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ふたりで超えた、ふたりでとれた!「枠を超えていく新聞報告賞。ワクコエ」 ダブル受賞の裏側

はじめまして。むすびめと申します。

このたび、長崎新聞社さまが主催するワクコエ(枠を超えていく新聞広告賞。)のデザイン部門にて、デザイナーの辻村郁子さんと制作した作品で審査員特別賞と広告主特別賞を受賞しました。

枠を越えていくような新しいデザインとキャッチコピーを募集するワクコエ。
この公募への挑戦は、私たちにとって、自身の枠を超えていく経験にもなりました。
このような素晴らしい機会をくださった広告主の皆様、そして主催の長崎新聞社さま、ありがとうございます。

このnoteでは、これからの制作の根幹ともなる気づきに出会えた、本受賞作品の制作背景をお話していきたいと思います。よろしければお付き合いいただけますと幸いです。

介護職って、なんてクリエイティブなのだろうという気づき

賞をいただいた課題は「啓正会(介護福祉士)で働きたいと思えるような広告アイデア」

この課題に取り組むにあたり、まずは現場への理解が必要だと思いました。今回の広告を届ける先は、私たちのような介護職についていない人やそのお仕事を詳しく知らない人です。
この目線で見たときに、どのような工夫をすれば見てもらえる広告作品になるか、また、その広告を見た先にどんな感情や認識を生み出すべきかと考えました。

啓正会様の採用サイトや清水理事長のインタビューを拝見し力強く感じたのは、介護職は日々の生活のサポートから、敬老会やお誕生会など利用者様が人生を楽しむ時間もつくっている、クリエイティブな仕事であることです。

職員の方の「できる」「やりたい」を実現するためにコンペ形式でイベント等のアイディアを募集したり、「いっしょに、やろう。自由に、考えよう。」という採用サイトのメインコピーにしていらしゃいました。そのメッセージを一貫して伝えられていることから、啓正会さまが大切にされている介護職の姿であり、働く魅力は介護職を既存のイメージで一括りにしてしまうのではなく、働く人一人一人のアイデンティティが光る職種だという気づきがありました。

楽しませることが大好きで、面白いことをいつも考えられている介護士の皆様の入居者様への想いを伝えたい。見えないところで、いつも人を喜ばせる、楽しいことを考えている職業であることを伝えたいという想いから制作がスタートしました。

実体験から生まれる視点も大切にする

介護職の皆さまが人生を楽しむ時間をつくられていることを実感したもう一つのきっかけに、祖父母の姿があります。
遠方に住みときどき電話で近況を報告をする祖父母が、デイケアでの出来事を楽しく話してくれていました。新しい人に出会えたり、そこから生まれる楽しい話があるんだよと、そこでの時間が生き生きと表情を明るくし、人生を楽しんでいる姿を実感していました。

また、自身が介護施設での訪問ボランティアに参加していた経験もこの広告をつくるきっかけとなりました。小学生のときに参加していたアニマルセラピー(ワンちゃんとともに施設をご訪問、入居者さまとのふれあいを通じて楽しい時間を過ごしていただく)のボランティアや、前職で施設を訪問したファッションショーの開催(ドレスを着てメイクをしていただき、ドレスアップを楽しんでいただく)を通じて、入居者さまの表情が明るく変わっていくその瞬間を目にしていました。そこにはいつも、企画し運営してくださる職員の皆さまの姿がありました。

想いの詰まったシーンを探して

見えないところで、いつも人を喜ばせる、楽しいことを考えている職業であることを伝えたいという想いから制作がスタートしました。

では、私たちが感じた介護職の魅力を伝えるにはどのように描いたか良いか。介護職のお仕事として真っ先に思い浮かんだのは、職員の皆さんが利用者の皆さんとお話をされたり、一緒にレクリエーションを楽しんでいる風景でした。

そこから、介護職の皆さまとのコミュニケーションを通じて、
「楽しさを受け取った入居者さまの前向きな姿を描く作品」や「職員の皆さまが入居者のみなさんを喜ばせている姿を描く作品」といった人にフォーカスする作品を作っていきました。

実際の応募作品です

インパクトがあり心が明るくなったり、介護職のお仕事の楽しさと意外性を感じるビジュアルを辻村さんが描いてくださり、介護のお仕事ってそうなんだ!と明るくイメージいただけることをクリエイティブの指針とし、私たち自身も明るくワクワクする気持ちで進行していきました。

(最終選考のお写真を拝見したところ「こう見えて、介護士です。」も最終選考に通過していました!受賞は逃したものの、私たちにとってこの2作品も大好きな作品です。)

ワクコエさまHP 「各審査員からの講評」より https://wakukoe-shimbun.com/result2023.html

そしてさらに後日談なのですが、応募した3作品、なんとすべて最終選考に残っていたとのことでした。本当に嬉しいです。
3つの作品に共通していた介護職へのまなざしが届いていたら、こんなに嬉しいことはありません。

