見出し画像

僕が沖縄で宿をはじめるまで

タイムリーな話題でいうと、Go Toトラベルキャンペーンの壮大なすべりっぷりを見て思うところはいろいろありますが、季節的には沖縄に行きたくなるシーズン真っ盛り!

ということで、本当は購入した物件から順番にnoteを書いていこうかと思っていましたが、2019年6月に沖縄でつくった宿の話から先に書いてみようと思います。


一棟貸し切りの宿『irregular INN Nakijin』
http://www.instagram.com/irregular_inn


毎度一本のコラムで収まりきらず申し訳ない思いですが、東京に住む僕がなぜ沖縄で物件を所有することになったのか?、不動産をホビーとして楽しむ文脈で、どのような企画のもと宿をオープンするに至ったのか?を書いていきたいと思いますので、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。


画像1

沖縄とのモヤモヤしたつながり

妻の実家が那覇にあることもあり、かれこれ20年近く前から頻繁に沖縄に通っている僕ですが、那覇空港に降り立つ度、いまだに「非日常」に切り替わる感覚があります。

それが僕が住んでいる東京との物理的な距離によるものなのか、あるいは気候が異なるからなのか理由はわかりませんが、国内の他のエリアに旅するときとは異なるストレスレベルが下がり、心が解放される感覚を、沖縄に戻ってくる度に感じます。

とはいえ、個人的には海より断然山派。

たとえヨーロッパのリゾート地に旅行したとしても、丘の上から歴史ある街並みの先に見える海を楽しむくらいで、ビーチには行かずに帰国するくらい海とは無縁で過ごしていて、趣味は森の中でのキャンプという僕です。

なので、ダイビングなど海でのアクティビティが好きとか、離島の綺麗な海にハマってしまったんです、みたいな文脈が自分にはまったくありません。


そんな僕なのに、なぜか沖縄から得られるフィーリングにとても強い引力を感じていて、妻と一緒に帰省する度に、いつか沖縄で仕事がしたい、というより沖縄に頻繁に通える理由をつくりたいという思いを感じていました。

ただ、好奇心の強さから興味の対象がコロコロ変わってしまい一つのことに集中できない性格の僕には、沖縄に根を張ってお店を開けるはずもなく、いつか沖縄と接点が持てるとすれば別荘を所有するくらいかな、と考えていました。


また、沖縄を含め多岐にわたる興味の対象として、Airbnbの登場からはじまった世界の民泊カルチャーに対して、ホビー大家の視点からなにかできることはないのか?とも考えていましたが、Airbnbに群がるサラリーマン大家さんの金儲け目線のギラギラ感と、大手インテリアメーカーの家具で安く揃えた学生のワンルーム、みたいな内装の宿ばかりの現状にドン引きしてしまい、正直、民泊にはあまり魅力を感じていませんでした。

こうして、僕の沖縄への憧れは現実味を持つことなく、モヤモヤっと頭の片隅に何年もずっと漂っていました。

画像2

ドラえもん古民家との運命の出会い

2018年8月末、朝6:13。

沖縄でかれこれ8年くらい仲良くしてもらっている、セレクト不動産仲介会社のディ・スペックさんからきた、「ムロタさんが好きそうな物件出てますよ!」というmessengerの「ポキーン」という音で目が覚めました。

リンクをクリックすると、沖縄県国頭郡今帰仁村仲宗根、という、もはや読み方すら分からない文字の羅列とともに、ドラえもんのように愛くるしく、でも自分なら絶対こんなカラーリングに住まないであろう、昭和40年築の古家の情報が目に飛び込んできました。


画像3

「なきじんそん なかそね」と読むこの地名のおおよその位置を調べると、那覇から車で1時間半と距離はあるものの、人気の観光地である美ら海水族館まで車で20分、古宇利島まで13分という立地であることがわかりました。

美ら海水族館といえば、沖縄に行く人なら誰もが一度は訪れる場所ではないでしょうか。僕自身、那覇から日帰りで水族館に行ったことがあるのですが、高速は混むし往復何時間もかかるしで、かなり大変だった記憶があります。


「那覇からこんなに距離があるなら、むしろ水族館の近くで一泊して、さらに北部の観光してから帰らないともったいないんじゃないか?」

水族館から那覇に戻る高速の渋滞の中、こんなことを考えていた自分を思い出したときに、「北部観光の拠点」というキーワードが思い浮かびました。


南北に長い沖縄本島ですが、高速道路が那覇から名護市の手前の「許田」インターまでしか通っておらず、距離で言えば南北の1/2程度の距離しかカバーされていません。

那覇を宿泊の拠点とした際、斎場御嶽やひめゆりの塔などがある沖縄本島南部の南城市、糸満市までは那覇市中心部から片道3〜40分程度で行き来できるのと比べて、本島北部へのアクセスはだいぶ物理的な距離があります。


この距離をネガティブに見ることもできますが、僕はむしろ激戦区の那覇以外で勝負する拠点としてはありなんじゃないか?と考えてみることにしました。

寝起きから目覚めるだけでなく、ずっと沖縄に対して抱えていた「いつか沖縄に関わりたい、でもその方法が見えない」というモヤモヤが晴れるかもしれないと、ピンとくる感覚があったのを覚えています。


画像4

ゴールを決める嗅覚で走る

一気に目が覚めた僕は、転がってきたチャンスボールに向かって走るゴールゲッターのごとく、物件情報をくれたディ・スペックさんに、周辺の宿泊ニーズや沖縄の融資環境、宿をやる場合の許認可や運営の代行業者について質問攻めします。

ちょっと専門的な話になりますが、用途地域がない「都市計画区域外」というこの物件の立地は、旅館業許可を得てホテルを開業するうえではこの上なくやりやすい立地であることが分かりました。

そこで朝7時に、旅館業をたくさん手掛けている友人の建築家、ビーフンデザインの進藤さんに、旅館業許可の取得をするうえで注意すべき点についてmessengerで質問をすると、ありがたいことに即レスで助言をしてくれるではありませんか。

おかげで8時の時点では、今帰仁村の村役場と保健所になにを質問すべきで、なにがクリアできれば旅館として開業できるのかの見当がついていました。

急いで現地周辺のAirbnbで競合となる宿の分析をして、かなり適当ながら自分が宿を開業した場合の収支を計算して、9時に村役場と保健所に電話を入れると、開業に必要なハードルはすべてクリアできそうな感じではないですか!

ここまでくるともう、この話は自分がゴールを決めるために転がってきたチャンスボールとしか思えません。

10時ぴったりにこの物件の情報を取り扱う不動産業者に電話をすると、情報はまだ出したばかりで募集中だと言うので、「購入したいと思うので、明日の昼に内見させてください」と申込み、急いで飛行機とホテルとレンタカーを予約しました。

そうこうして、情報をもらった翌日の昼。僕は那覇から車で1時間半の場所にある今帰仁村のドラえもん古民家の前に立ち、不動産屋さんに「買います!」と申し込んでいました。


さてさて、まさに寝耳に水ではじまったこのプロジェクト。

購入を決めるまで自分なりに1日半くらいよーく考えましたが、どんな風な見立てをして、物件を購入しようと判断したのか?の企画過程を次回で書いていこうと思います。

毎度すみません、次回につづくー!


画像5


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?