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自衛隊入隊から教育隊卒業までの記憶①

自衛隊を目指したきっかけ

 そもそも自衛隊を目指したきっかけはいろいろあるが、親父が戦艦大和のプラモデルを小学生の時に買ってくれたことが後の人生に大きな影響を与えたのは確かである。暇さえあれば親父が借りてきてくれた宇宙戦艦ヤマトのDVDを視聴し、一人旅行が好きだったのでよく広島の呉や横須賀に旅行に行って江田島や大和ミュージアム、鉄のくじら館などの戦史隊史に関わる施設を見学していた。あの頃は幼かったこともあり自衛隊の歴史や旧帝国陸海軍との関係性、アメリカ軍との関係など何も知らなかったが、学年を重ねるごとに歴史の重要性や自衛隊がどれだけ日本にとって不可欠な存在であるかを世界史や政治経済を学んだことで思い知った。また、私は自衛隊や政治に関する書籍を幼いころから読んでいた。その時に母がまとめて買ってきてくれた書籍の中にヒトラーが書いた書物である「我が闘争」の日本語訳された本があった。その内容からも、当時世界恐慌に見舞われていたドイツの経済状況と全体主義的な主導者を作りやすい国民性がファシズムの力を大きく揮ったことを学んだ。これらの経験から、我が闘争を読んだことや近代日本の戦史、周辺国との歴史関係を知ったことにより高校時代に防衛大学校を目指すこととなった。
 しかし、現役で一般入試で防衛大学校に落ちてしまった。また、私は浪人を考えたが母親が自衛隊や防衛大学校に反対だったため浪人を許さなかったため、自分の我を押し通す性格だった私は直接海上自衛隊に入隊を決意、たたき上げで幹部になることを考えた。

海上自衛隊入隊「舞鶴教育隊編」

 着任後から慣れるまでは、教官達がかなり厳しかったことは覚えている。この記事を書いている2024年では絶対アウトであろう暴力もあり、パワハラ万歳の状態だった。一丸となって行動を共にする軍隊組織においてどちらかというと一人で静かに物事を考えてアクションを起こすタイプの私にとってはかなり修行だった。私の分隊士(分隊長のお付き)がかなり年配の教官だったこともあり、家庭のストレスを晴らすため私の同期を制帽で殴り倒したことで教官の役職を剥奪されたこともあったぐらいパワーと立場が権力を握る社会だった。しかし危険が伴う仕事ではあるため厳しい指導や監督のもと教育鍛錬を重ねないといけないのは仕方ないことではあったので教官たちの指導に屈して正規隊員にもならずして辛さを理由に退官するという考えは全くなかった。
 基本的にラッパの号令で全員起床。思い出としては、当直に当たった時が一番地獄だった。その日の分隊のリーダーとして号令の指揮や教官への報告、そして一番面倒な当直日誌を就寝までに書き終えないといけない。翌朝は皆より早めに起きて起床点呼を取る。二人分の仕事を一人でやっている気分だった。
 楽しかった思い出は体育と実技訓練の時間である。体育はフットサルやランニングが主であったがこの時間だけは自衛官であることを忘れさせてくれた。もう一つの実技訓練であるが、実銃の分解結合や匍匐訓練、遮蔽物を利用した索敵訓練などであった。訓育が多かった前半はなかなか銃すらまともに使って訓練させてくれなかったが教育隊卒業まで半期を過ぎたくらいから本格的に自衛官らしい訓練をさせてくれた。
 同期と楽しいこともあれば辛いこと、喧嘩して派閥のように内々の意見が割れることもあったが、この教育隊通じてわかったことであるが自衛隊の新隊員教育を自衛官未経験で乗り越えれるのは脳筋かあるいは本当に何も普段から深く考えて行動していない馬鹿ぐらいなのかと思ってしまった。自分が特別体力があるわけでもなく協調性があるほうでもなかったのでそれぐらいの精神力や吹っ切れ感がないと毎日しごきに耐えれないと悟った。実際、辛さを隠して同期と足並みをそろえてきた友達が鬱になり、荷物をまとめて教育隊を去っていく姿を自分の部隊以外にもいろいろ見てきたため、この記事を読んで自衛官を初めて目指そうと考えている人はある意味で覚悟を持って入隊をしたほうがいいと言える。というのも、安定した年収や広報官の勧誘を鵜呑みにして入ってこんなはずじゃなかったという思いや鬱になって退官してほしくないからである。
 とはいえ体力に自信がある人は自衛隊はもってこいの職場である。逆に座学の成績がボロボロでも精神検査に異常がなければ攻撃要員として重宝する。当時私は皆勤賞を受賞して教育隊を卒業しているが、座学を優先して同期と戦うもよし、体力で戦うもよしの世界であったことは間違いなかった。どちらかといえば幹部を狙わない限り体力極振りで何とかなる。私自身は体力よりも座学の成績がよかったため役職的に重要な第一志望の射撃管制(高性能機関砲CIWSや主砲、ミサイル系統全般の発射を行う)にマークを充てられた。補足ではあるが、自衛隊では役職とは言わず「マーク」と呼称する。

 今回はここまでとする。また書きたくなったら教育隊の後半を書こうと思う。少しでもこの情報が自衛隊の雑学に興味のある方や志望している方に役に立つことを期待している。


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