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感想 ヘルドッグス 地獄の犬たち  深町秋生 ヤクザ組織に潜入した刑事の様を描いた作品、濃厚な描写に引き込まれた。

岡田准一主演で映画化されたヘルドックスの原作。
刑事がヤクザ組織に潜入するという小説は多々ありますが、この作品の目的が珍しい。
ターゲットは前任者。
つまり、前の潜入者。
そいつは裏切り組長になっていた。

その組長の持っている警察側の資料の始末と、組長の生命を奪うのがミッションだ
直接の上司との面会を避けるため、マッサージ店の先生のところを使うのが面白い。

元は刑事なので、犯罪に対する罪悪感が強い
だから、読者は、そういう主人公の視線で物語を見ることになるから感情が揺らされる

例えば、上司の別れた妻と幼い娘を拉致する
上の者は、娘の指を一本一本切って送り付けてやれとか平気で言う
そんなことにならないように、彼は祈るばかりだ。
その刑事の上司が拉致監禁され拷問する時も、自分の正体がばれるのではと気が気でない

通常の小説とは違う角度で読者の感情を揺らしてきます
これが本書の鍵です。

そして、先の先まで読んだ、まるで諸葛孔明かと言いたくなるような計略
気持ちよさと気持ち悪さが同居しているような読書体験でした。

当然、ヤクザ、彼の場合は暗殺者ヒットマンですから、残酷な殺害を多数している
自責の念に押しつぶされそうなのです

最後の彼の決断こそは、その感情の現れと言えるでしょう。
間違いなく名作です。



2023 10 6



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