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オンライン早稲田祭34万人の熱狂の舞台裏

完全にオンラインに決めたのは、7月になってからだった。
それまでは、オンラインにするか、
規模を縮小してリアルでやるか、延期か、中止か。

2020年の早稲田祭は、完全オンラインで実施された。
例年は2日間でのべ20万人が広くもないキャンパスに集まり、
いろんなイベント、活動発表、屋台での飲食を楽しむ。

ところが今年は……。
フタを開けてみると、「来場者」数345,339人。
企画数は300件、200の学生団体1万人が
15チャンネル使って、コンテンツをすべてライブ配信した。

早稲田大学が卒業式を取りやめ、入学式を取りやめ、
授業をオンラインにすることを決定したのは3月。
このとき、先はまったく見えなかった。
ゴールデンウィークはどうなるんだろう、
ぐらいの感覚で、
夏休みぐらいにはなんとかなるんだろう、
ぐらいの感覚で、
ましてや11月なんてのはもう、
いやそれはなんとかなってんだろう、でしかなかったろう。

だから、早稲田祭の運営スタッフたちは長いこと悩んだ。

昨日、
「早稲田祭2020"完全オンライン化"当事者に聞く、決断と苦闘」
というオンラインイベントがあって、
運営スタッフ代表のヒナタ以下3名が語った。
聞いていて、ホントに決断とと苦闘だったんだな、
とわかった。

早稲田祭は「運営スタッフ」(通称:運スタ)という「サークル」で運営される。
あらゆる運営ノウハウは、年々受け継がれてきた。
広報、財務、参加対応、会場整備、渉外、総務などなど、
あらゆる運営ノウハウは、まったく通用しなくなった、今年は。
しかも、「システム部門」も新設しなければならない。

運スタは600人。1年生から4年生までいる。
入学式をスルーされ、大学のキャンパスに一度も入ったことがない、
そんな1年生たちもいる600人のモチベーション維持。

そうした大問題を抱えながら、ヒナタをトップに運スタたちは
早稲田祭を諦めなかった。

2020をなかったことにしたくなかった。
入学式も卒業式も授業もずっとオンライン。
なにかやりたいのにどうやっていいかわからない。
そのうち、なにをやりたいのかもわからなくなった。
1年生は、自分たちがナニモノかもわからない。
早稲田祭という目標があれば、
自分に立ち向かっていけるんじゃないか。
行き場のない自分のモヤモヤをぶつけられるんじゃないか。
そうやってわたしたちはオンラインででも早稲田祭をやることに決めました。
やるからには、オンラインだからしょうがないよね、
っていう粗末な早稲田祭にはしたくない。
早稲田祭らしさを保つために、
①偶発性:目当てのイベントとはべつのイベントに出会えるしくみ
②複雑性:150チャンネル、60番組を同時に発信
③双方向性:イベントをやる側と見る側が直接コミュニケーション
④日本一の学園祭として:誇りを持つ
を決めました。
オンデマンドを混ぜてやった大学もありますが、
わたしたちはすべてライブ配信にこだわった。
細部に至るまで気を配れたと思う。
コミュニケーションもオンラインだけど直接とれた。
そこまでするわたしたちのモチベーションですか?
新コロナになって今年の早稲田祭はかわいそうだよね、
今年の早稲田祭はあわれだよね、ってぜったいに言わせない。
っていう私たちじゃなくって、早大生の思いなんです。
早大生の学園祭に寄せる思いは、ほかの大学とは違うんです。
キャッチコピーは「今、新たに」です。
今年だけ特別なんじゃなくて、
これから新しい時代が始まるんです、って思ったんです。

QRコードによる独自の出入構システムをつくった。
いつ、誰が、どこから構内に入って、どこで作業して、
いつ、誰が、どこの門から出ていったか。
11月7日、8日の早稲田祭当日、
ライブ配信をする1万人が、早稲田大学構内に入って、
ライブ配信をした。

1万人をマネージする出入構システムと感染症対策。
どこかに売る予定はない、という。
もっとよくして、もっと改良して、
いろんな大学に使って欲しい、
と、ヒナタたちは胸を張った。