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【連載小説】聖ポトロの巡礼(第4回)

貝の月30日

前回の日記の後のことを書いとかないと、後で日記を読み返したときに自分でも混乱しそうだから、まぁ経過報告をしとこうと思う。

結局、あの植物はドドロの実っていう猛毒だったらしく、こうして生きているだけでもとてもすごいことなんだそうで。

いや、人々の話を聞いていると、どうやら俺がポトロだから生きていられたような感じ。ここの人々と俺らの世界の人間とはちょっと体の造りも違うってことかね?よくは分かんないけど。

ま、ともかく、あのまま放置だったら俺は確実に数日で死んでたってこと。

どうやって助かったのか。意識不明だったし自分でも知らないんだけど、人づてに聞いた話だと、俺はこの前泊まったこの集落の前に倒れていたんだそうだ。誰かが運んでくれたんだろうか?一体誰が?今となっては知りようもないが、ともかく、命があったわけだ。神様がもしいるんなら、そのことだけは感謝したほうがいいだろう。



しかし神様よ、少々意地悪が過ぎませんか?だって、こないだここで泊まったときが貝の月16日で、俺がぶっ倒れたのが22日だったはず(日記つけといて正解だったぜ)。

つまりだ、約5ガイン分戻されてるわけよ。

はぁ…頑張って歩いたのに…。いや、木の実を食べたりとか、余計なことをせずに歩けってことだろうな。ただひたすらに歩くのが運命ってことか。運動不足の体が憎い。



そういえば、こっちに来て王国目指して歩き出して、ちょっとは体力がついたような気がする。少なくとも、ピトの町を出て最初の頃よりは、ずっと長く歩けるようになったと思う。それに、最近は一日歩いても体が軽い。

ま、疲れたときは休憩して、無理して急ぐこともなくのんびりやってるから、少しずつ無理なく体が鍛えられているってことかな。健康にはすごくよさそうだ。

精神衛生上の問題はあるかもしれないけどね。いつ着くのか分からない王国、減っていく食料と持ち金、水分の確保…じりじりと追い詰められていくような感はずっとある。その上、5ガイン分無駄になったわけだ…いい気持ちはしないよね。でも、やるしかないみたい。

ただ、体がちゃんと動くようになるまで後2~3日かかるようだ。それまではもうちょっとこの宿に世話になるしかなさそう。事情を知った老主人は、元気になるまで宿代は要らないと言ってくれた。なんかすごく申し訳なく情けない気持ちで、彼には頭が上がらない。だけど彼は、僕がポトロだからそれくらいのことは当たり前だと言ってくれる。

ポトロって…何なんだろ?



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)