TikTokによって、着うた系時代がまたキテる!?
といってもまんま着うた系が流行るわけではなく、本質的な部分で「着うた系時代が、またキテる気がしている。」というお話です。
「着うた系」って何?
そもそも「着うた系」とは何だったのか?ジャンルだけじゃなくて、少し広い目で見て思い出してみます。
時代:2004〜2010(2007〜2010が最盛期)
ジャンル:R&Bベースのやさしいメロディ
プラットフォーム:レコチョク
プレイヤー:携帯(ガラケー)
連絡方法:メール(テキストと絵文字)
web:iモード等、携帯サイト(テキスト中心)
SNS:mixi、アメブロ
回線:3G
スマホ:iPhone 3Gが2007上陸
経済:2000年初頭より緩やかに上昇したが2008年にリーマンショック、2011年には大震災。
着うた系のヒットといえば、
青山テルマ feat.SoulJa『そばにいるね』(2008)
湘南乃風『純恋歌』(2006)
GReeeeN『キセキ』(2008)、『愛唄』(2007)
ヒルクライム『春夏秋冬』(2009)
EXILE『Lovers Again』(2007)、『Ti Amo』(2008)
加藤ミリヤ『Aitai』(2009)
加藤ミリヤ×清水 翔太『Love Forever』(2009)
西野カナ『会いたくて 会いたくて』(2010)
ソナーポケット『好きだよ。〜100回の後悔〜』(2010)
ヒット曲を見るとわかるように、
着うた系とは基本的に「恋愛特化型共感楽曲」だったと言えますね。
もうすこし要素で分解してみると、
やさしいメロディ
R&Bを基調とし、ラップのフローもメロウ
×
共感性の高い切ない歌詞
等身大で思わず共感してしまう、切ない歌詞
×
ケイタイ
メールだからこそ言葉が重要。あの人の曲にした「待ちうた」
このやさしいメロディと共感性の高い切ない歌詞は、どの時代にも存在したと思います。サザンオールスターズ『真夏の果実』(1990)とかまさに。
大きく違ったのは、プレーヤーである携帯の存在です。
ケイタイ
着うた系は、主に携帯で聞かれていました。(あと車ですね。)今でもスマホがそうであるように、当時の学生にとってこの携帯が何よりも大事な存在でした。
着うた系×携帯を考えるにあたって3つの視点で考えてみます。
1.連絡手段は、メール
当時の連絡手段は、電話かメール。今はスタンプや写真で色んな感情表現ができますが、当時のメールはテキストと簡単な絵文字。その中で想いを伝える必要がありました。当時のSNSであるmixiやアメブロもテキストが中心でしたね。そんな時代背景もあって「言葉、歌詞」というものがとても重要視されてました。
2.時間軸に、絶妙な間
メールならではの絶妙な距離感です。「センター問合せ」って言葉があったくらい、メッセージのテンポ感は遅かったんです。
その結果、「ツナがってるのに、ツナがれてない。」というインサイトが生まれました。近いんだけど、遠いんですね...。絶妙な間があった。そんな間、気持ちを埋めてくれたのが、着うたソングだったのではないでしょうか。
3.着うたとは、あの人の曲
そして何より忘れてはいけない大前提。着うたとは「着信音の曲ver」です。着信音を特定の曲にするだけでなく「特定の個人からかかってきたら、この曲を流す」ということができました。みんな彼氏彼女には特別な曲を設定してましね。
つまり、あの人の曲 = 着うたソングだったんです。
※当時、私は母親の着信をダースベーダーのテーマにしてましたw
ですので、私は着うた系をこう定義します。
「ツナがってるのに、ツナがってない。」私の気持ちを代弁してくれる、あの人を想うラブソング。
時代は変わって2020年
コロナでCDのリリースが止まっているのもありますが、TikTokがヒットソングへ後押しする関係もできつつあって、音楽シーンの変化を感じますよね。
Rin音『snow jam』
瑛人『香水』
りりあ『浮気されたけどまだ好きって曲。』
iri『会いたいわ』
yama『春を告げる』
YOASOBI『夜に駆ける』
曲のセレクトが少し恣意的ではありますが、これらのTikTokが後押ししたヒット曲って着うた系の本質とリンクしてる気がします。
着うた系と比べるとこういう感じです。
やさしいからエモへ、
恋愛から多様なモーメントの歌詞へ、
ガラケーからスマホへ、という変化はありますが本質的な違いは無いのではないでしょうか?
