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愛を込めたムチ、かなってくらい

本当に、本当に、我慢できないくらい、不味い。

基本的に出されたものは残さず食べる。
結婚前に食べられなかったマヨネーズも、義実家でポテトサラダにマヨネーズが入っていたのをきっかけに食べられるようになった。長年苦手だったキュウリも食べられるようになり、わたしが食べられないのは、アレルギーのためにキウイくらいになった。

ここ十三年間は好き嫌いせずに生きてきた。
心療内科の先生に「この薬は飲みにくいかもしれませんが」と言われても、ごくりと飲み続けていた。
そして先日、眠りが浅いとのわたしの訴えに先生が今まで飲んでいた内用液を変えた。

「割とすぐ眠気が来るのでね。これで眠れると思いますよ」
「ありがとうございます」

眠れないのはしんどいですよねぇ、と笑い合うような穏やかな雰囲気で診察は終わった。

薬局で薬を受け取り、家に帰ってもう寝たかったのでいつもの就寝前の薬を飲んでから、内用液を飲む。

口に含む、飲む……(苦行の顔)。
飲み干すと、舌がヒリヒリした。味覚にロックが掛かった。
これはなんだ。なんでこんなに不味いんだ。

四ミリ処方されていたので、一本一ミリ。あと三本。
何回見返しても、眠るために足しておくと先生が言っていた薬だ。

まじかぁ。先生、まじかぁ。
半泣きになりながら残りの三本飲んだ。

この内用液を開発した人も悩んだろうな、なんて遠のく意識で思った。
先生の言うとおり、ぐっすり眠った。

そして就寝前に、内用液を、ぐう、とか、ああ、とか言いながら飲む日々が始まった。
そして二十分くらいで寝落ちていく。
先生の処方は合っていた。

それがここ、二週間くらいの話。
苦味、だけでは表せない、刺激、を味わってきた。
「あと、一本……」
なんかの皿屋敷並みに就寝前の苦しみは怨念じみたものを持っていた。



わかっている。



製薬会社も一生懸命、本当に患者を救うために新たな薬を作っていることも。
そのおかげでわたしは生きている、と言うことも。

苦味ぐらい、我慢すべきだろう。
こんな、つらいつらいと喚くのなんて恥知らずの恩知らずであるということも。

ごめんなさい、製薬会社の皆さん。
あなたたちは全く悪くない。
おかげさまで、変な夢も見ず眠れるようになりました。
本当にありがとうございます。


そして、昨夜良いことがあった。
夫が内用薬を水に溶かして飲んでも良いと調べてくれたのだ。

「ほんまに……? 」
と、クエスチョンマークを浮かべながら100ccくらいの水に内用薬を溶かしたて飲んだ。

!!!
ほとんど刺激がない!!!

飲み終えたわたしはあまりに嬉しくて泣いてしまった。
そして即落ちた。泣き寝入り(違う)。

今夜から薬が怖くない。
そりゃ原液飲んだら、オレンジジュースの原液やってしんどいわ。
水を含んで、やっと飲めるのだ。

ごめんなさい、内用液。
これからもよろしく。

※ 処方された薬が合わない場合は早めに受診して、主治医に判断を仰ぎましょう。
自分の判断で薬をやめないように。これは真面目に。

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