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演奏に音楽理論知識は必要か

 インターネット上に、動画を始め、ありとあらゆる楽器習得教材が揃っている今、映像を見たり、音源を聴いたりして覚えることが簡単になった。特に聴覚優位の人の場合、わざわざ楽譜の読み方や、音楽理論を覚える意味が分からないという気分になるかもしれない。

 実際、一人で何かを演奏する際、クラシックだろうと、ジャズだろうと、理論的なことを知らなくても何ら問題ないような気がする。耳が良く、感覚的に何でも出来てしまう人は尚更だ。自分だけで完結する音楽を作る場合、そこまで理論を知ることのメリットはないと思う。音楽の上手さは、理論的な理解にそこまで左右されない。深く知る助けにはなるかもしれないけれど、本当に感覚で何でもやってしまう人の場合、無理矢理理論を覚える必要もないと思う。

 ではどういう時に楽典やセオリーなど知っておくと便利かというと、それは他の奏者と共に演奏する時である。演奏者同士音楽の打ち合わせは、音楽用語無しにはちょっと難しいと思う。クラシックなら、「そこの三連符はもうちょっとテヌート気味がいいかな」とか「ユニゾンの部分はもっとアクセントを揃えたいねえ」などと細かく打ち合わせる。意味が分からないと非常に不便である。

 ジャズなどだったら、「今日はこっちのコード進行でお願い」と新たに渡されるかもしれないし、「この曲をワルツに改造してみようか」と編曲が始まるかもしれない。一見自由に見えても、パターンを作る最低限のルールを知っておかないと、セッションが難しくなってしまう。

 だから、一切人との演奏には加わらないというのなら、理論は不要で構わないと思うが、一緒に音楽を作る経験をしたい場合、最低限意思疎通が出来るくらいには、理論の知識があった方がスムーズだ。音楽の共通言語を知っているということが、効率性を増し、吸収力を増し、幅を広げることになる。

 どこまで何を知っておくと良いかというのは、その人の関わるジャンルや演奏スタイルによる。実際は最初から知っているというより、一緒に演奏することを通して、必要なことを学んでいくという感じだと思う。上手い人と一緒に音楽を演奏することは、下手なレッスンを受けるより、何倍も効果がある。これはジャンルを問わず言えることだ。

 付け足しとして、自分自身ではそれ程演奏しないけれども、音楽を理論的に語るのは大好きという場合。音楽はジャンルに応じて、それなりの用語、セオリーが形成されており、それらを日常語だけで説明しようとすると、大変な苦労を伴う。だから音楽仲間内で楽しく会話を弾ませるため、知っておいて損はない。演奏家は理論家を敬遠しがちかもしれないが、斬新な気付きをくれることも多いので、せっかく側にそんな人がいたら、たくさんお喋りしておくことをお勧めする。

 こういった楽しみを広げるため、音楽理論知識は役に立つという次第。

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