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へやのなか

59
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2023年9月の記事一覧

ほくろ

ほくろ

左の手の甲に
でっかいほくろがある

でっかいと言っても
よく見ると
ちいちゃいほくろの
集まりである

手持ち無沙汰になると
腕時計を確認するみたいに
つい見てしまう

右足首の真ん中に
中くらいのほくろがある

普段は靴下で
隠れてるけど
家では裸足なので
ときどき目に入る

ストレッチなんかしていると
虫が止まってるみたいに見えて
たまに叩いてしまう

手の甲のほくろは可愛いけど
足首のほく

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毛布

毛布

さ、おいで
今日もたくさん頑張ったんだね

そうか、そんなことがあったのかい
私は濡れたってかまわないさ
ほうら、顔をうずめて

いつでも待っているさ
そしてずっとここにいる
いいんだ、そんな汚れくらい
細かいことはお気になさるな

ねえ、ねえ、そしたら、わたしばかりだよ

あなたは、

あなたは?

…………………………

お読みくださりありがとうございます。
いろんな悩みも迷いも毛布の中で。

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しあわせなこと

しあわせなこと

どんなささいな、
たとえば目が合うとか
たとえばごはんが美味しいとか
ちょっとしたことが
いちいち嬉しいのです

どんなささいな、
たとえばまつ毛におりたほこりとか
小指のささくれとか
ちょっとしたことが
いちいち楽しいのです

ほんのすこし 指が触れたり

ほんのすこし 髪が揺れたり

ほんのすこしのことが
いちいちしあわせなのです

…………………………

お読みくださりありがとうございました

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生命を描く

生命を描く

体の真ん中の内臓から
ドクドク湧いた真っ赤な興奮が

粛々と列を成し
その指 その末端 果ては握られたペン先まで
いや その中のインクまで

頭の奥の1.5キログラムの総てから
ドクドク湧いた真っ赤な感情が

我先にと走り出し
熱い手の平 力む指先 そこから白に一線染まるまで
ミクロの粒のひとつまで

フウ
一度の換気を経て広がるは

生命 そのもの

静かな轟音をたて 襲い来るもの

悪い癖

悪い癖

白状する
ときどき、それかもう少し頻繁に
やめたくないと思うことを

俯いて タオル濡らして ぐるぐるお腹鳴らして
皺の一本ずつを確かめることを

白状する
たまに、ごくたまに、と言っておくが
苦しんでいなくてはと思うことを

綱渡りして よろけて 立ち止まって
そうして眼下の奈落に惹かれることを

白状する
とかなんとか言っといて
悩みを悪いことなんて思っていないのを

首を捻って 焦点も合って

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