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感想 アイネクライネナハトムジーク 伊坂幸太郎  恋愛ものだって、伊坂幸太郎は面白い!!

ダウンロード - 2022-07-26T142406.603

伊坂さんの恋愛短編集って珍しい。
でも、伊坂さんは伊坂さん。
怒涛の展開と、伏線回収、そして、落差のあるオチ。
繋がる、繋がる、繋がる。
時間も場所も関係なく
物語の一つ一つの登場人物たちが数珠繋がりのように繋がっていく。
これぞ伊坂幸太郎という作品群だった。

駄作だと評する人が多いようだが、僕はそう思わない。

最初の佐藤さんと、アンケートを受けてくれた女性との恋めいた話しがベースになっていて
そこにはボクシングの試合や、後に出て来る妻と娘に逃げられた上司も出ていて
次々と、その人たちが主役の物語が派生し
その子とかが、また、どこかで繋がっていて
とても面白い。

出会いって、どんなものなんだろう?
佐藤の親友の織田夫妻の奥さんが言う

その時は何だかわかんなくて、ただの風かなぁ、と思っていたんだけど、後になって、わかるもの。ああ、思えば、あれがそもそもの出会いだったんだなぁ、って、これが出会いだ。

作為的でなくて、運命の出会いは風みたいに自然に吹くものだそうです。

自分が好きになったのは、この子で良かった。って後で思えるような出会いが最高だ。

確かに、その通りなのかもしれない。

織田夫妻の子供が主人公の話しも面白くて
娘がこんなことを言っている。

こんなことを言うのは何だけど、正義とかそういうのって曖昧で、危ないものだから
自分が正しいと思いはじめてきたら、自分を心配しろって・・・

これは短編のいろんな話しに繋がってくる。

例えば、佐藤の上司の男。
妻と娘に逃げられるのだが、意味がわからない。
でも、運転免許の更新でいつも会う女性と
5年毎に会うのだが、その時に、あることに気づく・・・

他人のふり見て、我がふり直せです。

織田夫妻の娘が主役の話しで
彼女は男子の友達と、駐輪所でシールを盗む不正をしている人を見つけようとする
それを追い詰めて逆ギレされる
そこで担任の先生が助けてくれる

この娘さんのお父さんが誰だか知ってて、そんなことをしているのですか?
中年のおっさんは怖くなり立ち去る。
そこに少年の父が現れる。
この父親と先生は前の話しで恋人どうしだった。
レストランでバイトをしていた担任の先生の若い頃
客に難癖をつけられていたところ
この父、若い頃は学生が・・・
この人のお父さんが誰か知ってて、そんなこと言ってるのですか?
と不思議なことを言って、相手を煙に巻き、話しを曖昧にした

このテクニックを数十年後に、担任教師は行ったというオチ
織田夫妻の娘と少年は正義を行っていたが
相手を追い詰めすぎて逆に窮地に追い込まれた

三十過ぎた大人の意見を変えるのは
モアイ像を人力で動かすくらい難しい


大人というものは頑固で
高校生なんかに正論を振りかざされても逆ギレするだけ
正義は曖昧で怖いもの

相手が悪いからって攻めすぎると
それは逆になってしまう
どういう立場で、そんなことを言うのかってことになってしまうし
その人に、どうしてもらいたいのかってこともある
彼らに謝るのも違う

年齢を重ねても人は変わらない。
経験を重ねるからこそ、人は変われる

ボクサーと美容師の恋の話しもよくできていて
その話し、世界チャンプになってから、いろんな人と関わりができてきて
佐藤は、その試合を路上テレビで見ている女性に興味を持ち
ボクサーと知り合った少年は、モデルになり、ボクサーの大切な場面で遭遇する。

いろんな言葉や、行為や関係性が
伏線回収とばかりに絡み合って
トリッキーなパンチみたいに繰り出されてくる
この展開がとても心地よかった。

斎藤さんという登場人物が面白くて
100円入れると
ミュージシャンの斎藤和義さんの曲を、その人の気分にマッチさせてかけてくれる
そんな商売している人が出てくるんだけど
何かいい感じなんですよね。

*原作小説と映画を比較する企画です。


2022 731

映画の感想は下。


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