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【前編】海外文献から2023年のHRトレンドを知る

はじめに

簡単な自己紹介

現在メルカリで採用担当をしている村上と申します。新卒採用を主に担当しており、コーポレート部門の新卒採用立ち上げや、Build @Mercari2023のプロジェクトオーナーをしております。

主務は国内外のエンジニア採用で、インド拠点の新卒採用体制構築にも関わっております。


こちらがインド出張に行った先の写真

本記事では世界のHRトレンドについて紹介

本記事では海外の文献である「Latest HR Trends in 2023: Every HR Must Know」を参考に、ビズリーチやメルカリでHRを経験してきた体験も交えながら、解説していきたいと思います。

1.働く環境の整備はまだ続く

HRに求められる役割が変化

COVID-19以降の労働環境の変化は既知のこととして認知・体感されてきたことだと思いますが、この労働環境を整備する中心的な役割をHR部門は担ってきたと思います。

日本ではこれまで当たり前だった通勤に加え、リモートワークが選択肢として出てきました。セキュリティ体制の整備、コミュニケーションの制度設計など選択肢が増えたことに伴い解決すべき課題が増えました。

HR単独で決められるものはなく、経営陣や現場のマネージャーも巻き込みながら制度を設計していくには時間も体力も消費します。

前職のビズリーチ(Visional)の就業体制

前職のビズリーチ(Visional)ではCOVID-19の感染拡大に対して、経営陣がリモートワークに一気に振り切る形で変化しました。社員を守るための意思決定をするタイミングでは、経営陣が先頭に出て大きく意思決定するのは重要だと思います。

その後徐々にハイブリッド型の就業スタイルに変化し、週2日以上はオフィス出勤が必須など切り替わっていきました。

現職のメルカリの就業体制「YOUR CHOICE」

メルカリではYOUR CHOICEという制度が新しく制定されて運用されています。

データを見ると、約90%以上がリモートワークで勤務しており、週4日勤務など「自ら働き方を選択できる」というのが特徴です。

引用元:https://about.mercari.com/press/news/articles/20220927_yourchoiceinfographics/

リモートワークを推奨するのではなく、プロとして一番成果を上げるために自ら働く環境を選択するという、個々人に責任が伴う働き方です。詳細はこちらで解説されています。

働き方の検証や再定義がトレンドとして続く

 If telework is not an option, 55% of employees will look elsewhere.
some employers prefer having their employees on-site.

https://www.ismartrecruit.com/blog-latest-hr-trends-every-hr-must-know

リモートの選択肢がなければ55%の人が他の選択肢を探す一方で、雇用主の中には出社を求める声もある、と記載されている通り世界中で就業体制に対するせめぎ合いが続きそうです。

日本は特にリモートワークの検証期間が短くサンプルが少ないので、各社の個別最適での制度設計が求められてくると個人的には考えます。

そこでHRが主体的に経営や現場を巻き込みながら体制を整えていくトレンドは引き続き出てくると思います。

2.従業員体験のさらなる拡張

パンデミックでは生存と成果の両立を求められる特殊な環境

COVID-19の世界の死者数はこちらによると2023年1月4日時点で670万人を超えています。未知の病気で自分も感染するかもしれないという不安がのしかかる中、仕事では成果を出す必要があるという2つの重荷がのしかかりました。

特に経営メンバーや管理職だと組織やメンバーの状態も理解しながら、事業を成長させていくプレッシャーものし掛かるという、少し特殊な環境にいたと思います。

課題増加に伴う従業員体験整備の必要性

ストレスフルな環境に置かれるだけでなく、コミュニケーション機会の減少、運動機会の減少など多くの機会が相対的に失われました。(あるいは他のものに代替された)

「安心して働ける環境を選ぶ」志向性は強くなる可能性があり、日本における雇用の流動性向上の影響も踏まえると、従業員体験の整備や拡張の重要性は上がると思います。

むしろ整備しないと、優秀な人はどんどん別の環境に移ってしまうため、意識的に発信・効果検証・改善していく必要があります。

働く人の想像を膨らませつつ優先課題を明確に

One of the HR trends for this year will be to consider how to extend employee experience and include financial, physical and mental health support.

https://www.ismartrecruit.com/blog-latest-hr-trends-every-hr-must-know

新しい環境下における身体的、経済的、精神的な健康状態をに想像を膨らませながら、新しい従業員体験を設計していく必要があ理想です。

とはいえ、全部やりたいことをできるわけではないので、難易度が高い課題を解決する論理的思考力と、巻き込んで制度化しているコミュニケーションスキルは、HRにさらに求められていくと思います。


3.学び続けられる環境の整備

可処分時間が増えた実感

リモートワークを一時的にも経験したことがある人は、今まで通勤に使っていた時間を別の時間に充てることができるようになった実感があると思います。

語学学習、オンライン大学、社内研修など可処分時間を使ってスキルアップをするニーズが顕在化してきました。

個人のスキル開発は企業の発展にもポジティブ

業務に関連するスキル、あるいは将来的に関わる可能性のあるスキルを開発することは企業のさらなる可能性を引き出すことにつながるので良いと思います。

一方で経営体制の状況によっては優先順位が上がらず実施できない場合もあるので、タイミングを見計らいつつオーナーシップを持って取り組めるアサインメントが重要そうです。

実際に私はネイティブキャンプを実施

業務上英語が必要な私の場合、まだまだ英語力が足りない部分があるので、ネイティブキャンプも取り組んでいます。(もっと頑張らねばですが。。。)

「一時的」ではなく「いつでも、どこでも」がトレンドに

リモートを基軸とした学びの機会を整備するためには、継続的に学べる環境を整備することが重要です。

The key to making learning continuous is to make it available at all times. That is why most companies will opt for creating e-libraries, online workshops and courses.

