2021年に観た映画101本レビュー
はじめに
友人とほぼ3人でやっている週2で映画を観る会「ビデオナイト」の2021年全視聴映画レビューをする。★をつけて評価しているけど、これは映画のクオリティを採点しているようなものではなくて、単純に僕がどのくらい好きかを表したものだ。各★のイメージは次の通り。
★ 死ぬほどつまらん
★★ 普通につまらん
★★★ まあ面白かったよ
★★★★ おーいいねえ
★★★★★ 超好き
★3以上は全部普通に楽しめた映画ばかりだ。それ以上の★の数は完全に趣味の問題だと思う。人によっては僕が★5付けた映画よりも★3の方が好きだったりするだろう。もしかしたらそういう人の方が多いかもしれない。ここで、僕が★を増やすときの基準についても整理しておこう。このリストを参考になんか観てみようかなと思っている人は、まず僕と趣味が合うかどうか確認してほしい。
①内容の特異性/新奇性
要は、その映画以外ではあまり表現されていないような内容が描かれているかということ。これまで感じたことのない気持ちにさせて欲しい。今まで知らなかった何かを教えてほしい。僕の予測を裏切ってほしい。この対極にあるのは、「お決まりのパターン」を大切にした映画である。商業的に大成功した映画はそういったものが多く、僕の気にいるものは必然的に少なくなる。ここがかなり人によって好みの分かれる部分だと思う。
②人間性への深い洞察
世の中なんでも白黒つけられるわけではないし、人間の行動全てに筋が通っているわけでもない。時に不条理であったりもする人間の姿を描き出しているものが好きだ。画面の中で人間が生きてるなあ、と感じさせてほしい。
③映像の美しさ
美しい画面にはもうそれだけで価値がある。
以上を踏まえた上で、★の数が少なかった順に紹介していこう。映画.comのリンクを添えているので、あらすじなどはそちらで確認してほしい。なお、ビデオナイトではなく個人的に観た映画もメモが残っている範囲で(個)とつけて紹介しておく。
★死ぬほどつまらん
今年観たものの中には無かった。まあ流石に面白そうなものを選んで観ているので、死ぬほどつまらないものに当たることはそうそうないだろう。
★★普通につまらん
・市民ケーン
名前は知ってる有名な映画。古典的名画とされているものでハズレを引いたことがあまりなかったんだけど、これは本当につまらなかった。偉人の退屈な自伝を読まされているような感じ。悪い意味で思い出深い映画となった。
・ソニック・ザ・ムービー(個)
観れなくはない。
・サニー/32(個)
インディーズ感のある低予算邦画。すごくサムくて観てて恥ずかしくなっちゃった。
★★★まあ面白かったよ
・オーメン
悪魔崇拝をモチーフにしたホラーは好きなんだけど、これはあまりにも小綺麗にまとまりすぎててそこまで気に入らなかった。主人公が行動的で大冒険しちゃうのも恐怖を減退させている。やっぱこういう系では「ローズマリーの赤ちゃん」が大好きだ。
・哭声/コクソン
「解釈は観る者に委ねます系」は好きじゃない。途中まで結構面白かったけどね。
・迷宮物語
複数の監督によるオムニバス。アート寄り過ぎて惹かれるストーリーが少なかった。でも最後の大友克洋パートは話も面白かったのでやっぱすげーなと思った。
・ドラゴンクエスト ユア・ストーリー
有名な駄作だけど、笑える駄作だったので★3つ。本当の駄作は笑いにすらならない。
・アイリッシュマン
実在のマフィアの話。こんなことがあったんだなーって勉強になった、というくらい。
・記憶にございません!
あんまり記憶にない。
・ダ・ヴィンチ・コード
陰謀論者の妄想を具現化したような話だなーって感じ。
・狂った一頁
大正時代に作られた映画。歴史資料としては興味を惹かれるが、面白いかといえばそうでもない。
・ネクロマンティック
さすがに頭がおかしい。DVDを買ってしまった。
・スティング
普通に面白い詐欺師映画の古典。
・ホテルムンバイ
僕の知らない「テロリストにとっての現実」みたいなものを期待して観たが、そういう感じではなかった。
・ドラキュラ
コッポラ版ドラキュラ。愛に生きたモンスター・ドラキュラ伯爵を超真面目に丁寧に描いた映画。
・バッド・マイロ!