先に制作をスタートした2作品に共通するのは、介護のお仕事のワクワク感や前向きで創造性のあるイメージ。介護職の現実でありつつ、その仕事を詳しく知らない人にとっては意外性や関心を引くポイントを大切にしていきました。

この「本能的にいいと思うポイント」をさらに深掘りしながら、全国の介護施設で発信されている情報を集め、皆さんがどのようにして人を楽しませていようとしているのかを探求していきました。そこで頭に浮かんだのが、職員の方が日々使われる「ロッカールーム」でした。

職員の皆さんが入居者さまを楽しませる準備をする場所。ここは介護職のクリエイティブの舞台裏です。
並んだロッカーから、敬老会やお誕生会などの楽しい時間を作るグッズたちがのぞいていたら。楽しい時間の始まり、または終わった直後、はたまた準備の途中かもしれません。そんな余白を残しながら、この広告をご覧になった方が介護職のお仕事を想像していただけるのではと思いました。

きっとロッカーにはここで働く皆さんの想いが詰まっている。それが、啓正会さまが課題のオリエンページでお話されていること、そして清水理事長のご挨拶や求人ページで一貫するメッセージに繋がると実感しました。人は映っていないけれど、たしかにそこにいる介護職の方やその想いを、チャーミングに切り取る作品にしようと方向性が定まりました。

認識を深め、再現度を上げる

制作にあたり、近しいお仕事をされている方に、差し支えない範囲でロッカーを見せていただきました。

私たちは介護福祉士として働いた経験がなく、想像することはできても、それを日々体験することはできません。広告をつくる上で至極当たり前のことではあるのですが、自分の想像している風景が、理想の風景を描いてしまっていないか。実際の様子やお話を伺うなかで、どのくらいの大きさで、毎日どのように使われているかの解像度を上げていきました。

その方はお笑いが好きで、好きなお笑い芸人のマグネットやステッカーが貼られていました。ロッカーという場所がまるで自分の部屋のようになっていて、仕事場のなかの隠れた私的空間になっていました。

リアルな現場を見せていただくなかで、今回の表現に大切なのは「ノンフィクション性」だと感じました。
イラストでの表現も検討しましたが、実際のロッカーを見せていただいた時のようなリアルさはでない。フリー素材やレンポジでは、自然な雰囲気が足りない。理想の角度や個数に色に・・・ぴったりのものが見つからない。
私たちが感じたロッカーのシズルは、このリアリティやノンフィクション性であり、今回の表現にピッタリハマるのは「リアルでの撮影」しかないと思いました。

理想のシーンを目指して、とにかく動く

リアルでの撮影を決め、メインとなるロッカー探しが始まりました。
地域が運営する体育館や学校、飲食店やジムに銭湯施設、ロッカーがある施設をひたすら上げていきました。
最終的に公募応募への条件など考慮しスタジオで撮影を行うことに決め、ロッカーが複数並ぶスタジオを探し、引きで撮れるスペースがあるか、ロッカーの仕様や映り込みなど詳しく問い合わせました。

撮影場所の検討とともに、パーティグッズの収集も同時に進行。
介護施設内のお誕生日会やイベントで着用されている衣装や小道具をリサーチしながら、予算を管理する一職員の立場になりきり、価格の高すぎるものや入手が困難なものは候補から外したり、飾り花を手作りし用意しました。

久しぶりにつくった飾り花

できる限り万全の準備をし、自宅でカメラテストをしながらリハーサルを行ったものの、我が家にロッカーがあるわけでなく、現地に着くまでどうなるかわからない不安な気持ちも抱えていました。
しかし、作り込みすぎた風景でなく「無作為にロッカーに入っている様子」の方が自然なのではと、自分を勇気づけながら撮影当日を迎えました。

そして撮影当日

デザイナーの辻村さんとの共有はフルオンライン。カメラとPCを繋ぎ、テザー撮影を行いながらzoomで画面共有し、リアルタイムで投影しながら確認を一緒に行いました。

ロッカーの開き具合や、なかに吊るした服(祭り法被)の配置や角度など、
シーンをよりリアルに描くために、検証を重ねました。

撮影の様子

そして、この作品の根幹である「介護は楽しい時間を生み出すクリエイティブ職である」という気づきをメインコピーに、
当たり前に過ごせる毎日も、楽しくてたまらない特別な1日も支えられている介護職のお仕事を伝えるサブコピーを添え、本広告作品が完成しました。

作品への想いは応募文章にも

本公募の応募フォームには、作品名や応募者情報の他に、作品の制作意図を記入する箇所がありました。公募によってどこまで記入を求められるかは個々別別なのですが、私は制作意図を記入できる機会があれば、できる限り作品への想いを記入するようにしています。

