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言葉が通じない国で、「4番」を打ち続けるということ 【4/13 巨人戦○】

3塁側内野席の後ろに座った巨人ファンの男性が、「もうバレンティンめっちゃ打ちそうじゃん・・」と言う。「ああココちゃん三振しそうだな・・」と思っていた私はちょっとハッとする。その瞬間、ココちゃんは特大の逆転スリーランを放った。

当たり前だけれども、野球は、表と裏があるな、といつも思う。もちろん攻撃と守備の裏表があり、そしてこちらから見る景色と、相手チームから見る景色は、裏表になっているのだ。

相手チームから見れば「ここでバレンティンはこわい(打たれそう)」だし、こちらから見れば「(三振したらどうしよう)」となる。

相手から見れば「ワンアウトでバントで送ってなぜここで上田!(ありがとうヤクルト首脳陣!)」、こちらから見れば「ワンアウトでバントで送ってなぜここで上田!(打てないじゃないか!)」、ということである。いや、私は上田が打つと思ったけど(うそつけ)。

私はつい、「ここで起こりうる最悪の事態」を想定して試合を見てしまう。96敗したり、5連敗やら8連敗やらを息を吐くようにするチームを見ていると、そういう保険をかけるのかけるようになるのである、まあ、それは私がへなちょこファンだからですが。

だけどもちろん相手ファンからすれば、「2アウト1,2塁で迎えるバレンティン」というのは怖いのだ、そりゃそうだ。もし巨人にバレンティンがいたらと思うとぞっとする。(行かないでね。)

そして私の「三振では・・」なんていう失礼な不安を吹き飛ばすように、ココちゃんは、逆転の3ランを放つ。それは立派すぎる4番の仕事だ。

ココちゃんは一見、自由奔放に見える。むすめが「ここちゃんのかみのけひとつにむすんでてかわいいね!」という髪型は、自由の象徴のようにも見える。

でもココちゃんはきっと、見た目よりもずっとセンシティブなところがあるのだろうと思う。あのキャンプ打ち上げでのキュートなスピーチは、前日に通訳さんと、そしてエイオキと何度も練習して生まれたものだ。それでも「やっぱりやりたくない」と言うくらい、「緊張しい」だ。そりゃそうだ、言葉の違う国で、母国語じゃない言葉で、スピーチをするなんて普通に考えて逃げたくなる。私なら逃げる。

でもココちゃんはしっかり練習をして、あの素晴らしいスピーチをやり遂げた。何度も、練習をして。

打てない時も、ココちゃんはしっかり悩む。元気がなくなる。とても素直に。

でも、最後は決して折れない。打てるときをじっと待ち、タクローさんに「練習に付き合ってほしい」とバットを振る。そして、また、打てるときがやってくる。それが、特大の逆転3ランになる。

言葉が100%は通じない国で、バット一つで「4番」を打つ、何年もの間打ち続けるそのプレッシャーは、もちろんあまりにも大きいはずだ。でも、打てない時だって誰かのホームランを自分のことのように飛び上がって喜び、そしてそのときがきたらまた、すんごいのを放ってくれる。そして、「アリガトウゴザイマス!アシタモガンバリマス!」と話してくれる。

そこには、ココちゃんがヤクルトで過ごした8年間という年月で積み重ねてきた、チームと良い関係性があるのだろうと思う。私はココちゃんがベンチで喜びあう姿を見るのが大好きだ。

ココちゃんありがとうありがとう、と思える試合が、きっと今年もたくさんやってくる。その度に私は、浦添のスピーチを思い出しながら、ここにはココちゃんの一つの「怖さ」を乗り越えた軌跡があるんだよな、と、思うのだろう。

早くぐっちとベンチで喜びあう姿が見たいな、と、思いながら、そんなことを考えている。



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