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うたのおへや

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わたし 村嵜千草の詩をまとめています
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2022年3月の記事一覧

パレード

人混みや車の音に紛れて 孤独と孤独が笑い合う
私たちだけ ここには

できるだけ触れていたい 二人は一人でいたい
私たちだけ ここには

喧騒をBGMにして
スーパーのレッドカーペットを歩いて
エスカレーターを降りて夢の中へ

いいえ 夢ではないわ
夢なんかではないわ
私たちだけ ここには

空気に浮気をしないで
ずっと背中に触れていて
私たち 私とあなただけのまち

前後 /詩とエッセイ《 no.5 》

前後 /詩とエッセイ《 no.5 》

前後

仕切りを立てると違って見えてくる物事
前はこうだったね
あれ以来こうなったね

奴らは互いに干渉しない
前には前の世界があるし
後には後の生活がある

時として
奴らは互いに踏み入りすぎる
後があるから前になり
前とするから後になる

夕飯と睡眠の隙間
行ってきますとおはようの隙間
こんにちはといただきますの隙間
ごめんなさいとありがとうの隙間

生活は続く どうしたって続く 
ただそこに

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鼓動の在処

鼓動の在処

ここに、
私の声を録音したものがある

その声は、
中学卒業の日に 思いを馳せて
大地震の記憶を辿っている

私はこれに時折、
自分自身で聴き入ってみる

目を閉じて、
シラと受け流す日もあれば
瞼をそっと持ち上げて受け止める日もある

ここに、
過去の私のかなしみがある

その声は、
間をおいてゆっくりと喋っている
震えていたりなどもする

私はこれに時折、
相槌を打って聴いてみる

両の眼(ま

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「自分は大丈夫」

「自分は大丈夫」

「まさか」
そのまさかだよ
ここで起きているよ

「嘘みたい」
そうだよね
まさか、こんなこと考えていなかったものね

「でも自分は大丈夫だから」
あれ、どうして
どうしてそう思うの
わたしはもうそのまやかしを信じられないよ

大丈夫、は大丈夫なときに使うのよ
大丈夫じゃなくても笑いたいときに使うのよ

大丈夫だろう、はどこにもいてくれないのよ
貴方を支えないのよ

いつ どこで 何が どのくらい

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夜空

夜空

広がる視界は暗いけど
ときどき笑うみたいに眩しい

伸ばした手は冷たいけど
どこまででも届きそうな気がする

歩いて何分 何時間
まだまだ何年 何百年

レンズが受け止めた今この瞬間に
そこにはもういないのかもしれないけど
あやふやな光を永遠みたいに頼って

進んで何歩 何メートル
途方もなく何万キロ 何億キロ

むつかしいことは分からないけど
遠いおかげで近くなれるから

同じ月を迎えて
同じ星

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