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ピアノ椅子の高さ問題

ピアノは、楽器の中では比較的楽な姿勢で演奏出来るもので、身体への負担も少ない。ただ、その姿勢によっては、無理な力がかかり、長時間弾くとあちこち痛くなってしまうことがある。ピアノの場合、椅子の高さがある程度演奏姿勢を決めるので、これは重要な要素だ。

一般的に、肘から手の甲まで、床と平行になるくらいが無理のない姿勢と言われる。しかし実際は人によってかなり異なるし、曲により微調整したり、ピアノの鍵盤の重さによって僅かに変える場合もある。安定して気持ちよく弾くために、椅子の高さは大切であり、侮れない。

自分自身は低めの椅子が好きな方だと思う。これに気づいたのは、コンクールで3人分の伴奏をやったときだ。前の伴奏者は皆違う奏者だったが、自分が弾く前に、3回ともかなり椅子を下げた。1、2段ではなく、数センチである。皆身長や体格に大差はなく、特別高いヒールを履いている人もいなかったので、人より低めに座っているということだ。

なので、まず低めの椅子で弾くメリットから書いていこうと思う。低い椅子は、上半身が前のめりにならないので、安定する。手に過度な体重を乗せたりしない体勢になるので、無駄な負荷がかかりにくい。軽めのピアノで弾くと普段以上にテンポが上がってしまうことがあるが、それも防げる。腰でしっかり支えられるので、ペダルの微妙なコントロールもし易い。

低い椅子のデメリットももちろんある。かなり小柄な人や、筋力がない人は、低い椅子はやりにくいかもしれない。体重を乗せにくくなり、腕だけで弾こうとすると消耗するからだ。また、広範囲の音域を使う場合や、派手な跳躍が多い場合なども、少し高めの椅子にした方が、上半身の動きが自由になり、やりやすいかと思う。

高い椅子は手に体重を乗せやすいので、小柄な人、筋力がない人は、高めにした方が弾きやすいことが多い。また、ヒールの高い靴で演奏する場合も、若干椅子を上げた方が弾きやすくなる。

しかし高くすればするほど、前傾姿勢になるため、安定が得にくくなる。また、長時間この姿勢を続けると、腰や背中など痛める原因にもなる。なので極端に高い椅子はお勧めしない。身体全体に負荷がかかってしまうからである。ピアノを弾いていると、身体の後ろ側が痛くなってしまうという人は、一度椅子を少し下げてみることをお勧めする。

まだ身長が低い場合、足台や補助ペダルがあった方が良い。足が床につかない状態や、つま先しか届かない状態で弾いたりすると安定せず、身体の変な部分に重心を置く癖がついてしまうことがあるので、足台を使った方が絶対に良い。上げ下げ出来るピアノ専用のものも売っているが、安定するものであれば特にどんな足台でも構わない。最低でも身長130センチくらいまでは、台や補助ペダルを使うことをお勧めする。

補助ペダルは、お下がりで安く譲り受けることも出来るので、数年のために勿体ないと思うなら、中古を探してみる方法もある。

低身長のうちから無理な姿勢でペダルを踏むと、ピアノを弾くフォームが崩れてしまうので、補助ペダルが入手出来なければ、無理にペダルを使う曲を弾かなくても良いと思う。大抵は8〜10歳辺りでペダルが使える身体に成長し、それまで基礎をしっかりやっておけば、すぐマスター出来るものだ。

こういうわけで、椅子の高さはピアノを弾くにあたってかなり重要である。始めたばかりの場合、どういった姿勢が適切なのか判断出来ないこともあるかと思うので、大人なら自分で一番無理のない姿勢を探ってみると良いかと思う。その人に合った、疲れず安定するポジションが必ずあるものだ。



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