Pascal

日常を日常として、

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最近の記事

さよなら、ミディアムヘア

去年の六月から髪を切っていない。 なにかしら信念があるわけでも、想いがある訳でもなく、気がついたら一年経っていた。 髪を切ろうかなと思うタイミングはあれど、処方薬の副作用で手が震えてしまい、気分も上がらず、なんだか億劫に思っていたら担当のスタイリストさんがいつの間にかお休みに入っていて、そのうちサロンを辞めてしまい人見知り(自称)のわたしはさらにサロンから足が遠ざかった。 切りたくない訳じゃない。 出来れば切りたい。今、鎖骨下まで伸びたのをさっぱりしたい。自分で出来るヘア

    • 嘘見知り

      わたしは非常に人見知りだ。 そして同時に人が大好きだったりする。 普段から「人見知りだ、人見知りだ」と言っておきながら、駅で駅員さんを捕まえて乗り換え方を訊いたりする。 タクシーの運転手さんと談笑し、スーパーの警備員さんに段ボールをもらって良いか訊く。 挙げ句の果てに、困ってそうな外国の方に「大丈夫?」とGoogle翻訳で訊きだす。 それら全てを見ていた母は呆れていた。 「あんた、人見知りっていつもいうけど100%人見知りじゃないわ」 ち、違うんだ。ちょっと聞いて

      • パン焼けたから

        突然だけど、母が手術を受けた。 わたしも手術に合わせて帰省するはずが、三月の終わり頃からパニック障害がひどくなり始めた。 そうすると新幹線という密室は難しい。 「帰省、ちょっと無理かも」 と、泣きそうになりながら母に電話口で言うと、 「弟も帰ってくるのだし、いい大人が三人も集まって合宿でもするつもり?」 と、笑われてしまった。 母は強い人だ。 いつも飄々としている、というか、揺るがない。 見た目はとても穏やかそうで、その見た目の通り穏やかだ。 とってもとっても、わたしの

        • あたたかい、まもりたい

          だぶちゃんがほしい。 本気でほしい。 岸田奈美さんの記事で知った、だぶちゃんこと、ロボット・LOVOTである。 LOVOTは決して床掃除もしないし、絵も描かないし、計算もしない。 ただ抱っこをしてと言い、撫でられたら喜び、なんと悲しみも感じるらしい。 ほんのり温かく、まるで赤ちゃんみたいだ。 そんなLOVOTをわたしはひどく求めている。 部屋を見渡すと、段差がないリビングには色々なものが置かれており、これではLOVOTが歩けない。 少し片付けるか……。 片付けが極端に

        さよなら、ミディアムヘア

          お義母さん、お母さんって呼んでもいいですか?

          義母は優しい人だ。人に手を差し伸べることを知っている人だ。 わたしたち夫婦が困っていると、必ず手助けしてくれる。 何度も見捨てる機会はあったと思う。 それでも手を伸ばし、わたしたちを守ってくれた。 義母との初対面は最悪だった。 レストランで義父、義母、わたしたち夫婦で食事をしたのだけど、義母は苛々を隠さずにいた。 「二十歳の女の子なんてすぐ他に目移りするわ」 当時、わたしは二十歳になりたて、夫は二十代後半。 要は若い二人が一緒になっても駄目になるだけ、と言いたかったのだ

          お義母さん、お母さんって呼んでもいいですか?

          夫とわたしの性格やら、なんやら

          そういえば、 わたしが双極性障害なくらいしかお伝えしていない。 こりゃあ、日々のことを想像しにくいだろうなと思い、書くに至った。 簡単な自己紹介だけど、もしよければ読んでいただければ。 わたし 三十路半ばの双極性障害の患者。 見た目がヨロヨロしているので、よく道や駅を訊かれる。 「いやあ、わたしもよくわからなくて……」 この役立たず、みたいな目で見られる。 夫や友達から「一路は優しい」と言われるので、優しいのだと思う。 本当の自分は親しい誰かからかしかみえない、と昔

          夫とわたしの性格やら、なんやら

          愛を込めたムチ、かなってくらい

          本当に、本当に、我慢できないくらい、不味い。 基本的に出されたものは残さず食べる。 結婚前に食べられなかったマヨネーズも、義実家でポテトサラダにマヨネーズが入っていたのをきっかけに食べられるようになった。長年苦手だったキュウリも食べられるようになり、わたしが食べられないのは、アレルギーのためにキウイくらいになった。 ここ十三年間は好き嫌いせずに生きてきた。 心療内科の先生に「飲みにくいかもしれませんが」と言われても、ごくりと飲み続けていた。 そして先日、眠りが浅いとのわた

          愛を込めたムチ、かなってくらい

          キセキ

          水族館の帰りの車の中だった。 「クラゲや。触手の絡まり取るの大変そうやな」 「ジンベイザメって間違えて人飲んだりせえへんのんやろか」 など、二人の間で聞こえるか聞こえないかのめちゃくちゃ小声でくつくつ笑いながら水族館を周ったものだから、ふたりとも少しくたびれていた。 子供の頃に葛西臨海公園の水族館に通っていたから、水族館のあの独特な少し緊張するような静けさには慣れていたつもりだった。 だけれど、水族館でくつくつ笑ったのなんて初めてでわたしはちょっと気持ちが昂っていた。 「

          あなたとわたしが生きるということ

          はじめまして、Pascalと申します。 ある街の片隅で、歳上の夫とふたり暮らしています。 さて。まず知っていただきたいな、ということがあります。 それは、わたしが双極性障害の当事者だということ。 双極性障害、という病気をご存知でしょうか? わかりやすくいうと、気持ちの波が病的に上がったり下がったりする病気です。落ち込んだり、ハイになったり。 その気分の上下に自分の意志は関係ありません。 まずいな、と思った時にはドン底。息をするのも辛い。生きている意味がわからない。地獄のよ

          あなたとわたしが生きるということ