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感想 ゲームの王国 上下  小川 哲 カンボジアの悲惨な歴史を軸にした上巻はスリリングで面白かった。しかし、24年後を描いた下巻はわけがわからない。


上巻は、悲惨なカンボジアの歴史を軸にした物語だった。
密告で養子にしてくれた優しい両親を殺害されたソリヤの話しは悲しい
ポルポト派の政権になってからの世界も悲惨で、カンボジアに平和はなかった
神童として生まれたムイタックに起こった事件は悲しすぎる

下巻は、24年後でソリヤは議員になり国をよくしようとしていた
ムイタックは、あるゲームを作った。

政治家となったソリヤは、”ゲームの王国” を実現しようとして最高権力を目指している。
ムイタックは脳波を用いたゲーム “チャンドゥク”の開発を進める。

ムイタックはルールの外から機会をうかがい、ソリヤはルールの内側で地位を築く。
しかし、ソリヤは権力に近づくため悪いこともしてしまう。

ルールを守らない人間が成功し、貧しい人々は搾取されている。成功した人間は、貧困の原因を努力の問題にするけれど、貧しい人々は努力の仕方もわからずにいる。私は世界中から、それらすべてをなくしたいの。根本的になくしたい。正義と公正が永久に続くような社会を作りたい。そのために、自分の人生を捧げると決めたの。でもときどき、いろんなことがわからなくなる。正しいことを実現するためには、権力を持たなければいけない。権力を持つためには、正しくないことをしないといけない。私はこの数年、正しくないことばかりしている



これは愛の物語である。
ムイタックのソリヤに対する愛の物語である

上巻の歴史をベースにした話しは読みごたえがある

まず、彼らを傷つけたポルポト派の政治を見てみる。
共産主義国家を目指していた。
しかし、実際に実行したのは圧政だ。

革命により、オンカー(ポル・ポトの組織)は有史以来、人類を長らく悩ませていた問題のいくつかを完全に解決した。借金苦による自殺、詐欺、汚職、賄賂、泥棒、強盗。すべてなくなった。綺麗さっぱり完全に消滅した。どうしてそんなことが可能だったのか。答えは「私財がなくなったから」だ。まず貨幣という概念がなくなった。すると人々が物々交換を始めたので、これも禁止した。私有や財産が存在しない社会なのだ。こうしてパンドラの箱以来あった種々の犯罪のうち、約半分が一瞬にして消え去った。もちろん、犯罪とともに自由、愛、家族、夢、その他諸々の概念も消失した。



共産主義の理想を追い求めるあまり、人々から家族や自由や夢を奪ったのでした。


ポルポト派になっていたソリヤは、人類歴史上最強の敵とは家族であるといいます。

しばしば『家族』という関係は国家の邪魔をする。為政者は無能な子どもに役職を継がせようとする。



「中国が科挙制度を導入したのも、カトリック教会が司祭の結婚を禁じたのも、もっというならば、ポル・ポトが集団農場を作り、子どもたちを親から奪ったのも、家族の破壊が狙いだった。彼らは部分的なレベルで家族関係を破壊しなければ、よりよい社会を作ることができないと知っていた。もちろん、結果的に成功したかどうかは別にしてね」


つまり、世襲制がいけない
だから、家族を否定するというのです

これに対してムイタックは所有、財産、自由、愛、家族、夢これらをルールによって、村単位で取り戻そうとしたのだと思います。

しかし、ポルポト派によって、それは失敗します。

共産主義はいつのまにか地位や名誉を守るための恐怖政治に変貌してしまった。
これでは本末転倒です。

目的と手段がごっちゃ混ぜになってしまっている。

大切なのは、目的を見失わないことです。そのシステムは何を実現するためにあるのか。
それを意識することが大切です。

でないと、共産主義みたいに、目的を見失い。
ただ、国民を苦しめる装置になってしまうのです。




2023 11 29


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