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へやのなか

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2022年10月の記事一覧

怪物

怪物

時々に襲い来るそれは
念慮などと奥ゆかしい表現に足らず

いくつもの足を物凄い勢いで這わせて
こちらへ駆けてくるのだ
怪物のようだと思う

またしかしそれを生み出している自分も
とんと可笑しな怪物だと思う

どうせ生きてゆくのに
怪物はしつこく飽き足らず迫り来る

…………………………
気づく気づかぬに関わらず、
どの心にも棲んでいるのだと思います、怪物は。

泣き虫と文字書き

泣き虫と文字書き

メモ帳に滲むインク

それをぼんやり見つめるわたし

扇風機は規則正しく首を振り
時折ページを踊らせる

うたにもならなかった、言葉たち
何の振動も起こさない、言葉たち

それらに思いを馳せるのは
未練を寄せるのは

もうやめたほうが良いのかい

きっと日の目を見ることのない
いとしいわたしの言葉たち

積み木

積み木

朝日がまだ目に眩しかった。
少しの沈黙が間を縫った。
静かにその朝は過ぎた。
ああ わたしは今ここに失恋をした。

笑って終わろうと言った。
そうしようと答えた。
今までありがとうの言葉が
互いに口からこぼれた。

一日ずつ 笑顔ひとつずつ
慎重に積み重ねてきた。
細く高くなり過ぎては、
やはりいつか崩れてしまう。
ああ、わたしは今ここに失恋をした。