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そしてなんにもなくなっちゃう

『苦しかったときの話をしようか』(森岡毅著)
を読んでて、

お金よりも遥かにわたしを突き動かす最大の「欲」は、知的好奇心を満たすことなのだ。(中略)お金を持ってあの世に行けるわけじゃないから、わたしの場合はこれで良いと思う。

という箇所にあたって、
映画『PLAN 75』で戦慄したシーンを思い出した。

『PLAN 75』では、超高齢化による社会の混乱を治めるため、
<75歳になったら自己責任で死を選んでもいいよ>
という政策が施行されている。

「PLAN 75」は申し込み制で、
申し込めば、10万円が支給され、
生命を断つ特定の日時と特定の場所を指定され、
その日まで毎日、わずかばかりの時間、電話での話し相手、を与えられる。

その日が来て、特定の日時と特定の場所に行き、
眠るように死んでいく。

死亡が確認されたら、
係の人が身ぐるみ剥ぎ取っていく。
腕時計、指輪、ネックレス、イヤリング、
上着のポケット、ズボンのポケットに入っているもの。
剥ぎ取って、バケツの中に捨てる。

手に持ってきたかばんも、
中身を確かめたり確かめなかったりしながら、
ザザザーっとバケツに放り込む。

戦慄したのは、
「お金を持ってあの世に行けるわけじゃないから」
ってことを、淡々と描いているから。

大切なものも便利なものも大好きなものも、
ザザザーっとバケツに放り込まれてしまう。

その日が来て、特定の日時と特定の場所に向かったあと、
住んでいる家(アパート)は大家か管理人が来て、
自動的に部屋の明け渡しとなる。
家具やら家電やら洋服やらはどうなるか、
想像するに難くない。

『PLAN 75』、恐ろしい映画だった。


『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』 森岡毅 ダイヤモンド社 2019年