シングルマザーを働かせる社会の異常さ

生活保護や貧困問題に興味がある私は、2018年夏に放送されている関西テレビのドラマ、『健康で文化的な最低限度の生活』を毎週観ています。同名のコミックが原作で、新人ケースワーカーが生活保護の現場で奮闘する様子を描いた社会派ドラマです。ドラマなのでかなりわかりやすく描いているなぁとは思いますが、普段はまず光の当たらない現場、重いテーマに切り込んでいっている挑戦的な作品だと感じ、応援しています。

この夏は生活保護の本を何冊か読んだりして勉強中なのですが、世間では不正受給や生活保護ズルイ的な世論が大人気なのとは裏腹に、現実は相当制度に不備があり、知れば知るほど「どうしようもない制度だな」と思わざるを得なくなりました。もちろん、不正受給を許すからという意味ではなく、貧困の人を救えないからという意味でです。貧困に陥る前段階で食い止めることができない制度であり、また一度生活保護を受給すると抜け出すのが困難であることも問題だと思います。様々な事情で生活保護を受けられている方がいらっしゃると思いますが、先日のドラマの放送でもテーマになっていた母子家庭の貧困というのは、特に社会全体で考える問題だと感じています。

シングルマザーは女手一つで働きながら子どもを育てて…という言説は随分と前から当たり前にあるように思いますが、これはもしかしたら井の中の蛙かもしれません。最近読んでいる本『ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える』(山森亮著)にも、非常に参考になることが書いてありましたのでご紹介したいと思います。シングルマザーの就業率は日本が83%、アメリカ60%、イギリス41%、アイルランド23%(p.55の表)とあり、公的な支援だけで生活できる国もあるようなのです。日本もきちんと申請すればできないこともないはずですが、そもそも日本は生活保護の捕捉率が低く(20%以下)、生活保護以下の水準で生活している人のうち、5人に1人しか受給できていないんだそうです。日本人にありがちな「生活保護を受けるのは恥ずかしい」「とにかく働くべき、働かないといけない」といった思想が申請を阻んでいる部分がかなり大きいと思います。

この本を読んで、「働く」ということについて考えさせられることがたくさんありました。たとえば、子育てや家事という大切な「仕事」は、誰からも賃金を得ることができません。そのことが現代の社会に大きな歪みを生んでいるのは明らかで、その一番の犠牲になっているのが子どもたちだと思います。私はお母さんにとって一番大切な仕事は子育てだと思っていて、特にまだ子どもが小さいうちは子育て以上に優先すべきことなどありません。この世の中はお金お金と言ってばかりで、命や心といった本当に大切にしなければならないことを軽視しており、また、極端な男尊女卑で、世の中を牛耳る中高年男性にとって都合の良い構造になっています。

上記の本を読んで色々考えて感じたことは、シングルマザーを働かせる社会の方がむしろ異常なのではないかということでした。子どもを育てているというだけで、普通に生きていてはいけないのでしょうか?子どもを育てているということは、「働いている」ことにはならないのでしょうか?お金を得るには値しないことなのでしょうか?一般的にお金を得る労働をすることが偉いのでしょうか?それなら株や不動産を転がして莫大なお金を得ている人は「働いている」と言えるのでしょうか?シングルマザーで各種手当や生活保護で生活し、子どもを愛情深く育てている女性は非難の対象になるのでしょうか?…世の中の価値って何…?

私もまだ考えを練っている途中ですし、これからまた考えが変わるかもしれません。しかし、世の中は安易な生活保護・貧困・弱者批判の洗脳が強すぎて、一般の人々も真っ当な価値判断を見失いつつあり、私はそれをとても危険視しています。「働かざる者食うべからず」の強い洗脳をいったん捨てて、「働くとは?」「お金を得るとは?」「本当に大事なものって何?」「どんな社会であるべき?」と一人一人が考えていくことは、より良い社会に向かっていくためにとても大事なことなのではないかなと思います。

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