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感想 ブラックボックス   砂川文次  貧困がキレやすくするのか、キレやすいから貧困になるのか。芥川賞受賞作品。

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主人公の職業はバイク便である。
メッセンジャーとも言う。
雨のシーン、ベンツの荒い運転のあおりを受け自転車が横転、自転車が破損する。
この一連の流れを疾走感ある描写で見事に表現されていて、とても楽しかった。
ただ、少し思考がうるさい感じがした。

メッセンジャーは道を極める仕事である。

タクシードライバーに似ているのかな。
常に、最短距離を行く必要があるものね。

この仕事、若いうちだけの仕事である。
主人公は焦る。
ベテランの人が引退しショップを経営しようとする。後輩も色々と悩んでいる。
そんな時、社員にならないかとの話しが・・・。しかし、良い条件ではない。

恋人が妊娠した。家は広いがボロい。
このままじゃだめだと焦る。

彼はこれまでキレやすい性格のため、仕事を転々としていた。
恋人と結ばれたコンビニのエピソードはいい。
客が理不尽に彼女に絡んだ。そこで彼が大声で注意した。
普通、店員は多少のことなら我慢をする。しかし、彼は普通のことができない。
だから、その仕事は辞めることになったが恋人を得ることになった。

バイク便の職場でも同じような事が起こった。
上司が嫉妬して辞めていった人の悪口を言ったんだ。そこで柄にもなく「そんなのかっこ悪いですよ」と注意した。すると、その日から彼の仕事が減らされた。
それで結局は辞めて ウーバーイーツ の仕事をする。

バイク便の人たちは、 ウーバーイーツ の奴らの自転車は錆びたままだとプロ意識のないことをいつも馬鹿にし差別していた。しかし、その仕事をはじめると、まったく同じであることに気づく。

どん底にいる者が、さらに下を探し出してバカにして溜飲を下げる
その様は、コンビニでサラリーマンが店員に偉そうにする様と類似しているように感じた。
バイク便という、彼らの言うところの底辺の人たちが、さらに下の人たちをけなすのも、その構造だ。

彼は税金を滞納していた。
バイトだったのでずっと、税金を払うという感覚がなかった。税務署の奴らが来て、理不尽なことを言う。キレて殴り、止めに入った警官も殴り刑務所行きになる。

貧困だからキレやすくなるのか
キレやすいから貧困なのか
それとも、普通、みんなが我慢する。そこで我慢できないから貧乏になるのか。

その地獄のルーブが後半にやってくる。
刑務所の中でも、同じように弱いものイジメがある。
彼はそれを大声で静止しけんか騒ぎになり独房へ。

この地獄ループはいつまで続くのだろうかと考えてしまう。
物語は終わるが、出所しても、きっと、それは続くのではないかと思ってしまった。

2022  6 7
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