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サークルCat Plazaを主宰される皐月臨さんの個人同人誌「映画の独り言」レビュー「鏡」。

本日サークルCat Plazaを主宰される皐月臨さん(@Silence_pigs)の
個人同人誌「映画の独り言」が届き拝読いたしましたので
レビューを書きたいと思う。

「映画の独り言」はアレックス(仮)と名乗る
無頼のウルトラゴアホラー映画ファンの女性が
御自分の「スキの気持ち」だけを頼りに
描き綴られた映画レビュー集である。

そもそもアレックス(仮)氏は1ヶ月に1度映画館に通う程度の
ライトな映画ファンだったのだが6年前(2018年)に
ルカ・グアダニーノ監督の映画「サスペリア」…通称「ルカぺリア」…。
(コレはダリオ・アルジェントの元祖「サスペリア」と
区別する為の人類の叡智の為せる技なのだ。)
…を観て雷に打たれた様な衝撃を受け
それまではフワフワしたブラウスを着用する
いたいけな癒し系の少女然としたアレックス(仮)氏の容貌が激変する。

「漫画の国」の言葉で言えば
映画館という出口のない閉鎖空間から脱出する為にデーモンと合体し
「アニメの国」の言葉で言えば
ソウルジェムが濁り
「ゲームの国」の言葉で言えば
カオスフレームが真っ黒になって
平野耕太先生の畢竟の大傑作「HELLSING」の
アーカードが少女に擬態したかの如き容貌と化したのだ。
「オタクの国」の言葉で言えば
アレックス(仮)氏は重度の中二病に罹患したと言える。

勿論激変したのは容貌だけではない。
アレックス(仮)氏は「内面」も激変し,
・常時必死な感じ
・常時発汗状態
・常時早口で喋る
・常時人の話を全く聞かない
・常時「自分の映画レビュー」を一方的に捲し立てる
・常時天上天下唯我独尊
・常時断定口調
・常時友達がいない

これらの諸症状に僕は「覚え」がある。
何故ならアレックス(仮)氏は「僕の郷里の言葉」で話す様になったからだ。

僕の郷里は…「オタクの里」といい
普段は「人間界」から遠く離れて
壁に向かって
「漫画を読んだ感想」「アニメを観た感想」
「映画を観た感想」「ゲームを遊んだ感想」等々を
話しかけるだけの,至って人畜無害な生き物なのだが
時折壁に向かってレビューを吐くのが嫌になって
里を出て人間界に降りて行き
土砂降りの雨の中,ダンボールの切れっ端に
「どうかワタシの話を聞いてください」
と書き殴って首からぶら下げて
駅前の帰路を急ぐ学生や勤め人に哀願する
「不届き者」「乱心者」
が出現する。
ソレが僕でありアレックス(仮)氏なのだ。
アレックス(仮)氏の言葉にいちいち親近感を覚えるのは
「同郷の誼(よしみ)」
故なのだ。

「映画の独り言」
第1回のお題は勿論「ルカぺリア」。
「スキの気持ち」こそがオタクの力の根源であり,
「最もスキ」な「ルカぺリア」を筆頭に持ってくる。
アレックス(仮)氏は「オタクの必勝形」で臨んだのだ。

その「レビュー」たるやもうね…。

(前略)じゃあ「ルカぺリア」は良くある原作無視改悪リメイクなのか?
いや…寧ろ逆だ…。
好き過ぎて解釈を拗(こじ)らせて原作から離れてしまう…。
そう…我々(オタクは誰もがオタクの国の「裸の王様」なので
主語がI(我)ではなくWe(朕(ちん)=我々)となるのだ。)は知っている…。

そうだッ!!!

コレ(ルカぺリア)は最早リメイク映画ですらなくッ!!!
原作拗(こじ)らせオタク(ルカ・グァダニーノ)による同人誌なんだッ!!!

「原作と同じ事」を徹底的に避けているのは「原作と同じ事をするなら原作を観ろよ」という思想でありあらゆる批判を振り切り「自分が作るサスペリア」を追究したルカは生粋のアルジェントオタクでありこの映画に妥協が一切無いのは本作の本質が同人誌だからであり舞台のベルリンと時代設定は正にオリジナル版が公開された時代そのものでありルカは「あの時代を反映してサスペリアを作ったら」「僕がサスペリアを作ったら」IF創作を貫いた同人作家の鑑でありそれ故に本作はオリジナル版と似ても似つかないにもかかわらず紛れもなく「サスペリア」そのものでありルカの根底には原作のサスペリアが唯一無二であるとの大大大大大前提がありルカの「この映画はサスペリアという作品へのリスペクトだ」って言葉をなんで誰も汲まねえんだよバカヤロウまた1本の独立した映画として見てもルカぺリアは最高であり痛み悪夢狂気救済本当の恐怖とは一体何なのか「無知である事」「無意味である事」の魅力を私は本作品で初めて知ることが出来たッ(後略)

アレックス(仮)氏の「レビュー」とは

「ワタシのレビューでオマエを殺して殺して殺して殺して殺してやるッ」

という気違いの人殺しの思念であり,
その「気違いの人殺しの思念」が
句読点ゼロ改行ゼロで頭の中に流れ込んで来るコトなのだ。

僕は年末に「サスペリアPART2 UHD+BD-BOX」を購入してから
慢性金欠病で年末年始は勿論現在に至るまで食パンと緑茶で過ごしてます。
偶(たま)に奮発して賞味期限ギリギリのヨーグルトを買うという
途方もない贅沢をして心拍数を急上昇させております。