具体的に、3つの視点で考えてみます。
1. いいね!支配時代
SNSが登場して、もはや現代はいいね!に支配された「共感支配時代」といっても過言ではないと思います。SNSでは海外の誰かの感動的な動画やメッセージにいいね!し、TikTokではどこかの誰かの家族愛や仲間との楽しいやり取り等、いろんな動画にいいね!する。
いいね!を分解すると、私たちは知らない誰かの「行動」と「言動」にいいね!してます。つまり、共感性の高い「行動」と「言動」がより重要となった世の中と言えます。
着うた時代と大きく変わったのは「行動」が増えた点ですね。
2.ぼくらはいつも以心電信だったけど...
コロナ前までの私たちは、ORANGE RANGE『以心電信』ばりにツナがってました。LINEでは四六時中連絡が取れるし、ストーリーズには友達の今や今日が映し出されてそこから会話も始まる。ただ、この常につながってる時代には、逆説的な側面も存在します。
ツナガリが見えないと「なんでツナがってないの?浮いてるの?」という目で見られる。という側面です。タピるとか、ディズるとか、一緒に何かをする動詞がティーンの間で流行ったのもこういう側面。つまり「ツナガリを強化する行動や消費の増加」です。
ちなみに、こんな調査もありますね。
つまり、常ににつながれるからこそ「ツナがってたいし、ツナがっていないと...」というインサイトが生まれたのではないでしょうか。withコロナの今、さらにツナガリを求めてますね。LINE利用量が増えたというデータも出てます。
3. TikTokとは、あの時・あのシーンの曲
TikTokはダンスとかチャレンジのイメージが先行しますが。現在は日常のワンシーンワンシーンを彩るショートムービーアプリという側面も強くなっています。先ほどご紹介した曲はまさに、日常のワンシーンを彩る楽曲として使用されています。
※もちろん他にもいろんな使われ方してます!
りりあ。はご本人のアカウントの影響が大きそうですね。
yama『春を告げる』はリリックビデオ的なマッドビデオカルチャーですね。『天気の子』、『鬼滅の刃』を使ってる投稿も印象的。
『I LOVE...』も
海外曲ではありますが、昔の写真を再現する『I'm Just a Kid』
『I'm a Just a Kid』含め、TikTokが後押しした曲は「あの時、あのシーンを彩る曲」です。曲が主役というより、映画のワンシーンを最高にする主題歌的視点です。
エンタメ界でいうと川村元気さん的視点ではないでしょうか。『君の名は。』、『天気の子』、『モテキ』、『バクマン。』、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』、川村元気さんは主題歌の使い方が死ぬほどうまいですよね。
曲の重要性がよくわかる、ヨッピーさんのツイートがこちら。
そういうことです笑
つまり、共感が生まれる「行動(動画)」×「言動(曲であり歌詞)」プラットフォームのTikTokで、ツナがっていたあの時・あのシーンを素敵に彩る曲が重要ということです。
ややこしいのでもう少しまとめると、
「曲が主題歌として、私達のあの時を彩る」ということです。曲を聞くと具体的にその瞬間のイメージが浮かぶ楽曲は、TikTokと相性がいいと言えるでしょう。具体的にイメージが浮かぶ曲があれば是非検索してみてください。十中八九動画が投稿されていると思います。
まとめます。
by JT。的な感じになりますがw
「サービスが生み出す、ツナガリを作る曲」という点でとても似ているなぁと思った次第です。この視点で見ると、LINEという日本最大のコミュニケーションAppの各サービスって面白くなりそうな気がしてます。
TikTokに話を戻しますね。
あくまで「あの時を彩る私達の曲」は、言わばツナガリモーメントを切り口にした例です。YOASOBI『夜が駆ける』は、THE FIRST TAKEアカウントや、ストーリーズの転載等が相乗効果を生み#歌ってみた で広がってますし、みんなが知ってるイメージの強い曲(例えば『新宝島』)はフレームとして遊んでみたくなるからミームが生まれやすいでしょう。
コンテンツが多層化しているTikTokでは本当にたくさんの方法があります。共感が新たな投稿を生み、さらにその投稿で誰かが共感する共感ハリケーンが巻き起こる唯一無二のサービスですので、毎日チェックしていこうと思います。
長文読んでいただき、ありがとうございました!
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