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虚舟は超古代アトランティスの宇宙船だった! 天空の城「浮揚大陸マゴニア」の謎/嵩夜ゆう

ヨーロッパ各地に残る飛行船伝説と、その発進基地だという浮揚大陸マゴニア。
天空に浮かぶこの巨大な城の真実は、だれもが知るあの小説に記されていた。激しい天空の戦いの後に姿を消した彼らは、どこからやってきてどこへ去っていったのか?
謎を解く第一級資料は、日本に残されていたのである!

文=嵩夜ゆう イラストレーション=久保田晃司

三上編集長による解説動画

プロローグ アメリカのUAPレポートと浮揚大陸マゴニア

 2021年はUFO研究の世界において、歴史的な年になった。それまで科学的に理解不能な飛翔体や航空現象は存在しないと一貫して主張していたアメリカが、その態度を覆くつがえしたのだ。

 同年6月25日にアメリカは、UFOに関する公文書を発表。わずか9ページの分量だったが、そのなかで彼らは、少なくとも2004年から未確認航空現象=UAP(UFO)の存在について、国家安全保障上の危機感をもって調査していたことを認めたのである。

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アメリカ政府が公表した未確認航空現象=UAPに関する公式文書。わずか9ページだが、政府が公式にUAPの存在を認めたことは大きい。

 もちろんこの9ページが、彼らの調査のすべてではないことは、いうまでもない。
 まだ公表すべきではないと判断されたそれ以外の情報は、非公開の公聴会によって議員にのみ開示されている。ただし、これも物理学の専門知識を要するような情報のため、UAPに関して完全に理解している人間はわずか10人足らずしかいないというのが現状のようだ。
 しかし、考えるまでもなくUAP目撃事件は、いまや決して珍しいものではない。それは歴史上においても同じことで、実際、世界中の文献を調べていくと、事件自体は歴史的事実であるとアカデミズムが認めているにもかかわらず、真相が解明されていない事例が多く存在するのだ。

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公式文書によると、2004年には、すでに国家安全保障上の理由からUAPの調査が行われていたという。

 それらのうち、現在もなお仮説すらまともにたてることができないもののひとつに、「浮揚大陸マゴニア」がある。
 浮揚大陸マゴニアとはマゴ、あるいはマギ──つまり魔術師のニア(国)という意味である。浮揚大陸というだけに、地上の国ではない。天空に存在する大陸なのである。

 ここで読者は『ガリバー旅行記』に描かれたラピュータ、あるいはラピュタと発音するジョナサン・スウィフトの創作物を思い浮かべることだろう。
 実はあれは創作ではない。
 作者スウィフトは純粋なフィクション作家ではなく、複数の学問に精通し、現代でいうところのマクロ経済学までを網羅する知的巨人だった。さらに社会的にも、複数の分野の専門知識をベースとした貧困撲滅法など、現実に則した書物を執筆する学者だったのである。
 そのスウィフトが、さまざまな地域の不思議な話をベースにして書いたのが『ガリバー旅行記』なのだ。つまりラピュータもまた、スウィフトが集めた文献から限りなく事実に近い浮揚大陸の情景を設定し、そこに社会風刺を加え、できあがったものなのだ。
 いい換えればそれは、スウィフトの時代の人々にとって、リアリティあふれるものだったということになる。

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『ガリバー旅行記』を書いたジョナサン・スウィフトの肖像画。作家以外にも、科学者、社会学者という顔があったことはあまり知られていない。

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ラピュタが登場する小説『ガリバー旅行記』の初版本。計4巻からなるこの本には、多くの真実と風ふう刺し が含まれている。

 では、天空に浮く大陸は、本当に実在したのだろうか。
 筆者はここでプラトンの言葉を引用し、「信じがたい話ではあるが、これは事実である」と断言したい。
 マゴニア、もしくは浮揚大陸に関する資料は、その存在の不思議さ、疑わしさを無視するかのように、あまりにも詳細な記述に満ちあふれているからだ。

歴史資料に登場する浮揚大陸

 マゴニアという空飛ぶ国の伝承については、8世紀ごろから記録が見られる。以後、定期的にヨーロッパのいずれかの国で目撃されるようになり、17世紀になってもそれが続いていた。
 多くの場合、空から船団が現れ、嵐を起こし、家畜や作物を略奪していった、というものだ。そのためアカデミズムでは、領主に支払う税を免れるための方便として作られた話ではないかという説が一般的だった。
 だが徴税において、そのような荒唐無稽ないいわけが通用するとは思えない。逆にそれが通用してしまうということは、頻繁に浮揚大陸が現れ、略奪行為を行っていたというひとつの証拠なのではないか。
 もちろんなかには、マゴニアに略奪されたと嘘をついた者もいたことだろう。だが、それを領主が信じるには、ヨーロッパ各地でマゴニアという不思議な浮揚大陸と、そこの住人である魔法を操る略奪者の存在が認知されていなければならないのだ。
 ならば、作り話という先入観抜きで浮揚大陸マゴニアの存在を見た場合、はたしてどうなるのだろうか。
 歴史的資料には、浮揚大陸マゴニアの実在を物語るものは数多く存在する。それも具体的かつ信用に足る文献が多いのである。
 では、スウィフトが生きた17世紀のヨーロッパでは、浮揚大陸マゴニアはどのようにとらえられていたのか?
 次章からはそれを探っていくことにしよう。

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