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スマートフォン

心を揺さぶられる体験をしたあと、私は必ずスマートフォンに戻ってくる。

そこにはたくさんの人生があり、誰かの夢・妬み嫉み・美しいもの汚いもの・諦めと希望・新しい価値観と、それをさらに高次から捉えなおす人、否定する人、共感する人

さまざまな思惑であふれかえっている。

匿名性と肉体の不在が与える、むしろ人間そのものに迫るような
そのデバイスの冷たくなめらかな手触りに、先ほどまでの感傷はインターネットの海の彼方へと放り出され、なにかこの世の核心めいたものに近づいたという神聖な感覚が、単なる1人の人間の感覚へと引き戻され、リセットされる。

それはまるで、美術館における展示室と展示室の間の空間のようなものである。

また、人間らしく地に足をつけた、矛盾まみれのでたらめな自分で、次の扉を開ける時を待っている。

私はいつでもこの落差を愛さずにいられない。

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