あんまり覚えてないアホ映画。
・孤狼の血
迫力はあるけど内容としてはスタンダードな感じで目新しさはなかった。
・人間の証明
昔ながらのミステリー観たなって感じ。
・聖者の食卓
作業用BGMに最高
・MANK
「市民ケーン」制作時の裏側を描いた映画。「市民ケーン」よりはずっと面白かった。
・めぐり逢わせのお弁当
踊らないインド映画。静かで淡々としていて結局何も変わらない感じがフランス映画みたい。
・来る(個)
和製除霊モノホラー。こういう系は低予算でチープなものが多いが、これはちゃんと金がかかっている感じのする珍しい作品だ。
・壁(個)
オーストリアのSFホラー?映画。謎の透明な壁で山に閉じ込められた女が動物たちと自然の中で生活する。
・天使のたまご(個)
押井守の長編初監督作品。途中で寝た。映像は綺麗で好き。不思議な世界に浸りながら良い気持ちで寝ることが出来た。
・ディック・ロングはなぜ死んだのか?(個)
なんか微妙な気分になれる映画。
・リアリティのダンス(個)
ホドロフスキーの少年時代を描いた自伝的映画。同種の映画である「田園に死す」とか「フェリーニのアマルコルド」に比べると演出がクドくてわざとらしく、いまいちハマれなかった。
・ねじれた家(個)
良くも悪くもオーソドックスなミステリー。
・ソイレント・グリーン(個)
ゼノギアスのソイレントシステムの元ネタ。結構真面目なディストピアSFサスペンスだった。
・紀子の食卓(個)
園子温だな~って感じ。
★★★★おーいいねえ
・鈴木清順浪漫三部作(ツィゴイネルワイゼン/陽炎座/夢二)
話は繋がってないけど三部作と言われているので3本まとめておく。なんだかよくわからんけど幻想的で美しい世界。ツィゴイネルワイゼンは男と女のあれやこれや、陽炎座は心中の美学、夢二は実在の画家・竹下夢二の執念みたいなものを描いている。僕は陽炎座が一番好きかな。
・マサラチャイ
人々の生活を感じられるドキュメンタリー
・テネット
すごい難解な映画!みたいな触れ込みだったけど、ただの普通に楽しめるエンターテイメント映画だった。気負わずに観ていい。
・CURE
「洗脳」というテーマが角川ホラーとかで流行った頃の流れを汲んでいて、ちょっと懐かしい気分になった。静かで不気味な雰囲気が良い。
・オン・ザ・ミルキー・ロード
好き。人生の喜びや悲しみや悲しみや悲しみが描かれている。
・キツツキと雨
軽い気分で観れる気持ちのいい映画。
・ヒトラー 最期の12日間
しんどい。
・マイ・フェア・レディ
話は超スタンダードなんだけど、衣装や建物がとても綺麗でよかった。
・エミリー・ローズ
実際にあったらしい悪魔憑きについての裁判。裁判の展開が面白い。
・鉄道員(ぽっぽや)
普通にいい話だ。
・異端の鳥
すごくつらい。好き。
・カリガリ博士
ホラー映画の古典中の古典。だが、古典とは思えないくらいひねりが効いている。
・アリス
実写版不思議の国のアリス。ストップモーションを使った不思議な映像が良い。
・箪笥
韓国ホラー。物悲しい雰囲気とストーリーが良い。
・アリス・スウィート・アリス
割と楽しめるスラッシャー映画。人殺す映画観たいな~ってときにどうぞ。
・熱海殺人事件
つかこうへいの舞台の映画化。最後の方ほぼ舞台みたいなもんだった。時代性を感じる事件の真相が良い。
・パルプ・フィクション
とりあえずカッコいいからいいでしょみたいな映画。
・キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
逃げる詐欺師と追う刑事の奇妙な友情みたいなものがなかなか良い。
・もう終わりにしよう。
明日は我が身って感じ。叙述トリックみたいなものを取り入れてかなり分かりにくく作られた映画だけど、でもしっかり伝わるように出来ていて、バランスが良いなと思った。
・ウィッチ
僕にとっての魔女ってもののイメージにかなり合っていて好き。
・ペルソナ
