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酔生夢死
2020年5月25日 02:47
僕がタクシードライバーになったのは、ある年の年末のことである。フリーランスの仕事がパタッと来なくなり、食い扶持に困っての、やむを得ぬ転職だった。ヨロヨロと車を走らせながら、僕はさまざまな人間模様を見聞することになる。しかし、ほとんどの客は一回こっきり。乗車から降車まで、短い時間に窺い知れることなど少ししかない。前方の信号が青になり、背後の車から容赦のないクラクションを鳴らされれば、僕はそ