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アンケートフィードバック③ 「運営の都合」と「利用の都合」

この「アンケートフィードバック」は、「Museumソムリエ」のインターンプログラムで実施する、インターン向けアンケートの結果から、ミュージアムを考える「視点」を提示するものです。

今回のアンケートフィードバックは、2回目のインターンアンケートの回答概要を示しながら、ミュージアムの「ルール」に関して、全体としてどのように解釈していくべきか、についてお話しします。(2021.12.25)

🌕〈S〉
2回目のアンケートは、
ミュージアムでの「模写禁止」に関連したnote記事を題材としたものでしたね。

🌑〈AC〉
お借りしたnote記事は、こちらでした。

🌕〈S〉
この記事を読んだ上で、それぞれの考えをアンケートの回答として記入する方式です。

🌑〈AC〉
この「アンケートフィードバック」をご覧になる際は、「上記の記事」をご確認の上でお読みください。

また、回答をいただいたインターンの皆さんには、
「可能な限り、具体的な事象に惑わされず、ご自身で抽象化して考えてみてください。なお、このアンケートは、ミュージアム理解を深めることを目的としており、特定のnote記事や個人、団体などを非難・中傷することを目的としたものではありませんので、ご留意ください。」
という方針をご理解いただいております。

🌕〈S〉
「具体的な事象に惑わされず、抽象化して考える」のはなぜですか?

🌑〈AC〉
「具体的なこと」を中心にすると、全体が見えなくなってしまうからです。
「考える」ということは、
「具体」と「抽象」を往復すること、
つまり、
「具体化」と「抽象化」を交互に繰り返すことです。
「抽象化して考える」とは、「本質を深く考える」ことだと言えます。

このアンケートの目的は、「ミュージアム理解を深めること」ですので、
可能な限り「抽象化して考える」ようお願いしたわけです。

🌕〈S〉
できるだけ全体を見て考えるには、
「視点の移動」をする必要がある
んじゃないですか。
インターンプログラム【5】
「視点の移動」と「視点の転回」
に書いてありました。

「視点の移動」には、「他の人の視点(他の人がどこからどこを見ているか)」を知ることも役に立つかもしれませんね。

では、そろそろ、
アンケートフィードバックにまいりましょうか!

🌑〈AC〉
はい、「設問」は以下の通りです。

①ミュージアムでの「模写禁止」に関連したnote記事ですが、登場するさまざまな立場の中で、考え方や振る舞いに「問題があるのでは」と感じたものはありますか?(選択肢は順不同、複数選択可) *

□親(ここでは執筆者の方)
□子ども(ここでは小3の息子さん)
□ミュージアムの女性スタッフ
□ミュージアムの事業企画課(公式コメント)
□その他の一般入館者
□note記事にコメントする読者
□どの立場にも問題を感じない
□その他:

つづいて、「回答」です。
回答者数は「13」。

各選択肢ごとの回答数は以下の通りです。
【5】親(ここでは執筆者の方)
【0】子ども(ここでは小3の息子さん)
【4】ミュージアムの女性スタッフ
【5】ミュージアムの事業企画課(公式コメント)
【0】その他の一般入館者
【4】note記事にコメントする読者
【2】どの立場にも問題を感じない
【1】その他:
〈その他のコメント〉
◼️一つのことについても、立ち位置によって、どう考え、どう行動するかが大きく変わります。それぞれの立場で問題ないと思う言動をとられているのだろうと思いますので、一概に問題がある、とは言えません。

🌕〈S〉
この設問への回答を、全体としてどのように解釈すればよいでしょうか。

🌑〈AC〉
13名の回答ですが、
回答のパターンが「12通り」ありました。
(同じパターンの回答は一組だけ)
「問題の所在が、複雑な構造に絡み合っている」ことを想像させられました。

私たちにとって「一番重要なこと」は、
「自分の回答」と「他の人の回答」とが「異なっている」ことを確認することだと思います。

🌕〈S〉
「自分が感じたこと」と「他の人が感じること」は同じではない
そのことを「確認」するとことが「一番重要だ」ということですか。

🌑〈AC〉
言い方を変えると、
「人によって、違う視点から違う所を見ている」ことを「確認」する。
つまり、
「自分が正しい」と「思い込まない」態度
が重要だということです。

🌕〈S〉
それが、なぜ、一番重要なことなのでしょうか?

🌑〈AC〉
「視点も見ている所も違う」さまざまな人がいる場合、
自分の立場(どの視点からどこを見ているか)が正当だとする「自己正当化」の意見同士は、互いにかみ合うことができず、
「議論」として成立しない
からです。

成立していない「議論」が、関係する人の多くにストレスを与えるであろうことは想像に難くありません。

題材としてお借りしたこの事例で、
ストレスを受けたであろう人を上げてみると、
●親(ここでは執筆者の方)
●子ども(ここでは小3の息子さん)
●ミュージアムの女性スタッフ
●ミュージアムの事業企画課(公式コメント)
●その他の一般入館者
●note記事にコメントする読者
と、関係した人全部ということになると思います。
それぞれが、どのような場面で、どのようなストレスを受けうるか、
それを想像してみるのも、視点を移動させ、視野を広げる経験につながるかもしれません。

🌕〈S〉
では、
「議論」としてかみ合うためには、どうすればいいのでしょうか?

🌑〈AC〉
このような「具体的」な事象から、
早く「抽象化」した議論に移行する
必要があります。
そのような思考や議論の中から、
納得のいく「ルール」が登場してくるはずです。

🌕〈S〉
いままで、
この事例に関連するような「抽象化」した議論はなかったのですか?

🌑〈AC〉
残念ながら「なかった」と思います。
この事例に関する記事と、それに関連するコメントの全体が示していることこそ、
そうした「思考と議論がなかった」ことによる「結果」なのだと思います。

例えば「ルールとは何か」ということさえ、深く考えられてこなかったのではないでしょうか。
「ルール」には、さまざまに違いのあるものが「混在」しています。
また、
その性格の違いを区別することは、
ルールを策定・運用する際に、大変重要な「認識」となる
はずです。

🌕〈S〉
インターンプログラム【6】
「ルール」と「2つの都合」
には、「運営都合」のルール「利用都合」のルールというのが出てきますね。

🌑〈AC〉
その「ルール」が、
「誰」のどのような「都合」によって決められたのかということによる違いですね。

運営する側の「都合」がよいように決められたのが「運営都合」のルール
利用する側が「都合」のよいように決められたのが「利用都合」のルールです。

「運営都合」のルールは、
運営者と利用者の「上下の関係」
なので、
運営側の都合のために、利用者の都合を制限することがあります。
「利用都合」のルールは、
利用者間の「左右の関係」なので、
利用者同士の「相互の合意」を規定するものと言えます。

🌕〈S〉
運営者と利用者の「上下の関係」

利用者間の「左右の関係」
の2つの関係を整理していくと、何かが見えてくるような気がします!

🌑〈AC〉
「運営の都合」と「利用の都合」が一致した時、納得のいく「ルール」が登場すると考えますが、その具体化は「利用論による見直し」の「結果」として示すことができると思います。

🌕〈S〉
アンケートの題材とした、ミュージアムでの「模写禁止」に関連したnote記事のような場合、どのように考えればいいですか?

🌑〈AC〉
はい、それは次回、
別の視点「空間形式の違い」と「ルール」で考えていきましょう。

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