僕はペットボトルの緑茶を飲用しながら
本書の「ルカぺリア」のレビューを拝読したのですが…。
イキナリ「気違いの人殺しの思念」が頭の中に流れ込んできて
ヘルガ・ウルマンの様に口から緑茶をダバー。

「ワタシの頭の中に入った方に警告しますッ」
「アナタの心中には…ッ」
「殺意しかないッ」

と思わず絶叫したよ。

本書は斯様な「悲鳴のようなレビュー」の連続であり
理屈とか論理とかをかなぐり捨てて

「ワタシの「スキ」を遮るモノは皆殺す殺す殺す殺す殺すッ」

との殺意で書き綴られおり読む者皆に素手で殴り掛かって来るのだ。
漫画+テキストで読み易いけれど
本書の本質は「劇薬」なので過剰摂取すると漏れなく死にます。

本書には

人からの借り物の言葉
人からの借り物の思想
人からの借り物の感想

など微塵も存在しません。
全てが全てアレックス(仮)氏の思索の結果,
独力で到達した「悟りの境地」が書き綴られており,
他の如何なるレビューとも似ていません。

僕はレビューにもオリジナリティが存在すべきだと思ってます。

「ワタシのカンソーはあミンナとおなじでえす」

などという「レビュー」を読むとレビュー執筆者を絞め殺したくなります。

「「同じ」なワケねえだろうがあ!!!」

本書はオリジナリティの化身であり
心あるもの必読の書と断言して構いません。

「レビュー」を燃え上がる殺意で
ガーッと書き綴って来たアレックス(仮)氏が
残りあと1コマしかない事に気付く。

無双虎眼流は斯様な局面で如何に対処するか?

アレックス(仮)氏は迷わず牛乳を頭からかぶり
「白濁」した姿を晒して「締め」。

もう少しこの何と言うか手心というか…。

とアレックス(仮)の余りの「捨て身」ぶりに
僕は牛股師範と化すのであった。

描き下ろしは新宿・ビデオマーケットの初体験記!
普段は内弁慶でデカい口利いてるアレックス(仮)が
「冷やかしと思われたらどうしよう!」
とガタガタ震えながら「はじめてのおかいもの」に挑む!
いやあ…まこと「はじめて」とは最高である。
ビデマさんは本同人誌を店舗内に置くんだ!

本書を最後まで読むと本書の本質が「鏡」だと判明します。

「なんてバカなんだ僕は…」
「アレは鏡だったんだ」
「アレックス(仮)氏の鏡面の様な曇りのない心に」
「僕自身が映ってたんだ」
「僕は鏡(カガミ)に映った自分自身を鑑み(カンガミ)てたんだ」
「僕は最初から自分が重度のオタクであるって真実と向き合ってたんだ…」

そもそも本書の購入動機は
『伝説のポケモン並みに希少な「女性のウルトラゴアホラー映画ファン」の
心象風景が見たかったから』だが
「虚無と狂気」に映画の至高価値を求める辺り,
やはり本書の本質は「鏡」であり
アレックス(仮)と僕が「同じ」に見えるのも自己愛的必然なのだ。

実は「ルカぺリア」二次創作同人誌「To Die」も購入したのですが
レビューは後日書けたら書きます。

なんで「今」書かないのかって?

それはですね。

「映画の独り言」をカルピスとするなら
「To Die」はカルピスの原液だから。

頁を開くなり
「気違いの人殺しの思念」が
ビッシリ文字で書かれていて
皆さん映画「セブン」のジョン・ドゥの手記って読んだ事あります?
丁度「あんな感じ」なので1日2冊も
「オマエを殺す殺す殺す殺す殺すッ」
って言われ続けたら僕の身が持たないのです。

なのでレビューを書くとしても「後日」。

「「To Die」のレビュー執筆は…また後日にしていただけないかしら…」
「今日は何だかとっても疲れたの」

ジリリリリリリリ!!!

玄関の呼び鈴のベルが喧ましく鳴る。
こんな時分に一体誰だろう…?

ドアノブに触れようとした瞬間,
思わず「ヒィッ!」と飛び退く。

ドアが蹴破られ
肉切り包丁を携えたアレックス(仮)が
「気違いの人殺しの思念」
を発しながら襲い掛かって来るのが
僕がこの世で見た最後の光景となった。

暗転。

2冊の同人誌はとても丁寧に梱包され
メッセージカードが同梱されてました。
「同人誌」ってさあ漫画やアニメやゲームや映画の登場人物を拝借した
肉欲を伴う恋愛描写が主流になってるみたいだけれど
そりゃ「肉料理」は大好物ですけれども!
朝昼晩肉料理を食わされると
「コレ…なんか「違う」んじゃねえの?」
と思う訳です。

そんな風潮に逆らうが如く,
こういう手作りの「思い遣り」が同梱されてると
世の中まだまだ捨てたもんじゃないと思います。

本同人誌は同人誌の「本来性」…「手作り」「手渡し」「対面販売」って
基本を思い出させ嬉しくなりますね。

通販はコチラからどうぞ。

「いいものは飛ぶように売れる」べきだと愚考する次第です。

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