途中たるいところもあったけど印象に残るシーンもあったりして、割と好き。
・ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
あ~~~そう来るのね~~~という楽しさがあった。
・気狂いピエロ
男と女の粋な逃避行。
・告白小説、その結末
結末が良い。ポランスキーは観る人を絶妙にスッキリしない嫌な気持ちにさせるのがうまいと思う。
・ダリオ・アルジェントのドラキュラ
好き。チープでめちゃくちゃだけどもうこれでいいんだ。楽しくなっちゃう。
・フェリーニのアマルコルド
フェリーニの幼少期を描いた映画。人々が生きてるなーって感じ。
・ひつじ村の兄弟
ラストシーンが忘れられない。
・好きにならずにいられない
フーシは良い奴だよ。
・マーターズ
痛々しさでは他の追随を許さないスプラッタ映画。
・ドッグマン
イタリアの田舎の人生。ジャイアンとのび太。
・殺人狂時代
あらすじめちゃくちゃだけど観てみると案外しっかりしたエンターテイメント映画だった。
・2人のローマ教皇
おじいさんの心温まる交流。
・日本のいちばん長い日(1967)
すべての登場人物の思考や行動が全体主義的で気持ち悪い。しかしこれ当時の日本人の姿だったんだろうな。あと、天皇の顔を敢えて「映さない」ことによって神々しさを表現する手法が面白かった。
・永遠に僕のもの
センチメンタルな青春犯罪映画。
・ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
シンエヴァを観るために観る映画。
・リトル・ミス・サンシャイン
普通におもろい心温まるロードムービー。
・泥の河
戦後の貧困生活ってのは現代人の想像の遥か下を行っていてすごい。子供視点で描かれているのがまた心に刺さる。
・聖なる鹿殺し
結局何がしたかったのか分からないなんだコレ映画。なかなか気持ち悪くてまあ良かった。
・ファンタスティック・プラネット
独自性の塊みたいなアニメ映画。現実社会を比喩的に表現しているようなそうでもないような感じも良い。
・サーミの血
スウェーデンにおける被差別民族・サーミ人を描いた映画。いいね。
・ムトゥ 踊るマハラジャ
これぞインド映画。内容ぎゅうぎゅう詰め。
・ホーム・アローン
クリスマスに観た。改めて見ると大衆向けエンターテイメント映画としての完成度がすごい。
・友だちのうちはどこ?
「イランの小津安二郎」と呼ばれているらしい(?)アッバス・キアロスタミ監督の作品。大人の理不尽な支配に振り回されながらも優しさを失わない少年の姿が美しい。子どもの頃は隣町まで行くのすら大冒険だったよね。
・マリア・レッサ:フィリピン 強権国家との闘い(個)
フィリピンのドキュメンタリー。大統領命令で警察が人を殺すような独裁国家がこの2021年に存在したということ自体が衝撃的だった。
・長距離ランナーの孤独(個)
走りたくなる気持ちも走りたくない気持ちもとても分かる。切ない。
・ブレンダンとケルズの秘密(個)
アイルランドのアニメ映画。伝統的な装飾や紋様への愛情が詰め込まれた映画だった。
・マルホランド・ドライブ(個)
良くわからんなあと思いつつもなぜか目が離せない映画だった。歌のシーンがめちゃくちゃ引き込まれる。
・マーダー・ミステリー(個)
すごくライトなミステリー映画。
・めし(個)
戦後の日本で女がしあわせを探す話。
★★★★★超好き
・牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件
4時間あるからちょっとしんどい。けどその分没入感がある。台湾の歴史と社会的背景をうまく取り入れた青春映画。
・裸足の季節
抑圧的なトルコの田舎で3姉妹が自由を求める話。暖かな日差しがとても美しい。脇役も魅力的だったりして、とても楽しめた。
・バーフバリ(伝説誕生/王の帰還)
笑っちゃうくらいカッコいい。ジェイ!マヒシュマティ!
