅力の一つは、カネコさんだ。
これは猫の名前です。
てっきり、 か ねこ だと思った。
過激な猫の略。
しかし違った。
昔のやくざ映画の親分役をやっていた人に、金子信雄という人がいて
その役者さんに似ているということでした。
顔が。
書道家の彼が、そんな名前を猫につけたのは、後になるほどと納得できますが
この猫の存在はなかなか良い
最後に書道家の言葉を紹介したい。
例えば、風。
書道家は、窓を開ける。生ぬるい風が頬を揺らす。
この感覚を文字に組み込めというのだ。
ただ、文字を書くのではない。
文字を通して、自分の伝えたい何かをそこに表現する。
それが書道なのだ。
少しだけど書道が気になる存在となりました。
2023 6 25
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