ルカ・グァダニーノ版「サスペリア」レビュー「光り輝くレビュー」。

2018年にルカ・グァダニーノという聞いた事のない監督が
ダリオ・アルジェントの「サスペリア」をリメイクすると聞いたとき
僕の念頭に浮かんだのはジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」を
ザック・スナイダー監督が
「ドーン・オブ・ザ・デッド」としてリメイクした際の事だった。

ザック・スナイダー版「ドーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)は
ゾンビが全力疾走する事にロメロゾンビファンの多くは拒絶反応を示し,
ロメロ御大御自身が
「ゾンビは死後硬直してるから走れないよ」と発言された事もあり
ボッコボコに叩かれた。
「ドーン・オブ・ザ・デッド」の価値は暴落し
DVDは中古で100円でも買い手が付かない状況に
歯噛みしてたのが僕だった。

だって!

「ドーン・オブ・ザ・デッド」は面白いんだもん!
スタンドプレイで目立つ事に命を懸けるアナ,
「犬の命は人命より尊い」を座右の銘とするニコールの二大ヒロインが
揃いも揃ってクソ女で「死ねッ死ねッ」と画面に向かって罵倒するのに
コイツ等最後まで死なねえというスナイダー君の
頭のネジが外れたヘイト管理。
反面登場時はクソだが徐々に真価を発揮するCJ(大塚芳忠)のナイスガイぶり,
独り立て籠もり孤軍奮闘する銃砲店のアンディはあんまり素晴らしいので
「外伝」が特典映像に付く有様。
死ぬ程頼りになる警官ケネス(玄田哲章)と
男が皆ナイスガイ揃い!(女はクソ揃い!)

スナイダー君は作劇上の要請で人を殺さないのよ。
だから死ぬべき人間が死んで
生き残るべき人間が生き残る作劇になってない。
スナイダー君の描く「人間」は皆しょーもない理由で死んで行く。
何故なら人間は皆しょーもなく生きてしょーもなく死ぬ生き物だから。

ゾンビ禍で世界が滅んで行くマクロ的視点が特典映像でやっと描かれ,
モール内の揉め事に終止するスナイダー君の超ド近眼視野!

例えロメロ御大が何をほざこうと!
「ドーン・オブ・ザ・デッド」の「滅茶苦茶面白い」が
全てに於いて最優先されるのだッ!

こんなに…こんなに面白いのに…何でDVDが100円でも買い手が付かぬ!
何でブルーレイ化されぬ!

「ドーン・オブ・ザ・デッド」を叩く方の特徴は
「観もしないで面白がって叩いてる」点であって
兎に角観て貰わない事には話にならないのだが,DVDはとっくに廃盤。
ブルーレイ化される予定は永遠に未定。

コノヤロウ…。

幾つも幾つもレビューを書いて「ドーン・オブ・ザ・デッド」を擁護して
ブルーレイが出るのを待望する砂を噛むような毎日。

ブルーレイが出るまで10年待ったよ。

閑話休題。

そんなマタイの受難も斯くやと思える程の
「ドーン・オブ・ザ・デッド」受難を経験してたので
ルカ・グァダニーノ版「サスペリア」…「ルカぺリア」が
多少出来がアレでも擁護する自信はあった。

…で「ルカぺリア」の円盤を買って視聴したのだが
「良く分からなかった」。

Amazonレビュー欄では「こんなの「サスペリア」じゃない」って非難囂々のレビューが並ぶ中,ある日ひとつのレビューが掲載された。

「ジェシカ・ハーパーが出演する理由も!」
「ドイツが東西に「壁」で分断されてる時代を選んだ理由も!」
全ての疑問の「答え」が「ルカぺリア」の中で描かれてるのに!
何で皆「それ」を見ようとしないんだッ!

…そのレビューを拝見した際の僕の正直な感想は

「なんでオマエに「上から」言われなきゃいけないの?」

という反感だった。
兎に角ねえ…
「光り輝く高貴な存在であるワタシには呼吸をする様に
全てが全て分かってるが
オマエ達無知の暗闇の中で蠢く地虫の如き無学文盲の輩共には
このワタシが啓蒙して光を与えてやらずば何ひとつ分かるまい」
って態度に僕は大いに反感を覚え
この「ルカぺリア」は…斯様な自分を神の子であるかの如く
驕り高ぶった鼻持ちならないクズ共に支えられたクズ映画なのだと,
そのときは僕はそう思いました。

