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書評 アズミ・ハルコは行方不明  山内マリコ 情熱って伝染病みたいに広がってくのだ。

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップという映画をご存知だろうか?
まだ、見ていないというのなら、見たほうがいい
ある撮影オタクの古着屋が、ストリートアートに触発され、ビデオ撮影している間に有名人たちと知り合いになり勘違いし、自分で作品を描き個展を成功させ一流のアーティストになるという話しだ。ただし、才能はあまりない。作中、後半になると、彼をバンクシーたちがディスってるイメージが強く。すごくイライラさせられた。
まぁ、ようするに才能や情熱は誰かに影響を及ぼすという作品。

そのイグジット・スルー・ザ・ギフトショップに刺激を受けた地方都市に住む若者
彼らがストリートアートをやる。
その題材が・・・

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行方不明者の安曇春子さん
物語は、落書きをする男二人と友人の女がメインに展開するが
そこに行方不明者の安曇春子の過去
そして、2人の男を結びつける女性とその先輩の今井さん
そこに胡散臭いイベントプロデューサー
新聞記者
いろんな人がからんでくる。

ようするに、イグジット・スルー・ザ・ギフトショップの地方版・・・
どんどん有名になってく・・・
しかし・・・

情熱は伝播し、どんどん増殖していく
それが芸術だ。

しかし、この二人には映画の主人公と同じように才能はない
イベントも失敗する
そこには地方都市の現在の姿が重なる
衰退し続ける未来
希望の持てない明日

その閉塞感を打破すべく
路上アートをはじめたのに
二人はイベントが失敗すると
地方都市特有の無難な生活に戻ろうとする
職を求め、芸術を捨てる
それが地方では大人になることなのだ。

芸術は常に戦いの中にしか生まれない
もっと、もっとと貪欲に新しい素晴らしい何かを求めているモノにしか作れない

しかし、就職しないと親や世間に白い目で見られる
そんな地方都市では・・・

男二人がクズでやる気ないのに対して
女たちは強かだ。
彼女たちは劣悪な環境の中でも自分の立ち位置を見つけ出し
そして、次の戦いに進んでいる。
そして、ラストシーンの少女たち
熱しやすく冷めやすい
これも地方っぽい感じがする

彼らは、行方不明の安曇春子の似顔絵を書いていた。
でも、本当に探せしていたのは
自分たちの見失った夢だった気がする
でも、地方には、それは、もうない。


すごくおもしろい。
おもしろい小説だった。
この作品を楽しむ前提条件として

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップという映画を先に見てないといけない。
でないと、小説の魅力は半減してしまう。

映画化しています。


2021 4月18日



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