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35万人集めたって成功とはいわない

早稲田祭2020の運営スタッフ代表ヒナタを連続インタビューしている。

早稲田祭2020は、初めてオンラインでの開催となった。
ダンス系サークルやアイドルのライブ、文化人のトークなど、
発信する側は大学構内から。
受信する側は自宅やカフェやそれぞれの場所で。
受信すると参加者としてカウントされ、
のべ35万人もの人々が、オンライン早稲田祭に参加した。

よくやったね、大成功だね、
と、インタビューアーのシモチャンがいうと、
「じゃないですね〜」
ヒナタはいう。
「成功じゃないの?」
シモチャンはそれは意外な返答だ、と。

例年では20万人だから、数字ではそのはるかに上をいく、
しかもほかの大学が学園祭を中止したり、
オンラインでも開催日数を減らしたり、規模を縮小するなかで、
予定通り2日間、きっちりやり通したのは、大成功ではないのか。

ヒナタは、
「じゃないですね〜」
繰り返す。そして、
「そもそも、早稲田祭には『成功』の定義がされてないんです」
成功の定義?

「そもそも、早稲田祭って失敗したことがないんです。
毎年20万人が参加する学園祭で、
歴代の代表がそれぞれ『成功した』と思っているかもしれない。
でも、それって代表個人の感情であって、
わたしは20万人を35万人にしたから『成功した』とはいいたくないんです」

人数ではない、と。
内容か?

「早稲田祭って、非日常の空間で、
入場するときにワクワクしたり、人数多くてイラッとしたり、
飲食屋台で美味しいと思ったり、ライブで楽しんだり感動したり、
そうした感情の振れ幅が大きい、
非日常のハレの場所だと思うんです。

わたしたち運営スタッフは、その『場』をつくる側であって、
わたしたちは、たとえば『踊る側』ではないんです」

演劇でいうと、舞台セットをつくる大道具さん、
照明さん、音響さん、カメラさん、メイクさんとか。
そこに役者が乗って演じて、観客が評価して、
舞台は秀作か駄作かになる。

運スタは、早稲田祭という舞台をこしらえて、
それで早稲田祭に35万人が集まったというのは、
それぞれ発信したサークルたちのコンテンツの力である、と。

そういえば、連続インタビューの最初の方で、
オンラインでも感染の危険性があるのになぜ、
早稲田祭をやるのかとヒナタに問うたら、
「わたしたち運営スタッフは、早稲田祭を実施する団体だから。
サッカーサークルに、なぜサッカーやるのか?という質問しないでしょ?笑」
と、同時に、
「参加するサークルにとって、早稲田祭が最高の舞台なんです。
早稲田祭に向かって、ずっと稽古してきてるんです。
だから、たとえひとつでも『早稲田祭に出たい』という団体がある限り、
わたしたちは早稲田祭を開催するんです」
といっていた。

場づくりに徹する。
その役割には成功もなければ、失敗もない。
役者から感謝はされるが、観客からは評価されない。
でも、それでいいんだ。

これはなかなか、謙虚な考えだ。