その光り輝くレビューを書かれた方は散々勿体付けた挙句,
その肝心の「答え」を一切開示せず
「オマエ達には「ルカぺリア」は分かるまいッ!」の一点張りで,
こっちも売られた喧嘩を買ってしまい
「ああ分からないねッ!オマエの様なクズの支持する
クズ映画のコトなんぞ未来永劫分からなくていいねッ!」
と態度を硬化して『「ルカぺリア」への関心』を意図的に
地中深く埋めて5年が経過した。

そのまま『「ルカぺリア」への関心』は
僕の中で化石化して行く筈だったのですが
2024年になってからサークルCatPlaza(皐月臨さん)の発行された2冊の同人誌
「映画の独り言」「To Die」を拝読する機会が到来しました。

皐月さんの主張は
「「ルカぺリア」は難しくありません!」
「「ルカぺリア」はダリオ・アルジェントの「サスペリア」に
最大の敬意を払ったルカ・グァダニーノの作った二次創作同人誌なんだッ」
の2点。

でもね。

皐月さんの主張に耳を傾ける気になったのは
皐月さんが微塵も「上から」物を言ってないからで
「ワタシの話を…聞いていただけると嬉しい…」
って姿勢が貫かれていて
人に自分の意見を聞いて貰うには「光り輝くレビュー」を書いて
「この「光り輝くレビュー」は!
オマエ等無学文盲無知無教養の徒には読めんッ!」
って姿勢じゃダメだと改めて思い知らされるのです。

それじゃ未来永劫「布教」出来ないよ…。

皐月さんの同人誌を拝読して初めて
最初の「光り輝くレビュー」を書かれた方が
何故「自分の本当に言いたい事」を隠し
斯くも威張り散らしていたのかが漸く理解出来た。
「光り輝くレビュー」を書かれた方は重度のオタクであって
自分が同人誌文化に詳しいオタクだとバレて石を投げられるのが嫌で
斯くも虚勢を張って「ルカぺリア」の本質が二次創作同人誌だという
「本当の事」が言えずに却って反感を買っていたのだと
オタクの受難者としての本性が
そのままレビューとなっていたのだと僕は理解しました。

本当に…本当にオタクは「面倒臭い」なあ!!

ザック・スナイダー版「ドーン・オブ・ザ・デッド」への
世間の無理解を嘆き,その素晴らしさを懸命に布教しようとした
僕も大概オタクの化身ですが
僕は「ドーン・オブ・ザ・デッド」の素晴らしさを理解出来ない人達の事を
無知蒙昧な邪鬼の類だと思った事はないよ。

天下万民が「ドーン・オブ・ザ・デッド」の素晴らしさを理解出来ないのは!
僕の努力が足りないからだッ!
「光り輝くレビュー」を書いて!
「誰にも読めまい!」とイキっても孤立して行くだけじゃん!
第一!微塵も
「ドーン・オブ・ザ・デッド」や「ルカぺリア」の布教になってないッ!

分かり易く「ルカぺリア」の魅力を説いてさあ
同好の士を集めて行くのが「同人」の極意じゃないの?

オタクは!誰にも読めねえ「光り輝くレビュー」なんて書いて
イキってる場合じゃないよ!
赤ん坊に噛んで含める様に!
「ルカぺリア」の魅力を解題しなきゃダメじゃん!

「ドーン・オブ・ザ・デッド」がブルーレイ化されるまで10年かかったよ。
「ドーン・オブ・ザ・デッド」がブルーレイ化されたのは
僕の功績でも何でもない。
「ドーン・オブ・ザ・デッド」が!
自分自身で光り輝いた結果なんだ!

「ルカぺリア」の円盤が出て未だたったの5年じゃん。
ファンが出来る事は未だ未だあると思うんだ。
誰にも読めねえ「光り輝くレビュー」を書くんじゃなくて!
「ルカぺリア」が自分自身で光り輝くのを信じて!
支援し続けるのが「ファン」なんじゃねえの…?

「光り輝く」のは!
レビューの方じゃないッ!
映画の方なんだッ!
ファンに出来る事は!
推してる映画が「光り輝く」のを信じて推し続ける事だけだッ!

今更ではあるがこの5年間の
僕の「ルカぺリア」に対する接し方は些か以上に不躾であった。
心から謝罪し今後「ルカぺリア」と真摯に向き合い
「何が何だか分からない」
以外の感慨を抱けられれば望外の喜びである。

やれやれ…やっと「ルカぺリア」に対して
「平らな気持ち」になれた。
確かに5年は遅いと思うけど遅過ぎはしなかった。




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