組織のビジョンとは何か?
『THE VISIONーあの企業が世界で急成長を遂げる理由ー』の著者である江上隆夫氏は、その著書の中で、20世紀最高のビジョンは、マーチン・ルーサー・キング牧師の1963年のワシントン大行列での演説であると紹介してます。
本noteでは、なぜキング牧師のビジョンは20世紀最高と言われるのかの分析から、ビジョンとは何かを考えます。ビジョンを理解したところで、なぜ組織にはビジョンが必要なのかについて整理します。最後に、これらを踏まえてビジョンをどうつくるのかをまとめます。
ビジョンとは何か
私が思うに、キング牧師の演説が20世紀最高のビジョンと言われる所以は、「誰もが同じ情景が目に浮かぶ」ことと感じます。そのためには、「主語が明確」で「内容が具体的」であり、「明るい未来」が示されていることが必要と感じます。
具体的な企業名は伏せますが、海外企業に買収されたA社や、現在苦境に喘いでいるB社のビジョンは、何度読んでも明るい未来の情景が浮かばないという共通点があります。「こうあるべき」という心構えや道徳、「〜し続けていく」という現状維持のメッセージでは、ビジョンになり得ないということを感じました。
ビジョンとは、”実現したい未来”であり、そこには、その組織のあり方と世の中との接点を含める必要があります。将来どのようにありたいのか、提供する価値を対象者にどのように約束したいのかを含めると、ビジョンが日々の仕事の判断軸になります。
混同しやすいものに、ミッションやバリューがあります。ミッションとは、”日々果たすべき使命”であり、過去・現在・未来において常に果たし続けるものです。一方、バリューとは、”約束する価値と強み”であり、ミッションを果たし続けることで対象者に提供する価値や強みを指します。
以上のことから、本noteでは、「ビジョンとは、誰もが同じ情景が浮かぶような、主語が明確で内容が具体的な明るい未来」と定義します。
なぜ、ビジョンが必要なのか
ビジョンが必要な理由は、衰退を避け、成長し続けるためです。そのために、未来における組織運営の「挑戦と変革」を組織の内外に示す必要があります。これにより、現在よりも良い状態を目指して組織の力が結集しやすくなると考えられるからです。
C.I.バーナードは組織の成立に必要な十分条件として、①伝達(コミュニケーション)、②貢献意欲、③共通目的の3つを挙げています。ビジョンは、このうちの共通目的にあたると考えます。つまり、ビジョンは組織を成立させるためにも必要と考えることができます。
他方、ビジョン通りに進まないことがあります。その際のパターンには、以下の3つがあると言われています。
このうちの”戦略は問題ないが、現場への落とし込みが不足”というケースは、私自身も経験した失敗の一つです。現場への落とし込みが足りなければ、どんなに素晴らしいビジョンも「無いに等しい」のです。
以上のことから、「ビジョンが必要な理由は、組織が成立し成長し続けるため」と考えることができます。
ビジョンはどうつくるのか
ビジョンとは、誰もが同じ情景が浮かぶような、主語が明確で内容が具体的な明るい未来であり、組織が成立し成長し続けるために必要なものでした。そのためには、まずミッションと整合性がとれていることを確認した上で、変化する外部環境を勘案して、私(私たち)はどのような未来を実現したいのかという夢を情景として描くことが必要と感じます。そして、その情景を文章で表現し、現場や第三者の方が同じような情景をイメージするかを確認することが必要と感じます。よいビジョンのチェックリストとして、以下のポイントが強調されています。
最後に、現在私はその立場にありませんが、私が所属する部門のビジョンを作ってみました。あくまでトレーニング用で非公式です。ご笑覧ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
(参考)
・江上隆夫「THE VISIONーあの企業が世界で急成長を遂げる理由ー」,朝日新聞出版,2019.
・株式会社パラドックス Visions:企業の根幹を担うミッション ビジョン バリューの意味合いと作り方.https://prdx.co.jp/visions-prdx/mission-vision-value/(参照2022.2.8)
・株式会社パラドックス Visions:ビジョンとは?組織が進む道が定まる実践的なビジョンの知識と作り方.https://prdx.co.jp/visions-prdx/what-is-vision/(参照2022.2.8)
・C.I.バーナード:「新訳 経営者の役割」.ダイヤモンド社,1968.
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