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【連載小説】マジカル戦隊M.O.G.(第12回)

前略

しばらくお預けだった敵の侵攻が、またもや始まるようだ。
だけど、うちの軍もそれに向けて大分前から準備してたらしく、こないだの宿営地撤退の時のような無様なやられ方はしないつもりらしい。

あの日はひどかった。
結界を張る間もなく、いきなりミサイルが雨のように降り注いできて、そこら中が一瞬で火の海だった。
何人死んだんだろう?
がれきの中で気絶してた俺は、敵兵にまんまと発見され、抵抗する暇もなく捕虜として要塞か何か(目隠しをされていたから、詳しくは分からない)に捕らえられることになったわけだ。
格好を見て、きっと俺がMOG隊員だと分かったんだろう。
一般兵だったらその場で殺されていたかも知れない。

今俺がいる新しい宿営地は、その時の宿営地から南へ50キロほど下ったところにある。
その南は大きな川になっていて、渡って移動するのはかなりきついだろうから、この宿営地が俺たちにとって最後の砦になるだろう。
ここを突破されるときは、今ここにいる全員が死ぬときだということだ。
もう後がない。
その上、前回の敵の総攻撃で、ほとんどの魔道アーマーがぶっつぶれてしまったらしい。
もう一般兵器による通常戦闘しか道がないとか。
かなり厳しい状況にあるのは間違いない。

ただ、敵さんたちと違って、こっちには魔道部隊がいる。
俺たちはきっと起死回生の切り札として使われることだろう。
前回の戦闘の勝利で、敵が気をよくしている今が、奴らを叩くチャンスなんだとか。
具体的に何をするのかまだ知らんが、きっとろくでもない作戦が俺を待っていることだろう。

その作戦会議がもうすぐ開かれる。
俺はMOGの隊長と一緒に、その会議に呼ばれることになっている。
戦場では、もちろん隊長が他の隊員の先頭に立って部隊を指揮するんだけど、俺は今回その手伝いをすることになりそうだ。
これも、前の手紙に書いたような功績を踏まえて、ってことらしい。
別になんら身に覚えのないことなのに、そんなことで人殺しの陣頭指揮を執らされるのはたまんない感じだけど、やるしかないのも分かる。
俺がやらないと、味方が大勢死ぬことも分かってるからだ。
これが戦争なんだな、これが・・・。
やりきれない。
相手も人間なのに。

すっかり春らしくなってきて、そっちはそろそろ桜の季節なんじゃないか?

この国には桜がないから花見ができなくて残念だが、温かくなってきたってことは大歓迎だ。
昔3人で花見したこと、覚えてるか?
彼女、当日はみんなの弁当を用意するって張り切ってたくせに寝坊しちゃって、結局みんなでコンビニ弁当をつついたっけな。
今年はそろって花見するの無理みたいだけど、俺が帰った次の春には、またやろう。
今度こそちゃんと手作りの弁当を用意しておくように、奥さんにもきちんと伝えておくようにな。
頼むぜ?

早々



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)