・叫びとささやき
赤と白を基調としたインテリアがとにかく美しい。人がただ椅子に座っているだけのシーンでもめちゃくちゃバシッと決まっていてどこをとっても絵になる。ドロドロとした人間ドラマも良い。
・アングスト/不安
実在の猟奇殺人犯についての綿密な取材に基づく再現映像のような映画。日本では30年以上発禁だったらしい。フィクションのホラー映画ではなかなか到達できない「ホンモノ」の迫力がある。他に類するものの無い名作。
・悪童日記
過酷な環境で兄弟が強く生きようとする話。今思うと★4でもいいかも。
・シンドラーのリスト
言わずと知れた名作だろうと思うけど観てなかった。言わずと知れた名作だった。
・黒猫・白猫
めちゃくちゃな乱痴気騒ぎの中に、人間の本質的な喜びみたいなものが隠されている、ような気がする。ほんとうにめちゃくちゃで楽しい映画。
・飼育(1961)
大江健三郎の短編の映画化。閉鎖的な田舎の村社会の気持ち悪さが克明に描かれている。
・ハウス・ジャック・ビルト
好きすぎて単体の感想文書いちゃった。超好き。
・存在のない子供たち
中東の貧困世帯の子供が打ちのめされながらも強く生きる映画。主人公の子は本当に作中のような生活をしていたらしく、リアリティがあってよかった。
・家族ゲーム
平成初期の核家族のステレオタイプがものすごくリアルに描かれている。無責任に威張り散らす父、父の顔色を伺うばかりで子供のことを何も理解していない母、そんな両親に嫌気が差した子供。自分の家族にも通ずるところがあってかなり刺さった。名作。
・シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
死ぬほど泣いた。死ぬかと思った。エヴァとしても良かったし、それだけじゃなく映画としても良かった。
・この世界のさらにいくつもの片隅に
良いよね。追加シーンで、お話の中のある人物についての背景が補強されている。ただ、「さらにいくつもの」じゃないほうが映画としてはスッキリまとまっているような気はした。要素が増えると焦点がブレるからね。
・寺山修司作品(書を捨てよ町へ出よう/ボクサー/さらば箱舟)
超好き。ほんとに意味不明なシーンがたくさんあるんだけど、それでもなぜか全然飽きずに最後までのめり込んで観てしまうのが不思議だ。この3作だと「書を捨てよ~」と「さらば箱舟」が同じくらい好きで、「ボクサー」は★3くらいだった。「ボクサー」は「ロッキー」の寺山修司アレンジって感じ。
・霧の中の風景
姉弟がアテネからドイツを目指して旅をする物語。美しく悲しいおとぎ話のような映画。叙情感がものすごい。
・東京物語
名監督と名高いけど今まで観たことなかった小津安二郎の代表作。戦後日本の「普通の家族」を描くことによって、時代性はもちろん、普遍的な人間性も描き出しているような映画。この良さはなかなか文章では伝えられない。噂に違わぬ名作だった。部屋で会話するシーンでは引きの構図が多く、手狭な家のごちゃごちゃ感がうまく引き出されていたりして画面も楽しかった。
・ECHO
アイスランドのクリスマス映画。クリスマスから新年にかけての人々の生活の様子を淡々と描いた映画。ストーリー的なものはなく、本当にただただ生活している。色んな境遇の人々の喜びや悲しみの断片が次々と映し出されて、行間を想像せずにはいられない。映像も非常に美しく、アイスランドの澄んだ空気や刺すような寒さを感じられるような気がした。
振り返り
・子どもが主人公の映画
子どもが主人公の映画っていいよね。「裸足の季節」と「霧の中の風景」はその中でも特に好きだった。「子供」という存在の弱さと儚さがとても美しくてやるせない。「存在のない子どもたち」とか「友だちのうちはどこ?」も良かったな。
・映像が美しい映画
とにかく画面が綺麗だったらそれだけで好きになっちゃう。今年観た中では、美麗な屋敷を舞台にした「叫びとささやき」が優勝だ。あとは北欧の美しい自然や町並みを楽しめる「ECHO」「サーミの血」あたりとか、上と重複するけど「裸足の季節」や「霧の中の風景」はこちらの部門でも高評価。
・殺人映画
「アングスト/不安」と「ハウス・ジャック・ビルト」は、好きな人は本当に好きだと思う。どちらも違った良さがある。リアリティをとるなら「アングスト/不安」、フィクションとしての楽しさをとるなら「ハウス・ジャック・ビルト」といった感じだ。
・頭がおかしい映画
スプラッタ映画は好きなんだけど、さすがに「ネクロマンティック」は頭おかしいだろって感じだった。死体性愛者のカップルが主人公の映画で、草原で走り回りながら内蔵投げたりしてた。嫌いじゃないけどさすがに若干ついていけない感じがある。今思うと、スプラッタ映画に「ついていけない」と思ったのはこれが初めてかも知れない。
おわりに:2021年ビデオナイト大賞
最後にビデオナイトレギュラーメンバー(3人)の総評が最も高かったものを大賞としてまとめておこう。特に何の名誉もない大賞に輝くのは、「家族ゲーム」と「アングスト/不安」である。
「家族ゲーム」はどんな人にもおすすめできる。ある時代の家族の真理を捉えている名作だ。「アングスト/不安」は殺人映画ファンには自信を持っておすすめできる。本当に他に類するものの無いタイプの映画だ。僕らは3人ともスプラッタ系が好きなんだけど、その中でも満場一致の高評価だった。
というわけで、2021年に観た映画の総レビューは終わり。ここまで読んでくれた人も、おすすめの映画があれば教えてくれよな。ではまた来年。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?