このメッセージが公募の広告主さまへどのような形式で届くか詳細はわかりませんし、もちろん作品のクリエイティブが一番の勝負所です。
ですが広告主の皆さまや審査員の皆さまに、ここが唯一自分の言葉で作品への想いを伝えられる場所だと思うと、心を尽くしたい。また、一度しっかり言語化してみることで、言語化した強みや狙いをクリエイティブで表現できているか、説明に無理がないか応募前に再度見直すことができるとも思っています。

啓正会様のホームページや清水理事長のメッセージを拝見し、介護職は、日々の生活のサポートから敬老会やお誕生会など、利用者様が人生を楽しむ時間を作っている、とてもクリエイティブなお仕事であることを改めて、力強く感じました。(私自身も、大好きな祖父母が介護士の皆様のおかげで毎日楽しくいきいきと毎日を送っていることを実感しています)
本作品は、楽しませることが大好きで、面白いことをいつも考えられている介護士の皆様のワンシーンを風景を切り取り表現しました。一見、「これはなんのお仕事だ?」とご覧になった方が、介護士の皆様が利用者様のためにこんなにワクワクすることをされていることを知っていただく。人は映っていないけれど、その奥にあたたかみを感じる。見えないところで、いつも人を喜ばせる、楽しいことを考えている、介護職のお仕事の魅力を感じていただきたいです。

「介護って、クリエイティブ。」の応募文章

以上の制作背景の作品で今回、審査員特別優秀賞と広告主特別賞をいただくことができ、大変嬉しく思っています。

さらに嬉しかったのは、啓正会さまのInstagramで本作品をご紹介いただいたことです。

投稿内で「♯介護職あるある」と言っていただたこと。その一言が、私たちがずっと考え作り抜いた全てであり、啓正会の皆さまにそう思っていただいたことをとても嬉しく、光栄に思っています。

作品をつくるなかで改めて、楽しませることが大好きで、面白いことをいつも考えられている介護福祉士の皆さまの想いを感じ、人に近い場所にいるお仕事の魅力に気づくことができました。いつもたくさんの方の楽しい人生を支えてくださり、そしてこの度はご選出いただき、誠にありがとうございます。


ここからは、ワクコエへのチャレンジを通じて感じた経験を記していきたいと思います。

最後まで諦めなかった作品のなかの1作品。

最終的に提出したのはデザイン部門8作品。締め切りギリギリまで制作を行っていました。

特に本作品は「ロッカーはどうやって用意する?」「パーティグッズ、持ってない…!」と、描く風景は決まったものの、とにかく材料が何もない。
どう実現しようか、とにかく泥臭く動く日々でした。

つくれない言い訳はたくさんあったかもしれません。でも、それでも「やろう!」と湧き上がる気力と体力。完成したのは締め切り当日でした。最後までつくり上げることを諦めたくなかったこの作品で賞をいただけたことが、2人にとって忘れられない経験となりました。

コンビの力で走り抜いた2ヶ月間。

アイデア出しの段階で、私が大切に思っているのは
このアイデアを一番最初に見てくれる相方さんが、一番最初に楽しんでくれ、好きになってくれること。

相方のデザイナー、辻村さんが描いてくださったビジュアルから新たなコピーが生まれたり、ブレストするなかで新しい価値観に辿り着いたり。チームで生まれるパワーの可能性の大きさを、とことん感じた期間でした。

ブレストの段階で「面白いと思ったものは全部つくろう!!」と、盛り上がった案すべてをつくりあげ応募。締め切り2〜3日前から着手した作品もありました。
締め切り目前はほぼ気力で動いていたのでお互い記憶がないのですが(笑)、いいものをつくりたいという2人のパワーがすべての作品に繋がりました。

デザイナーの辻村さんが描いてくださったオリジナルイラスト!
2人で枠を超えてる!うれしい!!

辻村さんとの出会いは宣伝会議さんが主催する養成講座「アートとコピー」。
毎月、コピーライターとアートディレクターがコンビを組み、課題のクリエイティブをつくり上げていく講座です。この2人で受賞したい!と心から思える人と出会えるメラメラの巣窟でもあります。笑

わたしたちはお互いの住まいが遠方で、本作品の作成は全工程リモートで行いました。住む場所も環境も、職種も違うはじめましての2人がこんなパワーを生み出せるのは、ここでの出会いがあったからだと思います。

最後に

広告公募に応募する喜びは、新たな視点を得られることだと思っています。広告制作を通じて、普段生活しているなかでは知らなかったことを自分ごと化し、そこでの気づきや視点が人生を豊かにしてくれています。広告制作とは、課題のいいところを見つけること。つくればつくるほど、好きなもの、好きなことが増えていきます。

そんなことを思いつつ、実際は日々面白いアイデアが浮かばず唸っているのですが…(笑)この気持ちは、いつまでも大切にしていきたいです。

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ここまで読んでくださった皆さま、そして、受賞おめでとうと言ってくださった皆さま、本当にありがとうございます。温かいお気持ちが嬉しく、わたしたちは幸せものです。

また作品を見ていただく機会がありますよう、これからもつくり続けていきます!!よろしくお願いいたします。


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