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映画「高慢と偏見とゾンビ」レビュー「「コロンブスの卵」の典型。」

原題:Pride and Prejudice and Zombies
邦題:高慢と偏見とゾンビ

ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」の単なるパロディ小説と
思われても仕方のない原題および邦題であるが
原作小説の大部分を借用し,ほんの少しだけ
ゾンビ要素と少林寺拳法要素と忍者要素を加えてブレンドした結果,
誕生したのが本作品となっている。
また本作品は2016年に同名で映画化されている。
「同名」であるのは当たり前。
「名前」のインパクトが本作品の全てなのだから。

あのさ。

「ゾンビ映画」ってロメロ監督の「ゾンビ」のフォロワーが
構築したジャンルでパクリ上等・流用上等・闇鍋上等の
バッタモンがゾンビ映画の「本質」なのよ。
だから「高慢と偏見」の人気にあやかってゾンビを出す位平気なの。
問題は思い付きで考えた「高慢と偏見とゾンビ」が
映画として面白いか否かであって面白ければフォロワーが
「月と六ペンスとゾンビ」とか「赤と黒とゾンビ」とか
「戦争と平和とゾンビ」とかをワッと皆して作る訳。
「軽佻浮薄(考えや行動が軽はずみなこと)」こそが
「ゾンビ映画」の本質なのだ。

その大前提を踏まえて初めて存在価値が生じる作品である。
とはいえ原作小説を「ハーレクイン・ロマンス文法」や「ラノベ文法」に
基づきエリザベスを「メロドラマのヒロイン」や
「ツンデレ属性のエリザベスたん」と「改変」するより
100万倍誠実な内容となっている。

有体に言えば本作品の評価が高いのは原作小説に因るところが
果てしなく大きいのだが本作品の作者の着眼点の素晴らしさ,
とりわけ,原作小説とゾンビとを結びつける発想が真っ先に閃いた点において,まさに「コロンブスの卵」の典型といえる。
最初に思い付いた人間が全てを搔っ攫うのだ。

とは言え文学愛好家が本作を観るとは到底思えず
闇鍋的魅力に惹かれたゾンビ映画愛好家が観る事となるのだろう。

だがこの手法はたった一度しか通用しないのも,また事実である。
「二匹目のどじょう」を狙った「続編」の評価がその何よりの証拠である。
個人的には「戦争と平和とゾンビ」とか「赤と黒とゾンビ」を
見てみたかった気もするが
僕の内心が「ないない」と囁くので与太話はここまでとする。

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