https://www.ismartrecruit.com/blog-latest-hr-trends-every-hr-must-know

リモートワークを前提とした働き方も増えてきたので、場所や時間を問わずに気軽にスキルアップできる機会の提供が今後のトレンドに続きそうです。

4.透明性のある体制をテクノロジーで実現

不透明な環境下で適切な情報にアクセス

リモートワークで失われた機会の1つにコミュニケーションがある先ほど説明しましたが、不安を抱かないためにもオンライン下で適切な情報にタイムリーにアクセスできるかは重要な要素の1つです。

個人に関する情報をモニタリング

経営メンバーやマネージャーの考えを知ることは重要ですが、メンバーが働く上で、自身の課題は何か?どれくらい進捗したか?を追える状態を作ることはオンライン化ではより重要になってきました。

Transparent tools that track employee progress and information that are easily accessible for both parties will be one of the principal HR trends this year.

https://www.ismartrecruit.com/blog-latest-hr-trends-every-hr-must-know

明確に指標をモニタリングすることで成長実感を感じることもでき、不足するコミュニケーションの代替手段になることが期待できる観点から、こちらも2023年のトレンドになりそうです。

5.Well -Beingな環境整備は必須項目に

考慮すべき事柄が複雑化

就労環境の変化に伴い様々な問題が浮き彫りになってきた点は先ほども触れました。量も質も大幅に変化しただけでなく、従業員が健康で安全に働くために、それらをカバーする体制づくりは経営やHRの必須科目となりつつあります。

プログラムの作成には適切な情報が必要

「さあ、プログラムを作ろう」と言っても、適切に情報を把握することが第一条件です。作れば良いというわけではないので、先ほどのテクノロジーの活用をここでもいろいろ試してみることが重要だと思います。

メルカリでも定期的にサーベイを実施

That will include surveys, research, creating workshops, and leveraging tech. Employers will use various resources to develop well-being programmes to make sure employees are healthy, safe, and productive.

https://www.ismartrecruit.com/blog-latest-hr-trends-every-hr-must-know

こちらにサーベイやワークショップを実施していくトレンドがあると記載がありますが、私も働く中で定期的に小さなサーベイから大きなサーベイまでを実施していいます。

経営メンバーは、それらがどのような結果や傾向を示しているのかを定期的に発信してくれていて、その情報があるからこそ、実際の改善施策が出た際も納得感が出るのだと思います。

6.オンラインコミュニケーションの質的改善

質の高いシステムやプログラムの提供

オンラインコミュニケーション慣れてきた部分もあるが、改めて企業全体として最低限守るべきレベルのコミュニケーションを担保することは重要だと言えます。

Companies will have to invest in high-quality HR technology that allows video interviews, continuous virtual communication, and meetings. But not every individual knows how to use these tools, so employers will also have to provide employees with digital communication workshops.

https://www.ismartrecruit.com/blog-latest-hr-trends-every-hr-must-know

よりテクノロジーを活用して品質改善をしたり、適切なルールを整備して従業員のコミュニケーションをサポートするなど、継続的な改善がトレンドとして重要になりそうです。

個人的には振り返りができる仕組みも必要だと思う

サーベイとの掛け合わせでコミュニケーションがどのように行われているかを改善できると、組織全体として満足度が向上すると個人的には考えます。

数値化しづらい項目だからこそ、意識的に数値化・言語化してプログラムも改善し続けることが大事だと考えます。

7.リスキリングと内部流動性の向上

パンデミックや採用冷結に伴う新しいニーズの台頭

直近GAFAをはじめとするBig Techでも採用冷結が話に上がりますが、企業成長のための人材を外部から獲得できない事例も出てきました。

採用だけに依存しない体制

That means that before deciding to seek new candidates, recruiters will conduct an analysis that can show if the talent they need is already there.

https://www.ismartrecruit.com/blog-latest-hr-trends-every-hr-must-know

現場と連携しながらリクルーターは採用活動を行いますが、それに加えてデータ分析チームなどと連携しながら社内の人材を活用する選択肢も考えていく必要性が出てきました。

個人的には内部流動は痛みを大きく伴うものだと思う

異動することは必然的にどこかのHCが1つ減ることなので、痛みを伴うものだと考えます。

またその人がうまく定着しない場合には、異動前の時の方が良かったなんてことが起きかねないからです。

前職のビズリーチでは内部流動の制度を活用して異動した経験がありますが、個人的にはプラスに働いたものの、全く違う職種にチャレンジすることは受け入れ側も自分も大変だったと記憶しております。

リスキリングできる機会の提供も1つのトレンドに

When an employee is not fully compatible with a new vacancy, they might go through reskilling, which would provide them with the necessary skills.

https://www.ismartrecruit.com/blog-latest-hr-trends-every-hr-must-know

内部流動性を高めることだけでなく、中長期的に育てる観点も同時並行で実施していく企業が増える可能性がありそうです。

先ほどのスキル開発とセットで語られるべきポイントなので、統合して考え、制度設計の必要がありそうです。

前編のまとめ

大きな時代の変化に伴い日本の企業は柔軟に変化してきた数年だと思いますが、変数が1つ増えれば、考えることは指数関数的に増えていくと感じます。

常にトレードオフの中で事業成長やカルチャーと照らし合わせながら、効果検証を素早く実行し、自社流に変化させていくことが世界中の企業で求められています。

特に前編では、メンタルや住環境など、個人の働き方に焦点を合わせ、経営とHRが仕組みを作っていく必要性について語られていました。

次回は残りのトレンドをまとめてみたいと思います。


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